ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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18.支部での生活

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 加入手続きが終わると、受付嬢のソフィアは寮のカギを手渡してくれた。
「こちらが、アキノスケさんとキンバリーの部屋になります」

 本当は個室の方がいいのだろうが、ソフィアによると部屋に余裕もないため、もし恋人同士なら相部屋にして欲しいという話だ。
 結婚前提で付き合っているのだからキンバリーも二つ返事で承諾し、こうしてカギを預かったわけである。


「では、さっそく部屋を見てみましょう」
「そうだね」
 すでに人間フォームに戻っている僕は、キンバリーと並んで廊下を歩いていき、割り当てられた部屋へと着いた。

 そこは支部の寮でも一番奥にあり、受付やトイレまで行くには手間がかかるが、月当たりの料金も安めに設定されている場所だ。
「正直、1か月あたり大銀貨4枚で借りられたのは大きいね」
「そうですよね。それも2人合わせて4枚ですから助かります」

 この国に流通している貨幣は、プラチナ貨、金貨、大銀貨、小銀貨、銅貨、ザラ銭など、様々な種類のコインが流通しているが、大銀貨1枚でだいたい1万円といった価値のようだ。
 つまり、このフロンティアトリトンズの寮の代金は、1か月あたり僕とキンバリーの2人で4万円だ。


 鍵を開けて部屋へと入ってみると、部屋の広さは6~7畳ほどで2人で暮らすには狭いが、工夫すれば十分に暮らせそうな広さだった。
 しかも大きめのベッドや、食事用と思われるテーブルが備え付けられており、わざわざ家具を買いに行かなくても、最低限の生活は出来そうだ。

 キンバリーもホッとした様子だ。
「よかった。これならわざわざ買い物に行かなくてもよさそうですね」
「新冒険者街の支部に泊まるのは初めてなのかい?」
「はい。ここには何度も来たことはありましたが……ほとんどが日帰りだったので」


 間もなく僕は、荷物などを部屋に置くと、ギルドの受付に行って注文していた夕食を受け取った。
 このフロンティアトリトンズの受付は、夕方になると酒場として機能するようになり、受付嬢ソフィアも寮へと戻ってしまう。

 ソフィアは優しいし面倒見も良いので、業務外の時間でもギルド業務を受け付けてくれるが、あまり業務時間外で頻繁に仕事を頼みに行くと、後でスティレット支部長から”指導”を受けるそうだ。


 さて、小難しい話はこれくらいにして、僕はキンバリーと自分たちの部屋で夕食を楽しむことにした。
 今日のメニューは、川魚のワイン蒸しや、ミネストローネスープ、ライムギパン、サラダなどのトリトンズの定番メニューだった。現代の食事になれた僕でも美味しいと感じるほどだ。

 不満と言えば、パンがパサパサしていて、僕の世界に比べて品質が及ばないことくらいだろうか。そんなライムギパンでも、行動中に食べていた乾パンや固く焼いたビスケットに比べると、圧倒的に美味と言える味だ。
「あなた、ワインも召し上がりますか?」
「ああ、すまない」

 そう言いながらコップを差し出すと、キンバリーは丁寧に注いでくれた。
「さっき、酒場に行ったときに驚いたけど、ここのギルドのメンバーって、家族単位で入っている人が多いんだね」
「そうなんですよ。実は私の両親と妹たちも、このギルドにお世話になっていまして……」


 僕はその話を聞いて、おや……と思った。
 キンバリーには確か、兄がいるという話をどこかで聞いた気がするが、彼はギルドメンバーではないのだろうか。
 まあ、僕の聞き違いかもしれないし、ここは聞き流しておくか。

 飲酒をして、少し体も温まってきたところで、そろそろ休むことにした。
 明日も仕事で忙しそうだし……


【現在のフロンティアトリトンズ】
 20年前は、旧冒険者街に本部があるだけだったが、今は旧冒険者街、新冒険者街、フロンティア国の首都の3個所に増えている。

 ギルド長のフェリシティーや、勇者資格を持つカイト、S級ヒーラーのオリヴィアは旧冒険者街の本部。

 フロンティア首都には、副ギルド長のアイラ、一角獣スティレットの初仔にしてウマ勇者のブラウンエストック。

 新冒険者街の支部には、ウマ勇者のスティレットとアキノスケたちがいる。


 なお、スティレットの子供は、一角獣にしては少なく30頭ほどだが、孫とひ孫を含めると1000頭を超える。


【こちらを見るキンバリー(翌朝)】
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