7 / 55
7.潜入! ウェアウルフ村
しおりを挟む
ウェアウルフの子供たちと一緒に門へと向かうと、ウェアウルフの2人組は僕たちを見てきた。
「ん、サム坊……そのウマはどこで拾ってきた?」
「みずあびをしていたら、ちかよってきたんだ」
ウェアウルフの1人は僕をじっとみると、そっと手を差し出してきた。
さすがに慣れ過ぎているのも不自然なので、僕は警戒して身を引く素振りをした。
「…………」
手を伸ばしたウェアウルフは少し不満そうな顔をしたが、隣にいたウェアウルフは笑いながら言った。
「たまたまボウズたちとウマが合っただけみたいだな」
「ウマだけにか……もっとウマいこと言って欲しいモンだ」
「はははは……ちゃんとおかーちゃんに許可を貰えるといいな」
まもなく子供たちは、自分たちの家へと案内してくれた。
元々ウェアウルフたちの家は、質素な造りをしており、貧乏な寒村という雰囲気の場所だが、この兄妹の住む家はその中でも特に貧しそうだった。
辛うじて納屋はあるようだけど家畜の臭いがしないし、家の壁もボロボロという感じだ。嵐が来たら壊れてしまいそうな危うさも感じる。
「おかーちゃーん!」
子供たちに呼ばれると、母親のウェアウルフが出てきた。
ウェアウルフと言っても、エルフハントをしに来たウルフマンの姿ではなく、一般的な主婦にオオカミ耳が付いているような外見の、どこにでもいるお母さんだ。
彼女はエプロン姿で出てきたが、僕を見てぎょっとしていた。
「おかえ……って、そのウマ……どこで拾ってきたの!?」
「かわのそばで水をのんでたんだ。ひとになれてるみたいだし……かっていい?」
母親は僕の顔を見ると、勿体ないと言いたげにため息を付いた。
「確かに……人慣れしてそうだけど、うちじゃ飼えないよ。お父さんの病気……治りそうにないしね」
「……そうかぁ」
ウェアウルフの子供たちは、残念そうに僕を見た。
「そういうわけで……エクセレントブラック号……おまえをかってやることはできないみたいだ」
そう言われると、僕はあえて残念そうな顔をして、低く喉を鳴らしてみた。
心の中では、ウェアウルフの村に入れたことを喜んでいるのだけど、それを表に出さないことが肝心だろう。
間もなく、首を下げて残念そうな雰囲気を出したまま、彼らの前から去っていくことにした。
幸いにも、このウェアウルフの村には、森などもあるため身を隠すのは容易い。森の中へと入り込むと、僕はキンバリーの匂いを探すことにした。
風向きが変わると、すぐに僕の鼻の穴に彼女の匂いが入り込んできた。
この様子だと、案外すぐ近くにいるようだ。
周囲を確認しながら森の中を進んでいくと、洞窟の前へとたどり着いたのだが、問題はここからだ。
『ここか……』
さて、どうするべきだろう。
下手に突っ込んだところで、変なウマが来たと追い返されるのがせいぜいだろう。入り口には見張りと思しきウェアウルフも立っているわけだし。
せめて、中の様子だけでも確認したい……そう思うと、自分のアビリティが【ユニコーン・ケンタウロス】という名前であることを思い出した。
――ユニコーンと言うことは、僕にも魔法が使えるのではないだろうか?
すぐに目を瞑ると、僕は頭の中の手帳を捲るように考えを巡らせた。
ニート生活がとても目立つけど、僕の35年間の記憶の中に何かヒントになることはないだろうか。
「…………」
「…………」
ニート時代に思い浮かぶことと言えば、親と言い合いをしたことや、他の兄弟からゴミのように見られたこと。他には……エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。バイクの画像や動画を見たこと。そしてエッチな画像を見たこと。
僕って、本当にゴミだっ!
ならば、更に記憶にさかのぼって働いているときは学生時代のころを思い出してみても、特に役に立ちそうもない情報しかない。自分のことをゴミゴミだと思ったとき……あれ、僕のモノではない記憶が混じっていた。
その記憶は、古めかしい建物……ちょうど中世のヨーロッパに出てきそうな木造りの建物の一室で、ボロボロの書物を読みながら、ときどきお茶を飲んでいる……そんな記憶だった。
――これ、キンバリーの記憶!?
