ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

文字の大きさ
上 下
40 / 55

ブラッドリリスの動向3

しおりを挟む
 久しぶりに、邪竜のねぐらに行ってみると、浮かない顔をしたレインガルがいたの。
「久しぶりね」
「こ、これはリリス様……このようなむさ苦しいところによくお越しくださいました!」

 そう言いながら魔将レインガルは、深々と頭を下げた。
 畏まっているのはいつものことだけど、今日はずいぶんと元気がないわね。部下からの報告で、冒険者に能力者の一部を奪い返されたと聞いているけど、成果が出れば私としては問題ないのよね。

「新冒険者街の攻撃……手腕よくやってくれているみたいじゃない。やはり貴方はやればできる子ね」
「お褒めの言葉を賜り……恐縮でございます!」
「……ところで、妖力が弱っている感じがするけど、何かあったの?」


 そう質問すると、レインガルは慌てた様子で答えた。
「こ、これはその……未熟なユニコーンに不意を突かれまして……我もまだまだ修行が足りません」
「未熟なユニコーン……スティレットの孫かしら?」
 再び問いかけると、レインガルは少し考えてから答えたみたい。
「何といいましょうか……その正体は、妙なエルフの女だったのです」
「どういうこと?」

 レインガルは困り顔になってしまったわ。うーん、普段はもっといかつい顔をした子なのだけど、こういう表情もするのね。
「何といいましょうか……そのエルフの女は妙なアビリティを持っているようでして。例のアビリティで箱に閉じ込めたのですが、ユニコーンを召喚されてしまいまして……」
「ユニコーンを召喚!?」


 それは私にとって、まさに寝耳に水という話だったわ。
 ユニコーンはただでさえ、私たち魔族にとって天敵とも言える厄介な生き物。救いは寿命が人間と比べても短いことなのに、エルフが召喚なんてしてきたら……その最大のデメリットを克服されることになる。

「どんな女だったの?」
「フロンティアトリトンズを襲っていた時に遭遇しました。金髪のエルフ女で……妙な杖を出す者です」
 新冒険者街にあるフロンティアトリトンズね。
 金髪の女と言えば、カイトと素材の間に生まれた第2子しか該当者がいない。そういえばあの女は、異世界の勇者カイトと似たアビリティを使うんだったわ。

「その女の名前……キンバリーとか言うんじゃなかったかしら?」
「ざ、残念ながら……私ではそこまで詳しいことは……」
「貴方が遭遇したのは金髪のエルフなのよね?」
「は、はい!」
「他にそういう魔法使いがいなかったのなら、奴の可能性が高いわ」


 レインガルは汗を流したまま、私を見てきた。
「いかが……なさいますか?」
「貴方のやることは変わらないわ。また冒険者街が隙を見せたら魔物を率いて攻撃しなさい。隙あらば、またレア能力者の奪取にも力を入れて」
「は、はは!」

 大丈夫だとは思ったけれど、私は念には念を入れることにした。
「そのカイトの娘に関しては、極力組み合おうとは思わないように。下手に手下を差し向けると、奴らに塩を送ることになるわ。指示があるまで徹底無視するように」

 そう。こういう厄介な勇者が登場したときは、真っ先に潰しに行くか無視するかの二択に限る。
 下手に手下を差し向けたり、故郷を滅ぼせば強くなるきっかけを与え、やがて強大な敵となって自分の前に現れることになるのは目に見えているのだから。
「承知……!」


 レインガルもわかってくれたみたいだし、私は少しだけ気を落ち着けることができた。
 さて、戻るついでに、戦利品の品定めでもしていくとしましょう。
「レインガル。せっかく来たのだからトロフィーを見たいわ。案内してちょうだい」
「はっ、直ちに!」


 トロフィールームに行くと、何人もの娘たちがガラスケースの中に収められた状態で、私のことを見てきたわ。
 ふむ。ヒーラー2人にエンチャンター1人。この中でアブソルートマナセンスに目覚める可能性が、少しでもありそうなのは……このピンク髪の女かしら。

 箱を持ち上げると、その若い女は叫び声をあげながら怯えた様子で私を見つめてきたわ。
「感謝しなさい。貴女はこれから一時的な苦しみと引き換えに、自らの中に隠れている潜在能力を大いに目覚めさせることができるわ」
「そ、そんなことよりも……お家に帰りたい!」

 ふふ……形は大きいけど、まだまだ内面は子供のようね。
 だけど、これくらい未熟な方が伸びしろも大きいというもの。
「他の娘たちも、安全になったら逐一、私の城まで送ってちょうだい」
「御意!」


 こうして私は新たな素材を手に入れたというわけ。
 それにしても、ユニコーンを召喚できる勇者の娘か。これは……討伐するにはこちら側も入念な下準備をしなければ、危ないかもしれないわね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おウ魔王のごくごく平凡なダンジョン作成記 〜だから勇者さま、後生ですから、くれぐれも討伐には来ないで下さい〜

スィグトーネ
ファンタジー
 馬モンスターのチャンスコネクター号は、緊張していた。  すでに就職活動で12連敗している彼にとって、今回の面接は決して失敗は許されない。  なぜ、それほどまでに彼が苦戦しているのかと言えば、最近の魔王たちは、採用人数を大きく絞っているからである。  近年ゴーレムの性能が上がっているため、少ない人員でもダンジョンを管理できてしまう。  魔王たちは、如何に少ない人員でダンジョンを運営するかを自慢しはじめており、巷ではコスパの良いダンジョンが持てはやされている。  だから、チャンスコネクター号も、今回の魔王に不採用と言われてしまうと、モンスター街の有力魔王で頼れる者がいなくなってしまう。  彼は緊張しながら待機していると、魔王の秘書がドアを開け……チャンスコネクターの名を呼んだ。 ※この物語はフィクションです。 ※また、表紙絵や物語の中に登場するイラストは、AIイラストさんで作成したモノを使っています。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

処理中です...