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3.御神木の前にて
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エルフの少女キンバリーは、僕の手を引いたまま森の中を進んでいた。
すると、不思議なことが起こっていることに気が付いた。
今までは下草やら腐葉土などで満足に歩けなかったはずなのに、彼女に案内してもらっていると、まるで芝生の上でも歩いているみたいにスムーズに森の中を歩くことができた。
「凄いね……本当に簡単に森の中を歩ける」
「エルフの道と呼ばれるものです。私はエルフの血が半分しかないので、本物には敵いませんけどね」
半分でこれほど簡単に進めるなら、純潔のエルフならどれほど凄いのだろうかと思える。
彼女は、ときどき休憩を挟みながら進んでいき、1時間ほどで霊力を放つ大木の前へとたどり着いた。
「もうじき、御神木にお会いできます。粗相のないようにお願いします」
「う、うん……!」
言われなくてもわかる。ここにいても強い霊力……と言えばいいのだろうか。とにかくすごい生命力の流れを感じ取ることができた。
思わず緊張してしまうと、キンバリーは微笑んだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。私に名前を付けて下さった方でもありますから」
「そ、そうなんだ……」
キンバリーは、御神木の前まで歩いていくと、左手で幹に触れてから耳慣れない言葉をしゃべりはじめた。
「…………」
「…………」
やがて彼女は僕を見た。
「首輪のことについて尋ねましたが、御神木様でもわからないそうです」
「そ、そうなのか……」
「そもそも見えないと言われたので、私たちにしかわからないモノなのかも……」
まあ、この透明な首輪からは、別に嫌な気配も感じないし、気にしなければどうってことはないのかもしれない。
「他には何か仰ってるのかい?」
キンバリーは視線を上げてから言った。
「後は……お前が結婚前提で付き合うのは賛成だが、気に入らないことが一つある……と言われました」
「気に入らないことって?」
そう聞き返すと、彼女は服を脱ぎはじめた。
「え、ちょっと……!」
「私もアキノスケ様に、背中を見せるべきでしたね」
彼女はそう言いながら僕に背中を向けてきた。
すると、そこにはHPをはじめとした様々な数字や文字が書かれていた。
【キンバリー 女 年齢17歳 種族:エルフ クラス:賢者 レベル23
HP 272/ 272 LP 4/4 MP 385/ 385】
さらに下を見ると、こんなことも書かれていた。
【父親:カイト 母親:オリヴィア 恋人:ウマカイアキノスケ
アビリティ1:精霊の左短刀(レフトダガー)
アビリティ2:悪戯の右手杖(ライトロッド)
アビリティ3:アブソルートマナセンス】
他にも左利きということや、持病の有無、過去5年分の年収、更に力や素早さなどのパラメーター、彼女自身の職歴……さらに生き物の殺害数なんてものまでしっかりと確認できた。
「これは……うかつに他人に見せびらかすものじゃないね。ありがとう……もういいよ」
「専用のアビリティを持っている人になれば、より細かく過去の行動を調べることもできるそうです」
彼女はそう言いながら、服を着はじめた。
「でもそれって、考えようによっては……えん罪を防いだりもできるんじゃない?」
「確かにそうですが、アビリティによっては偽りの情報を書き込んだりもできるそうなので、えん罪が起こらないとは限りません」
な、なるほど……つまり、調べるアビリティがあれば、誤魔化すアビリティも存在するのか。何だかややこしい話だ。
そんなことを考えていたら、キンバリーは笑った。
「では、アキノスケ様……御神木の御前で恋人の誓いを立てましょう」
「そうだね……どうすればいいの?」
そう質問すると、キンバリーはゆっくりと近づいてきて、僕の肩に両手を絡めてきた。
僕も174センチくらいあるんだけど、キンバリーも165センチはあるだろうか。それほど背伸びをしなくてもこちらに縋りつくことができている。
僕もまた、そっと彼女の腰に手を回した。なんて柔らかい肌だろう。それに……良い匂いもする。
すると、キンバリーは僕の後頭部に手を伸ばし、そのまま身を屈めるように催促し、僕が顔を近づけるとキンバリーも少しだけ背伸びをして、唇を重ねてきた。
彼女の舌先が、僕の口の中に入ってくると、こちらも舌を絡めてキンバリーの口中に入れた。
少女とキスすることがはじめてだった僕は、心臓の鼓動が大きくなり、少し強めにキンバリーを抱きしめると、彼女の柔らかい肌や、胸が僕の身体に当たった。
しばらく彼女の柔らかい肌や、甘い匂いを楽しんでいると、キンバリーは唇を離し、そして僕の首筋に自分の顔を当てながら言った。
「……御神木も確かに見届けたと仰っています」
それは僕もはっきりと感じ取っていた。
キンバリーと唇を重ねて、舌を絡め合ったとき、確かに視線を感じていた。
これで僕も晴れて彼女持ちか。
異世界に来て幸先の良いスタートだけど、これ……浮気をしている人間って、どういう表記になるんだろう。もしかしたら恋人や配偶者が複数いるという形になるのだろうか。
まあ、僕はハーレムを作るつもりはないから、知る必要もないことだろう。
――おめでとう。これで晴れて御神木の巫女を卒業……という形になったが、これからどうするのかな?
