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ブラッドリリスの動向1
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私の名はブラッドリリス。
魔王軍四天王の中でいちばんの小物にして、新参者という存在。
さて、そんなコモノな私がいま何をしているのかと言えば、浚ってきたエルフ女を特殊な溶液に付けようとしているの。
こうすることでね、素材である彼女の中で、隠れているアビリティが開花することがあるのよ。
「やめてよ、私が何をしたって言うの!?」
「ふふ……粋がいいわね。この調子で頑張りなさいよ」
「……っっ!」
彼女の頭を押さえつけると、バタバタと暴れたので溶液が私の顔や服に着いた。けれど、これもまた一興というもの。可愛い仔羊よ、たっぷりと暴れてちょうだい。
こういう暗黒の儀式は、強すぎると素材を壊してしまうし、かといって弱すぎると時間の無駄になる。だから加減というモノが大事になる。
溶液を呑み込んでぐったりした仔羊エルフちゃんを、溶液で満たした棺から出すと、私は溶液を吐かせて意識を戻した。
「げほ……お願い……ゴホ……だから……もう……やめてよ……!」
うーん、これで第2のアビリティは開花したんだけど、第3のアビリティはまだね。それとももっと凄い拷問をしないとダメなのかしら。それこそ、本気で命の危機に瀕するようなヤツ……
そんな感じに悩んでいたら、急ぎ足で近づいてくる者がいた。
「吸血鬼公爵さま、ご報告があります!」
「なあに?」
「魔導測定器が時空の強い歪みを感知しました」
「時空の歪み……?」
私の顔がちょうど水槽に映ったけれど、その表情は曇っていた。
このブラッドリリスにとって、異世界人の登場は悪い兆しに他ならない。まさか……と思いながら、私は聞き返した。
「どれくらいの歪み? 誰かがワープ魔法を使った程度? それとも……?」
報告に上がった部下は、言いづらそうに答えた。
「転移規模自体はとても小さいです。数は人間1人分くらい……ですが……」
「転移距離が……恐ろしく長いのかしら?」
「その通りです。移動距離を測定しようとしたら計器が振り切れてしまいました。こんなことは初めてです」
時空測定器は、私が20年前の戦いの反省から作り出した魔導器なの。
これは論理的には、ウーマシア大陸……いいえ、球形をしているこの惑星の隅々を測定できるように設計しているから、計器の針が振り切れるということは、もう世界の外側から来たとしか考えられないわね。
「……その転移してきた場所というのはわかる?」
「特定を急いでいますが、歪みはほんの一瞬だったので……」
「場所の特定を急いでちょうだい。もし異世界人が現れたのなら……すぐに息の根を止めるべき!」
「は、ははっ!」
部下の背中を見送りながら、私は指先を震わせていた。
20年前にも、ひとりの異世界人が現れて、私にとって最も大切な素材を奪われたことがある。その異世界人はそのまま素材と結婚して、4人の子供たちを設けたと聞いている。
異世界人の実力は、私たち魔族から見て脅威そのもの。
連中は私たちでは想像もしないようなアビリティを持ち、ほとんどの場合が私たちと敵対して恐るべき勇者となる。私の魔族生活の中でさえ、何人もの同僚が奴らに倒されていった。
だけどもっと怖いのは、そんな異世界人も恋をするし現地民との間に子供を設けるということ。
本来交わることは無いはずの、2つの世界の血が交じり合ったとき、その子供の手元に送られてくる神の贈り物は、本当に未知数と言える。
そこまで考えると、私は思わず頭を抱えていた。
そういえば、20年前の転移者の子供の1人が行方がわからなくなっている。普通に考えれば捨て置いていいほどの確率なのだけど、誰かが作為的に……その転移者と行方不明者を合わせていたとしたら……?
よく考えればいままで異世界転移者と、転移者の子供がカップルとなって子を成したことなんてない。
これをもし、捨て置いたとしたら……どんな子供が生まれてくるというの!?
