ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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12.頼りになる彼女

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 キンバリーは、恥ずかしそうに僕を見ていた。
「申し訳ありません。私が見張るはずだったのに……眠ってしまっていたなんて……」
「あんな目に遭ったんだから、疲れが溜まっていて当然だよ。それよりも邪竜のねぐら……だったよね?」

 邪竜のねぐらという話をすると、キンバリーは頷いた。
「……はい。あそこからは、様々な古代器アーティファクトや薬の素材などが見つかっています。きっと、アキノスケ様もご満足いただけると思います」

 その言葉を待っていた。
 僕は満足しながら頷くと、後ろ脚を下げてお座りのようなポーズを取った。
「それは楽しみだ! 早速、新冒険者街を目指そう!」
「わかりました」


 キンバリーを背中に乗せると、僕はゆっくりとした足取りで歩き出した。
「歩きやすいね。もしかして……エルフの道?」
「はい。ここまで離れればウェアウルフたちも追ってはこないと思いまして……」
「心配しなくても大丈夫だよ。今の僕はウマだから前よりも監視できるし、いざとなったら振り切ってみせる」
「では、私もお役に立てるように頑張ります」

 強気なことを言っていても、やはりキンバリーに頼らないと旅一つできないのが僕である。
 なにせ、樹海の中を歩いた経験なんて物はないから。彼女に行先をナビしてもらわないと、どこに進めばいいのかわからないのだ。


 しかもキンバリーは木の実が成っている場所や、沢のある場所を見つけて小休憩を入れられるようにもしてくれている。特に喉が渇いたときは、彼女の能力はとても重宝した。

 いくらウマのような見た目になると言っても、生水を飲んだらお腹を壊してしまう。
 そこで彼女は荷物からバケツを取り出すと、沢の水をすくってから魔法で水をろ過する魔法を使ってくれた。
「便利な魔法だね」
「元々は、【チャージウォーター】というアビリティだったようです」


 ウォーターチャージ。如何にもという雰囲気の名前だけど、どういう能力だったんだろう。
「どういうアビリティなの?」
「砂漠のように水気のない場所でも、水を出現させる固有特殊能力だったそうです。とても便利なので魔法使いたちが魔法化しようと努力した結果……様々な魔法が出ました」

 僕は自分の目の前にあるバケツを眺めた。
「この水のろ過魔法も……その研究の成果というわけだね?」
「はい、この魔法は【フィルトレーション】と言います。他にも……」

 彼女はそういうと、指を折りながら説明を始めた。
「大気の水分から水を集める魔法や、地面から水を集める魔法。海水を水と塩などに分離する魔法。植物から水分を取り出して乾燥させる魔法などもあります」

 ほえ~~という感じで聞き流してしまいそうな会話だが、この1つ1つの魔法を作るために、魔法使いたちは昼夜を問わずに研究を重ねて苦労したのだろう。
 これらの魔法を作りたくても実用化までいかずに、一生を終えてしまった魔法使いも星の数ほどいると考えると、彼らの努力には頭が下がる。

「それらの魔法について……もう少し踏み込んだ話を聞きたいな」


 そう伝えると、キンバリーは丁寧に魔法1つ1つの構造を説明してくれた。
 まだまだ若いというのに、思わず感心してしまうほど彼女の説明は上手で、脳内にその魔法を使っている光景が思い浮かんでくる。

 おおよそ30分ほどで、全ての説明を聞き終えると、僕は実際にそれらの魔法を使ってみた。
 まずは水をろ過し、次に大気の湿気から水を集め、3番目に湧き水からミネラルを取り出し、最後に植物から少しだけど水を出したとき……僕の中でひらめきが起こった。


――固有魔法【ユニコーンウォーター】


 これは簡単に言えば、最も調達しやすい場所から水分を集める魔法だ。
 結局やっているのは、5つの水調達魔法のどれかを使っているだけなのだが、どの方法が自分や周りの環境に負担が少ないのかを自動的に見つけ出してくれるという特徴がある。

 試しに、目の前にある泉に使ってみると、同じくらいの透明度が実現できた。
「ほ、本当にきれいな水ですね……」
「すこし身体を洗っておこうかな。そろそろ街道に出るんだよね?」

 そう伝えると、キンバリーは微笑んだ。
「それなら、身体のお手入れはお任せください!」

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