今の声はもしや御神木の声だろうか。どうして急に聞こえるようになったのかはわからなかったが、キンバリーはすぐに答えた。
『はい。今後の生活は、アキノスケ様と相談しながら決めようと思います』
――それがいいな。吾も草葉の陰から君たちの活躍を見守っていることにする
僕は深々と頭を下げ、そしてキンバリーは胸に手を当てて御神木にお礼と、そして旅立ちを告げた。
【少し恥ずかしそうに上着を脱ぐキンバリー】
【作者からの挨拶】
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この作品は、拙作【しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記】の20年後の世界を描いたものになります。
前作の主要キャラクターがどのような生活をしているのか、そしてラスボスの動き等も物語の中で落とし込みながら、なるべく描けていければと思います。
また、【お気に入り登録】やコメント等を頂けましたらとても励みになります。今後も【ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記】をお楽しみください。
すると、不思議なことが起こっていることに気が付いた。
今までは下草やら腐葉土などで満足に歩けなかったはずなのに、彼女に案内してもらっていると、まるで芝生の上でも歩いているみたいにスムーズに森の中を歩くことができた。
「凄いね……本当に簡単に森の中を歩ける」
「エルフの道と呼ばれるものです。私はエルフの血が半分しかないので、本物には敵いませんけどね」
半分でこれほど簡単に進めるなら、純潔のエルフならどれほど凄いのだろうかと思える。
彼女は、ときどき休憩を挟みながら進んでいき、1時間ほどで霊力を放つ大木の前へとたどり着いた。
「もうじき、御神木にお会いできます。粗相のないようにお願いします」
「う、うん……!」
言われなくてもわかる。ここにいても強い霊力……と言えばいいのだろうか。とにかくすごい生命力の流れを感じ取ることができた。
思わず緊張してしまうと、キンバリーは微笑んだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。私に名前を付けて下さった方でもありますから」
「そ、そうなんだ……」
キンバリーは、御神木の前まで歩いていくと、左手で幹に触れてから耳慣れない言葉をしゃべりはじめた。
「…………」
「…………」
やがて彼女は僕を見た。
「首輪のことについて尋ねましたが、御神木様でもわからないそうです」
「そ、そうなのか……」
「そもそも見えないと言われたので、私たちにしかわからないモノなのかも……」
まあ、この透明な首輪からは、別に嫌な気配も感じないし、気にしなければどうってことはないのかもしれない。
「他には何か仰ってるのかい?」
キンバリーは視線を上げてから言った。
「後は……お前が結婚前提で付き合うのは賛成だが、気に入らないことが一つある……と言われました」
「気に入らないことって?」
そう聞き返すと、彼女は服を脱ぎはじめた。
「え、ちょっと……!」
「私もアキノスケ様に、背中を見せるべきでしたね」
彼女はそう言いながら僕に背中を向けてきた。
すると、そこにはHPをはじめとした様々な数字や文字が書かれていた。
【キンバリー 女 年齢17歳 種族:エルフ クラス:賢者 レベル23
HP 272/ 272 LP 4/4 MP 385/ 385】
さらに下を見ると、こんなことも書かれていた。
【父親:カイト 母親:オリヴィア 恋人:ウマカイアキノスケ
アビリティ1:精霊の左短刀(レフトダガー)
アビリティ2:悪戯の右手杖(ライトロッド)
アビリティ3:アブソルートマナセンス】
