ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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38.川からのダンジョン探索

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 翌日、僕たちは準備を整えるとギルドの受付へと向かった。
 そこではすでに依頼人のモーヴが待機しており、メンバーも揃っていた。

「では、モーヴさん……準備はよろしいでしょうか?」
「はい。アキノスケ隊のみなさん、今日はよろしくお願いします」


 僕たちはギルドの裏口へと向かうと、クロエが舟の準備を整えていた。
「隊長、いつでも出発できるよ」
「わかった。それじゃあ……行こうか」

 メンバーは、人間である僕、エルフのキンバリー、有翼人スカーレット、人魚ジェシカ、ウェアウルフのクロエ、そして依頼主であるエルフのモーヴの6人である。

 クロエは慣れた様子でオールで舟を動かしながら、目的地に向かって進みはじめた。
「みんなわかっているとは思うけど、ダンジョンでは悪魔の尖兵と遭遇する可能性もある。十分に気を引き締めて欲しい」
 そう言うと誰しもが頷いた。少し前に冒険者街だけでなくギルドも攻撃を受けているため、魔物に対して警戒しているようだ。


 その後も舟は順調に湖を進んでいき、遂に邪竜のねぐらと呼ばれるポイントまでやってきた。
 一見すると風景は他とあまり変わりはないのだが、この地点に来ると空気が重くなり寒気のようなモノを感じるので、明らかに雰囲気が変わるのである。
「入ったね……」

 そう呟くと、キンバリーが頷き、エルフのモーヴも言った。
「邪竜のねぐらに来て、何にも感じない冒険者は1年以内に命を落とすという話もあります」

 その話を聞いたスカーレットも頷いた。
「わかりますよ。これだけ異様な空気を放っていれば、有翼人なら空に居ても気づくものです」
 クロエは苦笑しながら言った。
「残念ながら、私たちウェアウルフの中には気づかない人もいるみたいだけどね」
「それを言うのなら、僕たち人間だって他種族のことは言えないよ」


 そんな話をしている間にクロエは舟を岸に近づけ、近くに生えている木に結び付けていた。
 なるほど、ここなら植物の影になって陸路から来た人間には見えづらい。クロエはこういう場所を見つけて舟を隠すのが上手だ。

 僕たちは邪竜のねぐらへと入ると、すぐに隊列を組んだ。
 先頭は人魚ジェシカ、2番目は僕、3番手にキンバリーとモーヴ、5番手がスカーレット、最後尾がクロエだ。

 クロエはバックアタック警戒。キンバリーとモーブは耳が良いので、チームの中心において全方位を監視してもらうのが適任だ。


 モーブはあたりを見回しながら言った。
「さすがはトリトンズですね。この辺りは陸路から来るには、首尾よく進んでも3日はかかります」
「目的のモノはありそうですか?」
「1つなら……」

 今回、モーブが探している薬草は4種類。それとは別にキノコ3種類が必要なのだという。
 彼女は薬草を見つけると、丁寧に葉だけを摘み取っていき、植物の茎などは傷つけないようにしていた。
「なるほど……こうすればまた、植物は葉を付けますね」
「はい。最近の魔法使いは自分のことしか考えていないから、植物ごと抜き取ったりして収集も大変になっています」

 彼女の話だと薬草摘みの世界でも、エルフとその他の種族でいざこざが絶えないようだ。


 警戒しながら進んだが、乗りつけた場所が良かったのか、邪竜のねぐらは思っていたより静かで拍子抜けした。
 特に悪魔の尖兵と遭遇した際に、どうやり過ごすかとキンバリーや仲間たちと打ち合わせをしていたが、尖兵はおろか魔物すら見かけない。

 探索開始から1時間ほどで、薬草2種類、キノコ2種類を見つけている。
「とりあえず、半分ですね」
「はい。この辺りは植物もたくさん生えていますから、本当に楽に集まっています」
「普段は、目的のモノを全部集めるにはどれくらいかかるものなの?」

 クロエが質問すると、モーブは少し考えてから答えた。
「そうですね……首尾よくいって3日。下手をすれば1週間以上かかることもあります」

 そう言いながら彼女は周囲を見渡すと更に薬草を見つけたらしく、今度は丁寧に根っこごと引き抜いてから、茎を切り取ってから魔法をかけ、元から生えていた場所に差し込んでいた。


「後は薬草とキノコ1種類ずつですね」
「はい。まさかこんなに早く集まるなんて驚いています」
「この調子で、どんどん見つけていこう!」
 クロエが言うとスカーレットやモーブも頷いた。


 僕たちは薬草集めが進んで上機嫌だったが、冒険者街ではこのとき、大きな問題が起ころうとしていた。
 原因となったのは、レッドトマホークと、アイアンメイスと、噂の冒険者タケルだった。


【エルフ魔法使いモーヴ】
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