ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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33.キンバリーと幸せの再確認

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 戦後処理を終えて自室に戻ってくると、隣にキンバリーがいるということを凄く実感するようになった。
 もし、あの場で少し状況が変わったら、彼女は化け物に連れ去られ、こうして一緒に過ごすことはできなかったかもしれない。

 そう思うと、怖さが押し寄せてきた。
 彼女が側にいてくれてよかったと思っていると、おや……彼女が眉根をつり上げて僕を睨んできた。
「あなた……どうしても言いたいことがあります」
「な、なんだい……?」
「そこに座ってください」

 言われた通りに僕はベッドの隣に座った。
 急に……どうしたのだろう。いきなり不機嫌になって察しなさいとか言わないだけ、僕は内心では安堵したが、彼女が不機嫌なのだから動揺せずにはいられない。

「な、なんだい……?」
 そう質問すると、キンバリーは顔を赤らめながら言った。
「あなた……今日の戦い、無茶をし過ぎです」
「そ、そうかな?」
 そう答えると、キンバリーは身を乗り出して僕を睨んできた。
「ああいう戦い方は、もうやめてください!」


 彼女の顔を見ると、本当に僕のことを心配していたんだと理解できた。
 だけど、僕にだって言い分はある。キンバリーや仲間たちを守りたかったから必死だったんだ。そう思いながら睨み返すと、彼女も身を引いた。
「僕だって冒険者だ。冒険者って……命を懸けて戦わないといけないことはあるでしょう?」

 君も冒険者なら、それくらいわかってくれよと思いながら答えを返すと、キンバリーもすぐに言葉を返してきた。
「……では、私が同じことをしても、あなたは許してくれますか!?」

 その言葉を聞いて、僕は背筋に寒気を感じた。
 僕がキンバリーを失わなくて安堵していたように、彼女もまた僕が無事だったことに安堵し、僕の戦い方を見てきっと肝を冷やしていたんだ。


「君が僕のことを心配してくれるのは嬉しい。僕だって……本当は無茶せずに戦いたいと思っている」
 僕はキンバリーに視線を向けた。
「どうすれば……僕はそれくらい強くなれるかな?」

 普通の女性にこんな質問をしても困った表情を返されるか、そんなことは自分で考えなさいと言われるだけだろう。だけどキンバリーなら……違った答えを返してくれるのではないかと思えた。
 そっと視線を上げると、キンバリーはしっかりと僕を見つめていた。
「一緒に考えていきましょう。独りで悩むよりも……きっといい考えが浮かぶはずです!」


 キンバリーがそう言ってくれたからだろうか。何だか凄く心の中が軽くなった。
「心強いよ! 僕はツーノッパに来たばかりだから魔法なんてものは初めてだし、アビリティというモノもよくわかっていない。やっぱり僕にはキンバリーが居てくれないとダメなんだ」

 最初のうちは嬉しそうに話を聞いていたキンバリーだったが、後半あたりで表情を曇らせて抗議してきた。
「そんな卑屈では困ります!」
 彼女は少し微笑みながら答えた。
「それに……あなたは、ご自分で思われているより、立派に能力を使いこなしていると思います。私などでは思いつかなかったアビリティの使い方をされたことも何度もあったくらいですから」

「そ、そうなの?」
 聞き返すと、キンバリーは頷いた。
「これは前の戦いになりますが、ヒーリングを攻撃魔法として使ったことや、短距離ワープ魔法を発明したこと、先ほどの戦いでも、悪魔と密着状態でのユニコーンホーンと水魔法の融合。あれで聖水噴射なんて驚きました」

「聖水噴射……? そういえば、あの悪魔、しばらく目を空けられなかったみたいだけど……」
「悪魔はユニコーンに密着されるだけでもコンディションを悪化させます。その状態でユニコーンホーンを光らせるだけでもかなりの嫌がらせになるのに、貴方は水を追加したことで【聖なる気を帯びた水】を悪魔の眼球にかけたことになります」


 無我夢中とはいえ、僕はなかなかにエグイ嫌がらせを悪魔にしていたようだ。
 そういえば、レベルは幾つになったんだろう。
「ちょっと、背中見てもらっていい?」
「はい」
 背中を見てもらうと、キンバリーは驚きの声を上げていた。
「あなた……レベルですが……」
「うん」
「33まで上がっています!」

 僕は驚いて立ち上がると、鏡に自分の背中を映してみた。
 レベル欄には確かに33と書かれている。この前まで……一桁だったはずだ。
「これ……悪魔に相当なダメージを与えたってこと?」
「恐らく……」

 キンバリーは表情を引き締めた。
「ですが、あなた……レベルが高くなったからって、無茶をするのは頂けませんからね」

 さすがはキンバリーだ。浮かれかけれてる僕にしっかりと釘を刺してきた。
 これは彼女と一緒になったあとも、ずっと尻に敷かれそうである。

 それはそれで、幸せそうではあるのだが……。


【無茶をし過ぎと言っていた時のキンバリー】
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