ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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35.マンパワーヒーロー

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 ウェアウルフの子供が石を投げつけると、頭に当たった悪魔兵は視線を上げて子供を睨みつけた。
 そして「このガキ……」と言った直後に、物陰から一人の若者が剣を振り上げたまま悪魔兵に斬りかかってきた。

「甘い!」
 悪魔兵は話にならないと言わんばかりに若者を斬り伏せたが、斬られた若者はなぜか不敵な笑みを浮かべたままだった。
 悪魔兵たちが眉をひそめた直後、岩陰から同じ姿をした戦士たちが何人と襲い掛かって来るだけでなく、岩の上からも飛び降りてきて、次々と悪魔兵たちに襲い掛かった。
 その数は……ざっと30人!


「な、何だこいつらは!?」
「て、敵襲だ!!」
 その直後に、叫び声を上げた悪魔兵は若者の1人に斬り伏せられた。
「ぎゃあああ!」
「くそ……何だコイツは!?」
「同じのが何人もいるぞ!」
「新手のアビリティか!?」

 その直後に別の魔物も斬り伏せられ、斬り伏せた若者は得意げに叫んだ。
「冥土の土産に教えてやるよ! 俺様は異世界……ニッポディアから来た勇者タケル様だ!」

 別の魔物を斬り伏せた若者タケルも叫んだ。
「俺様のアビリティは……俺様100人力マンパワーヒーロー!」

 更に別の場所では、タケルが斬り伏せられると煙のように消えた。
 しかし、体勢に影響はないのか、別のタケルが分身を倒した悪魔兵を斬り伏せていく。

 何人ものタケルが悪魔兵と戦っている間に、別のタケルとウェアウルフの子供が捕虜となっていたレア能力者に近づいていく。
「おい、今のうちに逃げるぞ」
「あ、ありがとうございます!」


 救助に向かった別動隊タケルが、レア能力者たちを誘導していくと、それに気が付いた悪魔兵が叫んだ。
「おい、レア能力者が逃げ出していくぞ! 逃がすな!」
「そうはいくかよ!」

 悪魔兵は逃げ出したレア能力者を追おうとしたが、交戦班のタケルたちが立ちはだかった。
 おおよそ25人のタケルたちは、逃げることをせずに徹底交戦したため、レア能力者と誘導タケル班はどんどん悪魔たちから遠ざかっていく。
「くそっ……こいつら!」
「ウマだ、ウマを出せ! こんな連中など蹴散らせ!!」


 悪魔のアジトの入り口が開くと、中からは何十という悪魔騎馬隊が姿を見せた。
 連中は完全武装した状態で交戦しているタケルたちに向かってくると、タケルたちは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「へっ……虎の子部隊の登場か」
「あれ、やってやろうぜ!」
「おう!」

 足止めタケルたちは一斉に剣を構えると、一斉に騎馬隊に向かっていった。
 その行動に騎馬隊悪魔たちは「むざむざ死にに来たか!」という言葉や「カロンに会わせてやろう!」と言いながら馬上槍を構えたが……

――アビリティ発動!
――アビリティ発動!!
――アビリティ発動ォ!

 特攻部隊バーニングヒーローズ!!


「う、うわああああああぁぁあぁあ!?」
 その言葉と共に、足止め班のタケルたちは一斉に自爆し、突っ込んできた悪魔騎馬隊は次々と爆発に巻き込まれていった。

 多数の犠牲者を出した悪魔たちは、頭から血を流しながら叫んだ。
「追え……逃がすなぁ! 絶対に逃がすな!」

 騎馬隊を失ったとはいえ、身体能力の高さを持つ悪魔たちは次々と走り出すと、逃げ出したレア能力者たちとの距離をぐんぐん縮めていった。


 すると、タケル別動隊の中の何人かが、振り返って悪魔の迎撃に入った。
 悪魔たちはタケルの自爆攻撃の威力の高さを目の当たりにしたため、その腰は引け弓矢やクロスボウで戦うことを選んだようだ。
 当然ながら、タケルは戦士として鎧に守られているため、悪魔たちの攻撃は意味をなさない。
「ええい、何をしている……突撃せんか!」
「そ、そんな……無理ですよぉ!」
「お、おのれえ!」



 こうして、異世界人タケルは2日目に拉致されたレア能力者8人と共に、邪竜のねぐらを抜けると、意気揚々と新冒険者街に帰還を果たした。

 日本からやってきたという無名な東洋人が、どこのギルドでもなし得なかった捕虜の奪還に成功。
 この話は、瞬く間に冒険者街中に知れ渡り、僕の耳に入るまでにそんなに時間はかからなかった。

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