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8.自分を追い込め!
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魔法トレースで見えたのは、今のキンバリーの姿だった。
一瞬、生贄に捧げられようとしているのかと焦ったが、どうやらこれは身体を女ウェアウルフたちに洗わせようとしているようだ。
だけど、胸を撫でおろしている場合ではない。ウェアウルフたちは彼女を生贄に捧げるつもりに変わりはないようだ。問題は、そこまでどれだけ時間が残されているかということだろう。
僕は魔法を解除すると、再び記憶の中を探りはじめた。
「…………」
「…………」
もう一度だけ確認してみたけれど、僕自身の記憶の中で魔法と結びつきそうなモノはない。
やはり、キンバリーの記憶を頼りに、魔法を習得するしかなさそうだ。
彼女を救出するための魔法を学ぶため、僕は腰を下ろすと全神経を集中した。
できればキンバリーをここに手繰り寄せたり、僕が彼女の側までワープするような魔法を見つけるのが最優先だ。もしそれがなくても、洞窟内の状況を把握したり、鍵穴を空けるような魔法があるといい。
キンバリーの記憶をたどってみると、鍵穴を空ける魔法を見つけた。
その名前はアンロック。手で触れればカギ無しでも錠を開錠するという便利なシロモノだが、構造が複雑なカギほど失敗率も高く、更にメンタルポイントも消費するようだ。
さて、基本的な性能がわかったところで、今度は元となったアビリティはどんなものだったのだろう。
先ほどと同じように、キンバリーの記憶を掘り起こしても、アンロックに関して元のアビリティに関するような情報は出てこなかった。
これは困った……。元となったアビリティの正体がわからなければ、アンロックが自在に扱えない。どうして、魔導書には元の魔法が載っていないのだろう。
少し悩んでいると、おや……と思った。
アンロックって、要するにカギを開ける魔法だが、カギを閉める魔法というのはないのだろうか。
試しに調べてみると、やはりあった。こっちの名前はロックアップ。
「この魔法って……もしかして、分割されているのか?」
僕は更に、カギ関係の魔法を調べてみた。
そうしたら今度は、鍵穴と鍵のギザを変化させる魔法。キー・エクスチェンジという魔法がある。
その3つの魔法の構造が全て頭に入ったとき、僕の脳裏にはあるアビリティの名が浮かんだ。
――マスターキーシステム!
このアビリティは、カギの解除。施錠。交換を行えるだけでなく、自分の力でイメージ通りの鍵そのものを作り出すという、とても踏み込んだ特殊能力を持っていたようだ。
今の僕には、この特技を使いこなすことはできないが、機能限定版の【ユニコーンキーシステム】という独自の特技を入手することができた。
試しに、木の枝に錠前を設置してみると、消費MPが5ほどで、鍵のない錠前をセッティングできた。
この程度なら、切れ味のある武器か、専門の器具があれば簡単に破られてしまうだろうが、足止めくらいにはなる。
「これも、試してみようかな……?」
角の先端を近づけて、錠前にアンロックをかけてみると、カチッという音と共に錠前が開いた。
続いて、ロックアップをかけてみると、空いていた錠前がカチッという音と共にセッティングされた。
こちらも、問題はないようだ。
そして最後に、キー・エクスチェンジを使うと、錠前の鍵穴の構造が変化した。僕でも一通りのことができるようである。
とりあえず、僕にしてはなかなかに強力な特技を身に着けられたワケだけど、この能力だけでキンバリーを取り返せるほど、世の中は甘くはないだろう。
僕は再び、キンバリーの記憶をたどって、役立ちそうな魔法はないかを調べることにした。
「…………」
「…………」
しばらく記憶を辿ってみると、イメージした街に転移するという、とても便利な魔法があることに気が付いた。
どうやら、この魔法は専用の魔法陣を用いて、更に様々な下準備が必要みたいだが、元となったアビリティの持ち主は、もっと気楽に街から街を自由に行き来していたようだ。
「この魔法……なんとしてもモノにしたいな」
なんとか、僕のようなウマでも使えるようにできないか考えを巡らせていると、別の魔法だがダンジョンの中から入り口まで一瞬で戻れる魔法もあることに気付いた。
この魔法も、使用すると装備品や所持品の大半を失ってしまうようだが、元のアビリティはと言えば、ほぼノーリスクで使うことができたようだ。
「このふたつのアビリティ……原理的には同じだよな……」
しばらく悩んでいると、街から街を移動する場合と、ダンジョンから脱出する場合では、移動距離なのか、高さなのかという違いしかないことに気が付いた。
僕には手がないので魔法陣は作れないが、例えば目の前に瞬間移動したいと思ったら、できるのだろうか?
瞬間移動魔法の原理を考えながら、目の前を睨んでいると……あるキーワードが脳裏に浮かんだ。
ーースペース!