「すぐに見つけ出して……排除しなければ!」
魔王軍四天王の中でいちばんの小物にして、新参者という存在。
さて、そんなコモノな私がいま何をしているのかと言えば、浚ってきたエルフ女を特殊な溶液に付けようとしているの。
こうすることでね、素材である彼女の中で、隠れているアビリティが開花することがあるのよ。
「やめてよ、私が何をしたって言うの!?」
「ふふ……粋がいいわね。この調子で頑張りなさいよ」
「……っっ!」
彼女の頭を押さえつけると、バタバタと暴れたので溶液が私の顔や服に着いた。けれど、これもまた一興というもの。可愛い仔羊よ、たっぷりと暴れてちょうだい。
こういう暗黒の儀式は、強すぎると素材を壊してしまうし、かといって弱すぎると時間の無駄になる。だから加減というモノが大事になる。
溶液を呑み込んでぐったりした仔羊エルフちゃんを、溶液で満たした棺から出すと、私は溶液を吐かせて意識を戻した。
「げほ……お願い……ゴホ……だから……もう……やめてよ……!」
うーん、これで第2のアビリティは開花したんだけど、第3のアビリティはまだね。それとももっと凄い拷問をしないとダメなのかしら。それこそ、本気で命の危機に瀕するようなヤツ……
そんな感じに悩んでいたら、急ぎ足で近づいてくる者がいた。
「吸血鬼公爵さま、ご報告があります!」
「なあに?」
「魔導測定器が時空の強い歪みを感知しました」
「時空の歪み……?」
私の顔がちょうど水槽に映ったけれど、その表情は曇っていた。
このブラッドリリスにとって、異世界人の登場は悪い兆しに他ならない。まさか……と思いながら、私は聞き返した。
「どれくらいの歪み? 誰かがワープ魔法を使った程度? それとも……?」
報告に上がった部下は、言いづらそうに答えた。
「転移規模自体はとても小さいです。数は人間1人分くらい……ですが……」
「転移距離が……恐ろしく長いのかしら?」
「その通りです。移動距離を測定しようとしたら計器が振り切れてしまいました。こんなことは初めてです」
時空測定器は、私が20年前の戦いの反省から作り出した魔導器なの。
これは論理的には、ウーマシア大陸……いいえ、球形をしているこの惑星の隅々を測定できるように設計しているから、計器の針が振り切れるということは、もう世界の外側から来たとしか考えられないわね。
「……その転移してきた場所というのはわかる?」
「特定を急いでいますが、歪みはほんの一瞬だったので……」
「場所の特定を急いでちょうだい。もし異世界人が現れたのなら……すぐに息の根を止めるべき!」
「は、ははっ!」
部下の背中を見送りながら、私は指先を震わせていた。
20年前にも、ひとりの異世界人が現れて、私にとって最も大切な素材を奪われたことがある。その異世界人はそのまま素材と結婚して、4人の子供たちを設けたと聞いている。
異世界人の実力は、私たち魔族から見て脅威そのもの。
連中は私たちでは想像もしないようなアビリティを持ち、ほとんどの場合が私たちと敵対して恐るべき勇者となる。私の魔族生活の中でさえ、何人もの同僚が奴らに倒されていった。
だけどもっと怖いのは、そんな異世界人も恋をするし現地民との間に子供を設けるということ。
本来交わることは無いはずの、2つの世界の血が交じり合ったとき、その子供の手元に送られてくる神の贈り物は、本当に未知数と言える。
そこまで考えると、私は思わず頭を抱えていた。
そういえば、20年前の転移者の子供の1人が行方がわからなくなっている。普通に考えれば捨て置いていいほどの確率なのだけど、誰かが作為的に……その転移者と行方不明者を合わせていたとしたら……?
よく考えればいままで異世界転移者と、転移者の子供がカップルとなって子を成したことなんてない。
これをもし、捨て置いたとしたら……どんな子供が生まれてくるというの!?
「すぐに見つけ出して……排除しなければ!」
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