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14.新冒険者街への道
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身体をきれいに洗い、乾いたところで僕とキンバリーは街道へと出た。
ここはツーノッパ地域でも田舎と言われる、フロンティアという国の更に辺境にある街道のようだ。
そのため、街道と言ってもきちんと整備されたものではなく、ギリギリで荷馬車が行き来できる程度の道幅しかない。
「ところどころに木の根が這い出ているし……ここを荷馬車で通るとかえって苦労しそうだね」
「そうですね。実際に……行商人もこの道は通りたがらないそうです」
なんだか、キンバリーの言いたいこともわかる気がした。
この街道は森の中に伸びているため見通しが悪く、山賊などが隠れられそうな死角がとても多い。ウマの広い視野と、人間の1000倍ほどの嗅覚がなければ、生きた心地がしないだろう。
「こちら側に進んでください」
「わかった」
キンバリーの指示に従いながら、僕は街道をひたすら進んでいった。
すると、場所によっては血の臭いが残っている場所もある。恐らくここで旅人が山賊に襲われたのだろう。昼間でも薄暗いこの道を、夜に進んだら……出そうである。
「……ここって、森の中よりも危険かもしれないね」
「はい。ですから……なるべく最小限で済むようにショートカットしました」
僕らは比較的、見通しのいい場所で休憩を取りながら進んでいくと、やがて日が沈みはじめて、辺りが夕闇に包まれるようになった。
すると当然のことながら、木の陰や岩陰といった場所から不穏な視線を感じるようになっていく。
「気を付けてください。強い瘴気を感じます」
「夜盗以外の存在にも注意を払わないといけないようだね」
その謎の視線は、一定の距離を取りながら僕たちの後をついてきているようだ。
なぜそう言い切れるのかと言えば、僕が歩みを緩めても、そして早めても同じように、その気配も合わせてくるからである。
しかも、よく観察すると、その思念は1つではなく複数の思念が合体して1つの思念となっているような気さえする。
「この視線を送ってきているなにか……目的はなんだろうね?」
「わかりませんが、用心に越したことはありません」
彼女はそう言いながら姿勢を低くして、僕の首を抱きかかえるような行動を取った。さすがにこの不気味な森の中では心細いのだろう。
僕としても、この街道に1人というのはごめん被りたい。
およそ2時間くらい歩き続けると、辺りはすっかりと暗くなっていた。
とはいっても、ウマは夜でも視界を失わないため、人間の目で例えれば夕方くらいにはよく見えるものだ。
後ろの異様な気配に気を取られることなく、僕は周囲の様子を確認しながら進んでいく。
すると……物陰に山賊の斥候と思われる男の姿を確認した。
「キンバリー……気付いている?」
そう質問すると、キンバリーは心細そうに答えた。
「今の物音……もしかして……」
「そのもしかして……だよ」
僕は夜の闇を睨むように、周囲をくまなく探った。
馬の耳が賊の動向と、わずかな話声を聞きとった。数はおおよそ15人か。思った以上に大規模な人数じゃないか。厄介な連中が待ち伏せしていたものだ。
「どうする、先の道で待ち伏せするつもりみたいだけど……強行突破する?」
「私に考えがあります。合図をしたら走ってください」
「わかった」
そのまま気づかないふりをして進んでいくと、山賊たちのわずかな話声や、そっと武器を手に取る音、地面を踏みしめる音が聞こえてきた。同時に……連中の臭いもしっかりとわかった。
キンバリーの耳も、山賊たちの動向を聞きとっているのだろう。
彼女は道の奥を睨むと、やがて小さく僕の肩を叩いた。これは強行突破の合図だ。
指示通りに僕は全力疾走すると、彼女は右手で僕にしがみつきながら左手に何かを持っていた。これは……杖だろうか。
それは何の変哲もない杖だったが、曲がり角を曲がると、待ち伏せしている山賊たちと遭遇した。
「カモが来たぞ!」
「よし、やれ!」
山賊たちが一斉に襲い掛かろうとしたが、こいつらは急に驚き止まっていた。どうして急に驚いたのかは知らないが、僕も固有魔法を使うことにした。
――スペース!