頭の中で叫ぶと、僕の身体は本当に短い距離だったが瞬間移動していた。
その距離は、おおよそ10メートルほどだろうか。おもしろいのは、途中に生えていた木や草も飛び越えて、10メートル先に移動していたことである。
「これ……かなり便利な特技だな……」
【ユニコーンキーシステム】に【スペース】。切り札が少しずつ揃ってきたが、まだ狼人間たちとやり合うには不安が残る。
もう一声……強い魔法が欲しいところだ。
キンバリーの記憶をもう一度、最初から辿ってみると、水の上を歩くという特殊能力を見つけた。
これは……スペースとは別の意味で、重宝する能力かもしれない。
【アキノスケのワガママボディ】
一瞬、生贄に捧げられようとしているのかと焦ったが、どうやらこれは身体を女ウェアウルフたちに洗わせようとしているようだ。
だけど、胸を撫でおろしている場合ではない。ウェアウルフたちは彼女を生贄に捧げるつもりに変わりはないようだ。問題は、そこまでどれだけ時間が残されているかということだろう。
僕は魔法を解除すると、再び記憶の中を探りはじめた。
「…………」
「…………」
もう一度だけ確認してみたけれど、僕自身の記憶の中で魔法と結びつきそうなモノはない。
やはり、キンバリーの記憶を頼りに、魔法を習得するしかなさそうだ。
彼女を救出するための魔法を学ぶため、僕は腰を下ろすと全神経を集中した。
できればキンバリーをここに手繰り寄せたり、僕が彼女の側までワープするような魔法を見つけるのが最優先だ。もしそれがなくても、洞窟内の状況を把握したり、鍵穴を空けるような魔法があるといい。
キンバリーの記憶をたどってみると、鍵穴を空ける魔法を見つけた。
その名前はアンロック。手で触れればカギ無しでも錠を開錠するという便利なシロモノだが、構造が複雑なカギほど失敗率も高く、更にメンタルポイントも消費するようだ。
さて、基本的な性能がわかったところで、今度は元となったアビリティはどんなものだったのだろう。
先ほどと同じように、キンバリーの記憶を掘り起こしても、アンロックに関して元のアビリティに関するような情報は出てこなかった。
これは困った……。元となったアビリティの正体がわからなければ、アンロックが自在に扱えない。どうして、魔導書には元の魔法が載っていないのだろう。
少し悩んでいると、おや……と思った。
アンロックって、要するにカギを開ける魔法だが、カギを閉める魔法というのはないのだろうか。
試しに調べてみると、やはりあった。こっちの名前はロックアップ。
「この魔法って……もしかして、分割されているのか?」
僕は更に、カギ関係の魔法を調べてみた。
そうしたら今度は、鍵穴と鍵のギザを変化させる魔法。キー・エクスチェンジという魔法がある。
その3つの魔法の構造が全て頭に入ったとき、僕の脳裏にはあるアビリティの名が浮かんだ。
――マスターキーシステム!
このアビリティは、カギの解除。施錠。交換を行えるだけでなく、自分の力でイメージ通りの鍵そのものを作り出すという、とても踏み込んだ特殊能力を持っていたようだ。
今の僕には、この特技を使いこなすことはできないが、機能限定版の【ユニコーンキーシステム】という独自の特技を入手することができた。
試しに、木の枝に錠前を設置してみると、消費MPが5ほどで、鍵のない錠前をセッティングできた。
この程度なら、切れ味のある武器か、専門の器具があれば簡単に破られてしまうだろうが、足止めくらいにはなる。
「これも、試してみようかな……?」
角の先端を近づけて、錠前にアンロックをかけてみると、カチッという音と共に錠前が開いた。
続いて、ロックアップをかけてみると、空いていた錠前がカチッという音と共にセッティングされた。
こちらも、問題はないようだ。
そして最後に、キー・エクスチェンジを使うと、錠前の鍵穴の構造が変化した。僕でも一通りのことができるようである。
とりあえず、僕にしてはなかなかに強力な特技を身に着けられたワケだけど、この能力だけでキンバリーを取り返せるほど、世の中は甘くはないだろう。
僕は再び、キンバリーの記憶をたどって、役立ちそうな魔法はないかを調べることにした。
「…………」
「…………」
しばらく記憶を辿ってみると、イメージした街に転移するという、とても便利な魔法があることに気が付いた。
どうやら、この魔法は専用の魔法陣を用いて、更に様々な下準備が必要みたいだが、元となったアビリティの持ち主は、もっと気楽に街から街を自由に行き来していたようだ。
「この魔法……なんとしてもモノにしたいな」
なんとか、僕のようなウマでも使えるようにできないか考えを巡らせていると、別の魔法だがダンジョンの中から入り口まで一瞬で戻れる魔法もあることに気付いた。
この魔法も、使用すると装備品や所持品の大半を失ってしまうようだが、元のアビリティはと言えば、ほぼノーリスクで使うことができたようだ。
「このふたつのアビリティ……原理的には同じだよな……」
しばらく悩んでいると、街から街を移動する場合と、ダンジョンから脱出する場合では、移動距離なのか、高さなのかという違いしかないことに気が付いた。
僕には手がないので魔法陣は作れないが、例えば目の前に瞬間移動したいと思ったら、できるのだろうか?
瞬間移動魔法の原理を考えながら、目の前を睨んでいると……あるキーワードが脳裏に浮かんだ。
ーースペース!
頭の中で叫ぶと、僕の身体は本当に短い距離だったが瞬間移動していた。
その距離は、おおよそ10メートルほどだろうか。おもしろいのは、途中に生えていた木や草も飛び越えて、10メートル先に移動していたことである。
「これ……かなり便利な特技だな……」
【ユニコーンキーシステム】に【スペース】。切り札が少しずつ揃ってきたが、まだ狼人間たちとやり合うには不安が残る。
もう一声……強い魔法が欲しいところだ。
キンバリーの記憶をもう一度、最初から辿ってみると、水の上を歩くという特殊能力を見つけた。
これは……スペースとは別の意味で、重宝する能力かもしれない。
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