ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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17.邪竜のほこらに挑むには……?

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 晴れてフロンティアトリトンズの一員になれた僕は、すぐに受付嬢のソフィアやキンバリーから詳しい説明を受け、書類の作成に入った。

 いくら文明レベルが高い国に住んでいたとはいえ、僕にとっては初めて見るような書類や契約書もあり、2人からの詳しく解説がなければ、手早く書き終えることはできなかっただろう。

「ギルドの取り分が2割……これって凄いことなんじゃないの?」
「はい。比較的良心的なギルドでもギルド側の取り分は半分。下手をしたら7割以上を持って行くギルドだってあるくらいですからね」
「僕の故郷でも、これだけ従業員に還元してくれるような会社って、まずないんじゃないかな?」


 書類がまとまると、受付嬢のソフィアは言った。
「アキノスケさんは、邪竜のねぐらに挑むのですね?」
「はい。そうしたいと思っています」

 冒険者と言えば遺跡探索だし、なんとなく儲かりそうな感じがする。
 そんなことを漠然と考えていたら、ソフィアは言った。
「遺跡探索は、常に死と隣り合わせです。もし……挑まれるのなら十分な準備をした方がいいでしょう」

 彼女はそういうと、遺跡の資料を出した。
「トリトンズとしては、5人以上のパーティーで挑むことを推奨していますし……まずは、仲間を集めることから始められてはいかがでしょうか?」


 その話を聞いて、僕は確かに……と思いながら頷いた。
 やはり、冒険と言えば信頼できる仲間だ。仲間を募ってダンジョンに入るなんて、本当に冒険しているという感じがしていい。
 僕はすぐにキンバリーを見た。
「キンバリーは、来てくれるのかい?」

 そう聞くと、彼女は頷いた。
「あなたがそう望まれるのならお供しますが……実績のない状態で遺跡探索を希望しても、なかなか仲間は集まらないと思います。まずは、地道にゴブリン退治から始められては?」


 なんとも現実的な言葉を返されてしまった。
 僕って冒険とかは好きだけど、レベル上げは正直だるいという困ったタイプの人間だ。難色を示しているのを感じ取ってくれたのか、受付嬢のソフィアは言った。
「アキノスケさんの場合、ヒーラーとしての能力がありますから、まずはけが人の救護とかをして経験を積まれてはいかがでしょう?」

 その言葉を聞いて僕は、そうか……と納得していた。
 僕のアビリティは【ユニコーンケンタウロス】。つまり【ユニコーン】が関わっているので、ヒーリングの力が備わっているんだ。
 ただ、困ったところもある。
「僕のヒーリングって、使用制限があって……ウマの時しか使えないんだ。それに……」
「それに、なんでしょう?」
「男に治療してもらって嬉しいかな? ヒールって普通……女の子がするものでしょ?」


 そう伝えたら、ソフィアとキンバリーは眉根をつり上げ、抗議してきた。
「そんなことはありません! アキノスケさん……貴方はどれだけ自分が恵まれたアビリティをお持ちかおわかりですか!? 200人以上が在籍している大手ギルドでも1人常勤のヒーラーが居れば恵まれているくらいなのです!」
「ソフィアの言う通りです! フロンティア国の最大手レッドトマホークや、最も入団が難しく人気があるインディゴメイルズでも、ヒーラー不足は死活問題と言われています!」

「わ、わかったわかった! とりあえず話を戻そう」


 先ほど言った通り、僕はヒーリングを使うにはウマにならないといけないという制約がある。
 つまり人間の状態で使えるのは、【ユニコーンケンタウロス】へのフォームチェンジと、【スペルクリエイター】だけということになる。なんだか面倒な話だ。

「なんで僕にだけこういう面倒な制限が……」
「騎乗時にわかりましたが、アキノスケ様がユニコーンになっているときは、アビリティのスロットが4つになっていました。そのまま無条件に使えたら身体への負荷が大きいので用途を限定されているのではないでしょうか?」

「なるほど、とりあえず地道に治療の仕事をしようかな」
「それなら、明日にでも来て欲しいという急ぎの依頼がありましたので……」



 僕がソフィアと、明日の仕事の打ち合わせを進めていたとき、フロンティアトリトンズのギルド員が、あるダンジョンの調査を行っていた。

 オオカミ耳を持つ彼女の名はクロエ。父にエドワード。母にジルーという、ウェアウルフでも一流の血統を受け継ぐトリトンズ期待の新人だった。


 しばらくあたりを見回していた彼女は、「おかしい……」と呟くと足を止めた。
「ここには確かに、ゴブリンたちの巣があったはず……それが根こそぎ壊滅するなんて……」

 彼女は眉間にしわを寄せると、そっと地面のにおいを確認した。
「……ゴブリンの臭いが薄い。これって……!」


 その直後に、彼女の「しまった!」という声が響き渡った。


【ギルドの受付嬢ソフィア】
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