どうやら、彼女とは首輪で繋がっているせいか、記憶の一部を共有できているようだ。
これは幸いと、僕は目を皿のようにして記憶を深堀した。
記憶の中の彼女は、魔法の勉強をしているようだ。それも……離れた位置にいる相手の様子を探るという、今の僕には重要な魔法を習得しようとしている!
その魔法はトレース。意味は後をつける。追跡。なぞる。
トレースという単語がわかると、キンバリーの視野を通して、その魔法の意味が意識の中に刻み込まれるように伝わってきた。だけど、これはまだ理論が構築されただけだ。
この魔法の本当の意味を知りたければ、元となったアビリティの名前が必要だ。
トレース。追跡……なぞる。
僕は少し考えてから、トレースだけに注目しても意味がないことに気が付いた。
これってパワーダウンしたのがトレースという能力となったんだ。つまり、元となった能力はもっと凄い。もっと色々なことができて、劣勢を跳ね返すような強力な特殊能力だったんだ。
元々はどんなことができたアビリティだ? どうしてお前はこういう形にパワーダウンした??
少し考えると、僕はハッとした。
人間の技術だけで再現できるのがトレース……追跡だったんだ!
つまり、人間では再現できない、神のみが作り出せる本体を推測すればいい。
僕はキンバリーの読んでいる魔導書の細かい文字を記憶として追った。彼女はアブソルートマナセンスという特殊能力を持っているおかげか、魔文字から著者の記憶と、当時の身体のマナバランスを推測してくれた!
わかった……第三の目だ!
トレースを使うと、すぐにキンバリーの姿が見えた。
「ん、サム坊……そのウマはどこで拾ってきた?」
「みずあびをしていたら、ちかよってきたんだ」
ウェアウルフの1人は僕をじっとみると、そっと手を差し出してきた。
さすがに慣れ過ぎているのも不自然なので、僕は警戒して身を引く素振りをした。
「…………」
手を伸ばしたウェアウルフは少し不満そうな顔をしたが、隣にいたウェアウルフは笑いながら言った。
「たまたまボウズたちとウマが合っただけみたいだな」
「ウマだけにか……もっとウマいこと言って欲しいモンだ」
「はははは……ちゃんとおかーちゃんに許可を貰えるといいな」
まもなく子供たちは、自分たちの家へと案内してくれた。
元々ウェアウルフたちの家は、質素な造りをしており、貧乏な寒村という雰囲気の場所だが、この兄妹の住む家はその中でも特に貧しそうだった。
辛うじて納屋はあるようだけど家畜の臭いがしないし、家の壁もボロボロという感じだ。嵐が来たら壊れてしまいそうな危うさも感じる。
「おかーちゃーん!」
子供たちに呼ばれると、母親のウェアウルフが出てきた。
ウェアウルフと言っても、エルフハントをしに来たウルフマンの姿ではなく、一般的な主婦にオオカミ耳が付いているような外見の、どこにでもいるお母さんだ。
彼女はエプロン姿で出てきたが、僕を見てぎょっとしていた。
「おかえ……って、そのウマ……どこで拾ってきたの!?」
「かわのそばで水をのんでたんだ。ひとになれてるみたいだし……かっていい?」
母親は僕の顔を見ると、勿体ないと言いたげにため息を付いた。
「確かに……人慣れしてそうだけど、うちじゃ飼えないよ。お父さんの病気……治りそうにないしね」
「……そうかぁ」
ウェアウルフの子供たちは、残念そうに僕を見た。
「そういうわけで……エクセレントブラック号……おまえをかってやることはできないみたいだ」
そう言われると、僕はあえて残念そうな顔をして、低く喉を鳴らしてみた。
心の中では、ウェアウルフの村に入れたことを喜んでいるのだけど、それを表に出さないことが肝心だろう。
間もなく、首を下げて残念そうな雰囲気を出したまま、彼らの前から去っていくことにした。
幸いにも、このウェアウルフの村には、森などもあるため身を隠すのは容易い。森の中へと入り込むと、僕はキンバリーの匂いを探すことにした。
風向きが変わると、すぐに僕の鼻の穴に彼女の匂いが入り込んできた。
この様子だと、案外すぐ近くにいるようだ。
周囲を確認しながら森の中を進んでいくと、洞窟の前へとたどり着いたのだが、問題はここからだ。
『ここか……』
さて、どうするべきだろう。
下手に突っ込んだところで、変なウマが来たと追い返されるのがせいぜいだろう。入り口には見張りと思しきウェアウルフも立っているわけだし。
せめて、中の様子だけでも確認したい……そう思うと、自分のアビリティが【ユニコーン・ケンタウロス】という名前であることを思い出した。
――ユニコーンと言うことは、僕にも魔法が使えるのではないだろうか?
