ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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ブラッドリリスの動向2

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 皆さん、ごきげんいかが?
 魔王軍四天王のなかで最も小物にして最弱のブラッドリリスよ。

 私はいま、自分の城の模様替えをしているの。
 仮にも魔王さまの重臣ともなれば、小さい城の1つや2つ持っているモノなのよ。そんな数少ない拠点とどうして模様替えしているのかと言えば、捕まえた人間を繁殖させる牧場を作ろうとしているわけ。

 非人道的なことをするなですって?
 いいじゃない。人間だってウシやウマといった生き物を支配しているでしょう。強い生き物が弱い生き物を支配するのは当然のこと。牧場を持つということは強者の証であり権利だと思う。

 ちょうど配下の者が来たことですし、少し対応でもするわね。


「申し上げます。第1牧場の建設が完了しました」
「ご苦労様。では、このブラウンちゃんとお散歩……でもしましょうか」
 私はそう言いながら鎖を持つと、ヒーラーの少女はゆっくりと立ちあがった。
「行きますよ。ブラウンちゃん」
「は、はい……喜んで……」

 ブラウンちゃんも一時期は泣き叫んだり、反抗してきたりもしたけど、元々の名前と記憶を奪ってからというもの、凄く従順になった。
 まあ、第3のアビリティが、お目当ての【アブソルートマナセンス】ではなかったのだけど……これは彼女が悪いわけじゃないからね。


 城の外に出て、雑木林を見た私はとても満足した。
 牧場というと普通は広い草地が広がっている光景を想像すると思うけど、人間って元々は木の上で生活していた生き物だからね。元の生態に近づけるために、あえて整備された雑木林をチョイスしたの。

 そして何と言っても、この森牧場には壁というのが存在しない。
 私のアビリティでちょちょいと細工をし、異世界人たちが遊んでいる『ろーるぷれいんぐげーむ』とかいう電算式盤上遊戯のような、同じ場所へ戻ってくるシステムを採用している。
 しかも、1時間ごとに雑木林の木の配置も変わるから、飼育している人間の脳トレにもなるという優れもの。

「さあ、好きに遊んできなさいブラウンちゃん」
 ブラウンの首輪から鎖を外すと、動揺した様子のまま歩きはじめていた。
 いつまでも狭い場所に居たら身体も弱るだろうし、夕方くらいまで遊ばせておくとしましょう。


 椅子に腰かけて紅茶を飲んでいると、部下の一人がやってきた。
「申し上げます。フロンティアの南東部を偵察しましたところ……勇者の娘がいなくなっていました」
「それって……異世界から来た勇者カイトと、私のかつての素材の間に生まれた娘よね?」
「その通りにございます」

 部下はそこまで言うと顔を上げた。
「周辺のマナを調査したところ、少し離れた泉に鋭い時空の歪みを感知……異世界人が現れた可能性が濃厚です」
「なんですって……?」


 感情が高ぶったために、つい力がこもってティーカップが割れてしまった。
 けれど、新しい異世界人の出現という報告に比べれば、些細なこと。
「出現したタイミングによっては、冒険者街か、首都か、新冒険者街のどこかに移動してしまっているでしょうね。どこに行かれても……厄介ね」
「……いかがなさいますか?」

 私は少し考えてから答えた。
「そうね。それなら……ゆさぶりでもかけてみようかしら。魔将のレインガルが……邪竜のねぐらにいたわね」
「はい。どのように御命令を……?」

 部下のレインガルの性格を思い出しながら、私は筆を執ることにした。
 そうねぇ……あの子は難しことを言っても混乱するだけだから、短くわかりやすく行きましょう。

 最近、新冒険者街の人間どもが生意気だから、ちょっと懲らしめて来なさい。

 これをとても丁寧に書いてから、私は自分のサインをしたためてから部下に渡した。
「畏まりました。将軍にお伝えいたします!」
「道中気をつけてね」
 そう言いながら手を振ると、部下はきちんと敬礼してから飛び立っていった。


 さて……ブラウンちゃんはと言えば、困り顔のまま森の中をさ迷い歩いているわね。
 さては初めてだから、どこを歩いているのかわからなくなってしまったみたい。夕暮れも近づいていることだし、泣き出す前にお迎えに行くとしようかしら?


【リリスのアジトで歩かされる少女】
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