たとえ出来損ないでも、ワープ魔法はワープ魔法だ。
僕の身体は一瞬にして、山賊たちの防衛ラインを突き抜けて、遥か10メートル後方に現れると、そのまま直進していき、やがてカーブして走り去った。
山賊たちはと言えば、キツネにつままれたように目を白黒とさせていた。
「な、何だいまの……ウマの幽霊か!?」
「背中に女っぽいのも乗ってたぞ? ご主人様とおウマさまの幽霊かぁ?」
山賊たちが真っ青な顔をしながら、お互いに好き放題言っていると、賊の1人が後ろに下がりながら、藪の中を指さしていた。
「おい、なんだよ?」
「お、お、お頭……あの女……」
「ああん?」
山賊たちは、その指の先に視線を向けた。
ここはツーノッパ地域でも田舎と言われる、フロンティアという国の更に辺境にある街道のようだ。
そのため、街道と言ってもきちんと整備されたものではなく、ギリギリで荷馬車が行き来できる程度の道幅しかない。
「ところどころに木の根が這い出ているし……ここを荷馬車で通るとかえって苦労しそうだね」
「そうですね。実際に……行商人もこの道は通りたがらないそうです」
なんだか、キンバリーの言いたいこともわかる気がした。
この街道は森の中に伸びているため見通しが悪く、山賊などが隠れられそうな死角がとても多い。ウマの広い視野と、人間の1000倍ほどの嗅覚がなければ、生きた心地がしないだろう。
「こちら側に進んでください」
「わかった」
キンバリーの指示に従いながら、僕は街道をひたすら進んでいった。
すると、場所によっては血の臭いが残っている場所もある。恐らくここで旅人が山賊に襲われたのだろう。昼間でも薄暗いこの道を、夜に進んだら……出そうである。
「……ここって、森の中よりも危険かもしれないね」
「はい。ですから……なるべく最小限で済むようにショートカットしました」
僕らは比較的、見通しのいい場所で休憩を取りながら進んでいくと、やがて日が沈みはじめて、辺りが夕闇に包まれるようになった。
すると当然のことながら、木の陰や岩陰といった場所から不穏な視線を感じるようになっていく。
「気を付けてください。強い瘴気を感じます」
「夜盗以外の存在にも注意を払わないといけないようだね」
その謎の視線は、一定の距離を取りながら僕たちの後をついてきているようだ。
なぜそう言い切れるのかと言えば、僕が歩みを緩めても、そして早めても同じように、その気配も合わせてくるからである。
しかも、よく観察すると、その思念は1つではなく複数の思念が合体して1つの思念となっているような気さえする。
「この視線を送ってきているなにか……目的はなんだろうね?」
「わかりませんが、用心に越したことはありません」
彼女はそう言いながら姿勢を低くして、僕の首を抱きかかえるような行動を取った。さすがにこの不気味な森の中では心細いのだろう。
僕としても、この街道に1人というのはごめん被りたい。
およそ2時間くらい歩き続けると、辺りはすっかりと暗くなっていた。
とはいっても、ウマは夜でも視界を失わないため、人間の目で例えれば夕方くらいにはよく見えるものだ。
後ろの異様な気配に気を取られることなく、僕は周囲の様子を確認しながら進んでいく。
すると……物陰に山賊の斥候と思われる男の姿を確認した。
「キンバリー……気付いている?」
そう質問すると、キンバリーは心細そうに答えた。
「今の物音……もしかして……」
「そのもしかして……だよ」
僕は夜の闇を睨むように、周囲をくまなく探った。
馬の耳が賊の動向と、わずかな話声を聞きとった。数はおおよそ15人か。思った以上に大規模な人数じゃないか。厄介な連中が待ち伏せしていたものだ。
「どうする、先の道で待ち伏せするつもりみたいだけど……強行突破する?」
「私に考えがあります。合図をしたら走ってください」
「わかった」
そのまま気づかないふりをして進んでいくと、山賊たちのわずかな話声や、そっと武器を手に取る音、地面を踏みしめる音が聞こえてきた。同時に……連中の臭いもしっかりとわかった。
キンバリーの耳も、山賊たちの動向を聞きとっているのだろう。
彼女は道の奥を睨むと、やがて小さく僕の肩を叩いた。これは強行突破の合図だ。
指示通りに僕は全力疾走すると、彼女は右手で僕にしがみつきながら左手に何かを持っていた。これは……杖だろうか。
それは何の変哲もない杖だったが、曲がり角を曲がると、待ち伏せしている山賊たちと遭遇した。
「カモが来たぞ!」
「よし、やれ!」
山賊たちが一斉に襲い掛かろうとしたが、こいつらは急に驚き止まっていた。どうして急に驚いたのかは知らないが、僕も固有魔法を使うことにした。
――スペース!
たとえ出来損ないでも、ワープ魔法はワープ魔法だ。
僕の身体は一瞬にして、山賊たちの防衛ラインを突き抜けて、遥か10メートル後方に現れると、そのまま直進していき、やがてカーブして走り去った。
山賊たちはと言えば、キツネにつままれたように目を白黒とさせていた。
「な、何だいまの……ウマの幽霊か!?」
「背中に女っぽいのも乗ってたぞ? ご主人様とおウマさまの幽霊かぁ?」
山賊たちが真っ青な顔をしながら、お互いに好き放題言っていると、賊の1人が後ろに下がりながら、藪の中を指さしていた。
「おい、なんだよ?」
「お、お、お頭……あの女……」
「ああん?」
山賊たちは、その指の先に視線を向けた。
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