すぐに目を瞑ると、僕は頭の中の手帳を捲るように考えを巡らせた。
ニート生活がとても目立つけど、僕の35年間の記憶の中に何かヒントになることはないだろうか。
「…………」
「…………」
ニート時代に思い浮かぶことと言えば、親と言い合いをしたことや、他の兄弟からゴミのように見られたこと。他には……エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。バイクの画像や動画を見たこと。そしてエッチな画像を見たこと。
僕って、本当にゴミだっ!
ならば、更に記憶にさかのぼって働いているときは学生時代のころを思い出してみても、特に役に立ちそうもない情報しかない。自分のことをゴミゴミだと思ったとき……あれ、僕のモノではない記憶が混じっていた。
その記憶は、古めかしい建物……ちょうど中世のヨーロッパに出てきそうな木造りの建物の一室で、ボロボロの書物を読みながら、ときどきお茶を飲んでいる……そんな記憶だった。
――これ、キンバリーの記憶!?
どうやら、彼女とは首輪で繋がっているせいか、記憶の一部を共有できているようだ。
これは幸いと、僕は目を皿のようにして記憶を深堀した。
記憶の中の彼女は、魔法の勉強をしているようだ。それも……離れた位置にいる相手の様子を探るという、今の僕には重要な魔法を習得しようとしている!
その魔法はトレース。意味は後をつける。追跡。なぞる。
トレースという単語がわかると、キンバリーの視野を通して、その魔法の意味が意識の中に刻み込まれるように伝わってきた。だけど、これはまだ理論が構築されただけだ。
この魔法の本当の意味を知りたければ、元となったアビリティの名前が必要だ。
トレース。追跡……なぞる。
僕は少し考えてから、トレースだけに注目しても意味がないことに気が付いた。
これってパワーダウンしたのがトレースという能力となったんだ。つまり、元となった能力はもっと凄い。もっと色々なことができて、劣勢を跳ね返すような強力な特殊能力だったんだ。
元々はどんなことができたアビリティだ? どうしてお前はこういう形にパワーダウンした??
少し考えると、僕はハッとした。
人間の技術だけで再現できるのがトレース……追跡だったんだ!
つまり、人間では再現できない、神のみが作り出せる本体を推測すればいい。
僕はキンバリーの読んでいる魔導書の細かい文字を記憶として追った。彼女はアブソルートマナセンスという特殊能力を持っているおかげか、魔文字から著者の記憶と、当時の身体のマナバランスを推測してくれた!
わかった……第三の目だ!
トレースを使うと、すぐにキンバリーの姿が見えた。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
おウ魔王のごくごく平凡なダンジョン作成記 〜だから勇者さま、後生ですから、くれぐれも討伐には来ないで下さい〜
スィグトーネ
ファンタジー
馬モンスターのチャンスコネクター号は、緊張していた。
すでに就職活動で12連敗している彼にとって、今回の面接は決して失敗は許されない。
なぜ、それほどまでに彼が苦戦しているのかと言えば、最近の魔王たちは、採用人数を大きく絞っているからである。
近年ゴーレムの性能が上がっているため、少ない人員でもダンジョンを管理できてしまう。
魔王たちは、如何に少ない人員でダンジョンを運営するかを自慢しはじめており、巷ではコスパの良いダンジョンが持てはやされている。
だから、チャンスコネクター号も、今回の魔王に不採用と言われてしまうと、モンスター街の有力魔王で頼れる者がいなくなってしまう。
彼は緊張しながら待機していると、魔王の秘書がドアを開け……チャンスコネクターの名を呼んだ。
※この物語はフィクションです。
※また、表紙絵や物語の中に登場するイラストは、AIイラストさんで作成したモノを使っています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる