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32.520キログラムの不意打ち
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妙な姿の化け物は、空中に飛び立って5秒もしないうちに、上空50メートルほどまで上昇していた。
このままだと、キンバリーが敵のアジトまで連れ去られてしまう。
ここで手を打たなければ、一生僕たちはトリトンズに戻れないかもしれない。
そんなとき、僕の脳裏にはある策が浮かんでいた。これをやるのは一種の賭けだ。
もし、失敗したら、キンバリーだけがさらわれるという最悪の状況を招いてしまう。だけど、下を見たら湖の半分以上を飛んでいた。
僕はイチかバチか、キンバリーに呼びかけた。
ーー僕を召喚して。場所は……あの化け物の背中!
ーーわかりました!
キンバリーはガラスの中で、右手ロッドを出すと、化け物の背中を指し示した。
すると期待通り、僕の身体はウマの姿のまま、化け物の背中に現れ、飛行をしていたバケモノのバランスを大きく狂わせた。
僕が両前足で、化け物の頭を抑え込むと、翼のコントロールが効かなくなり、化け物は一気に高度を下げた。
「うおっ!?」
そして狙い通り手元を狂わせて、抱えていたキンバリーの入っている透明な箱を落とし、箱はそのまま湖の水面へと入り込んでいく。
ーーキンバリー、形状変化を!
ーーもうやっています!
箱には空気口が空いていたので、そこから水が入り込んで来る恐れがあったが、どうやらキンバリーは僕よりも先にそのことに気が付いていたようだ。
彼女は右手杖の形状を変化させ、天井に空いた空気口から水が入って来ないように蓋をし、箱はゆっくりと回転しながらも、やがて水面に浮かび上がってきた。
これを化け物に回収されてしまっては、暴れた意味がない。
僕は化け物の背中で、暴れるだけ暴れて体勢を崩しにかかった。今の体重は520キログラムほどあるので、化け物も水面に突っ込まないように四苦八苦している。
その隙に、ジェシカは起き上がり、僕が化け物の背中で暴れているのを眺めていたが、すぐにスティレットがテレパシーを送ったらしく、ハッとした様子で湖に飛び込んだ。
化け物も、その水に飛び込む音を聞いて我に返ったのか、すぐに首をキンバリーの入った透明な箱に目を向けた。
このまま奪い去られてなるものかと、僕はユニコーンホーンを光らせ、さらに至近距離から水塊を発射した。
化け物は空中で視界を失う状況となり、何が何でも僕を振り落とそうと暴れはじめた。
僕もしっかりと両前脚で化け物にしがみつき、体重をアンバランスにかけながら、化け物が空を飛ぶことを妨害した。
化け物は背中を勢いよく動かして、僕を背中からはじき出そうとしたが、僕は化け物の翼の付け根に噛みつき、意地でも妨害を止めなかった。
それでも、振り落とされるまで時間の問題となりつつあったとき、1本の矢が化け物の頬を掠めた。
「援護しますよ! 隊長!!」
そう言いながら向かってきたのは、スカーレットだった。
彼女はキンバリーの箱を援護するように飛び回り、ウマにしがみつかれている化け物にとって、もっとも厄介な存在となった。
「今日のところは、これくらいにしておいてやる!」
捨てゼリフと共に、化け物は僕を背中から弾き飛ばし、未練がましそうな雰囲気を残したまま、トリトンズの上空から飛び去った。
その直後に、ジェシカはキンバリーの入った透明な箱を回収し、辺りを見回してから、ギルドに向かって泳ぎはじめた。
僕も、体勢を立て直してから水面に着水し、固有魔法【ミニ・ホバークラフト】を使いながら、アメンボのようにキンバリーたちと合流した。
「みんな、無事かい!?」
そう質問すると、クロエもスカーレットもジェシカも、そして箱の中のキンバリーも、頷いてくれた。
裏口を守っている一角獣ミドルダガーも、周囲を見張りながら言った。
『問題は、どうやってその箱から脱出するかですね。レフトナイフで何とかなりそうですか?』
キンバリーは左手にレフトナイフを出すと、慎重に天井部分に突き刺して、少しずつ開いていった。
「私のナイフなら、辛うじて封印を破ることができるようです」
その言葉を聞いて僕はホッとしたが、クロエやスカーレットは羨ましそうに言った。
「本当に凄いよね……宝刀っていわれるのもわかる気がする」
「この箱自体が魔力を放っているもんね。普通なら、ドワーフの職人さんに頼まないと、開かない代物だと思う」
キンバリーが箱から出ると、すぐにクロエが彼女に上着を着せ、他の二人は箱に布をかけてから、すぐに回収した。
「これ、落ち着いたら専門家に見てもらおう」
「それがいいよね。なにかわかるかもしれないし!」
僕も黙ったまま同意した。
【妙な姿の化け物(あのウマ……覚えていろ!)】
このままだと、キンバリーが敵のアジトまで連れ去られてしまう。
ここで手を打たなければ、一生僕たちはトリトンズに戻れないかもしれない。
そんなとき、僕の脳裏にはある策が浮かんでいた。これをやるのは一種の賭けだ。
もし、失敗したら、キンバリーだけがさらわれるという最悪の状況を招いてしまう。だけど、下を見たら湖の半分以上を飛んでいた。
僕はイチかバチか、キンバリーに呼びかけた。
ーー僕を召喚して。場所は……あの化け物の背中!
ーーわかりました!
キンバリーはガラスの中で、右手ロッドを出すと、化け物の背中を指し示した。
すると期待通り、僕の身体はウマの姿のまま、化け物の背中に現れ、飛行をしていたバケモノのバランスを大きく狂わせた。
僕が両前足で、化け物の頭を抑え込むと、翼のコントロールが効かなくなり、化け物は一気に高度を下げた。
「うおっ!?」
そして狙い通り手元を狂わせて、抱えていたキンバリーの入っている透明な箱を落とし、箱はそのまま湖の水面へと入り込んでいく。
ーーキンバリー、形状変化を!
ーーもうやっています!
箱には空気口が空いていたので、そこから水が入り込んで来る恐れがあったが、どうやらキンバリーは僕よりも先にそのことに気が付いていたようだ。
彼女は右手杖の形状を変化させ、天井に空いた空気口から水が入って来ないように蓋をし、箱はゆっくりと回転しながらも、やがて水面に浮かび上がってきた。
これを化け物に回収されてしまっては、暴れた意味がない。
僕は化け物の背中で、暴れるだけ暴れて体勢を崩しにかかった。今の体重は520キログラムほどあるので、化け物も水面に突っ込まないように四苦八苦している。
その隙に、ジェシカは起き上がり、僕が化け物の背中で暴れているのを眺めていたが、すぐにスティレットがテレパシーを送ったらしく、ハッとした様子で湖に飛び込んだ。
化け物も、その水に飛び込む音を聞いて我に返ったのか、すぐに首をキンバリーの入った透明な箱に目を向けた。
このまま奪い去られてなるものかと、僕はユニコーンホーンを光らせ、さらに至近距離から水塊を発射した。
化け物は空中で視界を失う状況となり、何が何でも僕を振り落とそうと暴れはじめた。
僕もしっかりと両前脚で化け物にしがみつき、体重をアンバランスにかけながら、化け物が空を飛ぶことを妨害した。
化け物は背中を勢いよく動かして、僕を背中からはじき出そうとしたが、僕は化け物の翼の付け根に噛みつき、意地でも妨害を止めなかった。
それでも、振り落とされるまで時間の問題となりつつあったとき、1本の矢が化け物の頬を掠めた。
「援護しますよ! 隊長!!」
そう言いながら向かってきたのは、スカーレットだった。
彼女はキンバリーの箱を援護するように飛び回り、ウマにしがみつかれている化け物にとって、もっとも厄介な存在となった。
「今日のところは、これくらいにしておいてやる!」
捨てゼリフと共に、化け物は僕を背中から弾き飛ばし、未練がましそうな雰囲気を残したまま、トリトンズの上空から飛び去った。
その直後に、ジェシカはキンバリーの入った透明な箱を回収し、辺りを見回してから、ギルドに向かって泳ぎはじめた。
僕も、体勢を立て直してから水面に着水し、固有魔法【ミニ・ホバークラフト】を使いながら、アメンボのようにキンバリーたちと合流した。
「みんな、無事かい!?」
そう質問すると、クロエもスカーレットもジェシカも、そして箱の中のキンバリーも、頷いてくれた。
裏口を守っている一角獣ミドルダガーも、周囲を見張りながら言った。
『問題は、どうやってその箱から脱出するかですね。レフトナイフで何とかなりそうですか?』
キンバリーは左手にレフトナイフを出すと、慎重に天井部分に突き刺して、少しずつ開いていった。
「私のナイフなら、辛うじて封印を破ることができるようです」
その言葉を聞いて僕はホッとしたが、クロエやスカーレットは羨ましそうに言った。
「本当に凄いよね……宝刀っていわれるのもわかる気がする」
「この箱自体が魔力を放っているもんね。普通なら、ドワーフの職人さんに頼まないと、開かない代物だと思う」
キンバリーが箱から出ると、すぐにクロエが彼女に上着を着せ、他の二人は箱に布をかけてから、すぐに回収した。
「これ、落ち着いたら専門家に見てもらおう」
「それがいいよね。なにかわかるかもしれないし!」
僕も黙ったまま同意した。
【妙な姿の化け物(あのウマ……覚えていろ!)】
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