他にも左利きということや、持病の有無、過去5年分の年収、更に力や素早さなどのパラメーター、彼女自身の職歴……さらに生き物の殺害数なんてものまでしっかりと確認できた。
「これは……うかつに他人に見せびらかすものじゃないね。ありがとう……もういいよ」
「専用のアビリティを持っている人になれば、より細かく過去の行動を調べることもできるそうです」
彼女はそう言いながら、服を着はじめた。
「でもそれって、考えようによっては……えん罪を防いだりもできるんじゃない?」
「確かにそうですが、アビリティによっては偽りの情報を書き込んだりもできるそうなので、えん罪が起こらないとは限りません」
な、なるほど……つまり、調べるアビリティがあれば、誤魔化すアビリティも存在するのか。何だかややこしい話だ。
そんなことを考えていたら、キンバリーは笑った。
「では、アキノスケ様……御神木の御前で恋人の誓いを立てましょう」
「そうだね……どうすればいいの?」
そう質問すると、キンバリーはゆっくりと近づいてきて、僕の肩に両手を絡めてきた。
僕も174センチくらいあるんだけど、キンバリーも165センチはあるだろうか。それほど背伸びをしなくてもこちらに縋りつくことができている。
僕もまた、そっと彼女の腰に手を回した。なんて柔らかい肌だろう。それに……良い匂いもする。
すると、キンバリーは僕の後頭部に手を伸ばし、そのまま身を屈めるように催促し、僕が顔を近づけるとキンバリーも少しだけ背伸びをして、唇を重ねてきた。
彼女の舌先が、僕の口の中に入ってくると、こちらも舌を絡めてキンバリーの口中に入れた。
少女とキスすることがはじめてだった僕は、心臓の鼓動が大きくなり、少し強めにキンバリーを抱きしめると、彼女の柔らかい肌や、胸が僕の身体に当たった。
しばらく彼女の柔らかい肌や、甘い匂いを楽しんでいると、キンバリーは唇を離し、そして僕の首筋に自分の顔を当てながら言った。
「……御神木も確かに見届けたと仰っています」
それは僕もはっきりと感じ取っていた。
キンバリーと唇を重ねて、舌を絡め合ったとき、確かに視線を感じていた。
これで僕も晴れて彼女持ちか。
異世界に来て幸先の良いスタートだけど、これ……浮気をしている人間って、どういう表記になるんだろう。もしかしたら恋人や配偶者が複数いるという形になるのだろうか。
まあ、僕はハーレムを作るつもりはないから、知る必要もないことだろう。
――おめでとう。これで晴れて御神木の巫女を卒業……という形になったが、これからどうするのかな?
今の声はもしや御神木の声だろうか。どうして急に聞こえるようになったのかはわからなかったが、キンバリーはすぐに答えた。
『はい。今後の生活は、アキノスケ様と相談しながら決めようと思います』
――それがいいな。吾も草葉の陰から君たちの活躍を見守っていることにする
僕は深々と頭を下げ、そしてキンバリーは胸に手を当てて御神木にお礼と、そして旅立ちを告げた。
【少し恥ずかしそうに上着を脱ぐキンバリー】
【作者からの挨拶】
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この作品は、拙作【しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記】の20年後の世界を描いたものになります。
前作の主要キャラクターがどのような生活をしているのか、そしてラスボスの動き等も物語の中で落とし込みながら、なるべく描けていければと思います。
また、【お気に入り登録】やコメント等を頂けましたらとても励みになります。今後も【ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記】をお楽しみください。
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