ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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27.噂のヤバい人

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 騒動の翌日、フロンティアトリトンズの支部へと戻った僕は、スティレット支部長に呼び出された。

 何だろうと思いながら、キンバリーと一緒に中庭に向かうと、そこにはウェアウルフのクロエと、有翼人のスカーレットの姿もあり、僕たちが揃ったところでスティレットは言った。
『よく集まってくれた。今日は人事の件について話があるんだ』


 そう言うと、スティレットは僕を見た。
『これからは、我が支部も邪竜のほこらを探索することも視野に入れて活動をしていこうと思う。そこで……それに先駆けて、新しい冒険者チームを結成しようと思ったんだ』

 支部長の話を聞き、キンバリー、クロエ、スカーレットの3人は、期待に満ちた様子で頷いた。
 このフロンティアトリトンズの中間マージンは、冒険者街でもずいいつの安さなので、報酬が高額で知られる邪竜のほこらで任務を達成できれば、多額の報酬を受け取ることができる。

『そのパーティーとして、アキノスケをリーダーとして、キンバリー、クロエ、スカーレットの小隊を作ろうと思う。どうだろう?』

 なるほどと思った。
 僕が戦士、クロエが軽戦士、弓も使えるスカーレットに、魔法使いのキンバリーと考えれば、バランスの取れたチームかもしれない。
 僕が前向きに思いながら頷いたら、キンバリーが意見した。
「できればもう一人……タンク役の戦士が欲しいですね」


 その言葉を聞いたスティレットも苦笑しながら頷いた。
『そうなんだよね。キンバリーの言う通り、このチームは盾役がいれば完成する。全員のレベルが15以上で更に重戦士が加入すれば、本格的に指導できるんだよ』
「支部長。ギルド内に重装備のマーフォークとかいないんですか?」

 クロエが言うとキンバリーやスカーレットも頷いた。
 やはりトリトンズと言えば人魚。人魚と言えば固い防御力に定評があるはずだ。

 スティレットは答えた。
『実は王都支部から、こっちに向かっている戦士がいるんだけど……到着には少しばかり時間がかかりそうなんだ。だからそれまでは4人で少しずつ活動をして欲しいんだよね』
「ちなみに、そのこちらに来ている戦士というの方は?」

 そう質問してみると、スティレットはにっこりしながら答えた。
『ギルド長の妹……アイラ支部長の第3子で、名前はジェシカ。母親の力を色濃く受け継いだ戦士で、最前列で戦うことを希望している』

 支部長の話を聞いたキンバリーは、視線を上げてから質問した。
「もしかして、演習の際に男性のギルドメンバー3人にけがをさせたという?」
『うん、その噂のジェシカ嬢だよ』


 その言葉を聞いて、キンバリー達はひきつった表情をしていた。
 どうやらこのジェシカ嬢は、女性蔑視発言をしていた男性ギルド員に腹を立てて、うち2人を病院送りにするほどに打ちのめしたという。
 今回、この辺境の地に飛ばされたのは……いわば左遷ということなんだろうな。

 クロエは真っ青な顔をしながら笑っていた。
「ま、まあ……女を軽く見られて怒るというのは共感できるよね?」
 スカーレットも頷いた。
「そうだよそうだよ! それに、ちゃんと謝罪した男の人に関しては、軽いケガだけで済んだんでしょ……なら、きっと大丈夫!」
 キンバリーも苦笑していた。
「そ、そうですよね……ふふふふふふ」


 まあ、早くても数日後のことだし、今はチームメイトの親交でも深めようかと思っていたら、ハトが1羽飛んできて、スティレットの横で何かをさえずりはじめた。
『ん、ジョニーじゃないか……どうしたんだい?』

「…………」
 ん、何かスティレットの表情が曇ったぞ。
「…………」
「…………」
『わ、わかった。ありがとう』

 ハトが飛び立ったとき、スティレットだけでなく、近くでじっと話を聞いていた牝馬も何とも言えない顔をしていた。これってもしかして。
 スティレットが叫んだ。
『警戒態勢発動! ミドルダガー、キンバリー、クロエ、スカーレット、大至急、ギルド中のギルドメンバーに通達! 業務に関係ない酒、タバコ、賭け事、エッチな本、BL、GL、その他しょうもないと思われる娯楽品のブツを残らず退避させろ!』

「は、はい!」
 彼女たちがバタバタと足音を響かせながら走っていくなか、僕はポカンとしながらスティレット支部長を眺めていた。急に……何事だろう?

「ど、どうしたんですか……急に?」
 そう質問したら、スティレットは今までにないほどシリアスな表情で答えた。
『すぐそばまで来てるんだよ……ジェシカ嬢と一緒に……LSLAYが……』


 間もなく、クロエやキンバリーの声が響いてきた。
「警報! 警報! アイラ警報! アイラ警報!」
「L・S・L・A・Y……繰り返します! L・S・L・A・Y……」


【大慌てのキンバリー】



【作者よりお知らせ】
 そろそろ物語のストックが心もとなくなってきたので、これからは1日に2話~3話のペースで、物語を公開していきます。
 今後とも、本作をよろしくお願いいたします。
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