9 / 26
9.不毛な消耗戦
しおりを挟む
脱衣ブラックジャックは7回戦へと突入しようとしていた。
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、〇セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
アレックス。×上着、×靴、×シャツ、〇ズボン、〇パンツ
ケヴィン。×上着、×靴、×シャツ、×ズボン、〇パンツ
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着
ジルー。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇ズボン、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着
7回戦は、誰もエースを引かなかったし、さらにソフィアが3枚目を受けたった際に22を超えるアクシデントにも見舞われた。更に4枚目を受け取ったところでアレックスとジルーも立て続けにバストし、パーティーも半壊する状況となったが、ここでケヴィンの手札に奇跡が起きた。
「よし、エース来た!!」
ケヴィンの幸運により、奇術師の子供もセーターを脱ぎ、どうにか負け試合を実質引き分けにすることができた。
しかし続く8回戦では、誰もいいカードを引かないという不運が襲ってきた。
これによって、アレックス、ケヴィン、さらにはジルーまでもが一気に脱落し、小生たちの目の前で3人もの仲間が一気に消滅することになった。
「ここまでか……」
アレックスが肩を落とすと、ジルーは小生を見た。
「後は……お願いねディディ」
その言葉を受けた小生は、あえてジルーの席に腰を下ろすことにした。隣に座っているレティシアも、姿勢を正して奇術師の子供を睨んだ。
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着
まだ小生を含めて3人残っているとも言えるが、脱衣ブラックジャックのルールを考えると、凄く不利な状況に追い込まれたと言える。このゲームはプレイヤーの頭数が減れば減るほど出題者が有利になるからだ。
「…………」
このままじゃ負け確定だ。何か方法は無いか。頭数を1人でも増やすアイディアは……
考えを巡らせていると、小生の能力はユニコーンケンタウロスだということを思い出した。完全にウマやヒトになるだけでなく、身体の一部でもウマに出来ないだろうか。
今は座っているのだから、例えば足などは要らないはず。
――アビリティオン! ユニコーンケンタウロス!!
心の中で力いっぱいに念じると、小生は両足を一時的に消滅させる代わりに、自分の背中にウマの頭や前脚を出すことに成功した。それだけでなく、覆面、シャドーロール、手綱、ウマの服、鞍、前脚のバンデージ、蹄もおまけ付きだ。
突然のウマの登場に、奇術師の子供も驚いた様子で目を見開いていた。
「……ウマが出て来るなんて驚いたな」
「コイツも小生たちの仲間だ。人数に加えてもいいだろう?」
「あ、ああ……人数にカウントしよう」
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
ドリーミング。〇覆面、〇シャドーロール、〇手綱、〇ウマの服、〇鞍、〇バンデージ、〇蹄
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着
9回戦開始と共に、奇術師の子供はカードを渡してきた。
小生の手札は、ハート3、スペード5、合わせて8。
ドリーミングの手札は、ダイア7、クラブ9、合わせて16。
レティシアの手札は、クラブK、ハート5。合わせて15。
ソフィアの手札は、ダイア6、スペードJ。合わせて16。
この状況だと、全員が1枚ずつ引く必要がある。
まず、小生が3枚目を引くと、クラブ4。合わせて12。
次にドリーミングの分は、ダイアK。合わせて26でバスト。さっそくウマの服を失った。
レティシアは、スペードの8を引きバスト。スカートを失う。
最後にソフィア。彼女はハート6を引きバスト。遂に彼女を守るモノも全てなくなってしまった。
「ここまでのようですね……皆さんのご武運を……お祈り……」
そう言いながらソフィアは、手札だけを残して消滅した。
ここで勝てなければ、一気に全滅に近づいてしまう。そう思いながら小生は自分の手札を睨んだ。
「更に1枚」
「はい」
カードを受け取ると、出てきたのはスペードの9。小生は少しだけ安堵しながら4枚のカードを奇術師の子供に見せた。
奇術師の子供も、ソックスを脱ぐとこちらを見た。
「では、10回戦……行こうか!」
「ああ!」
奇術師の子供はカードを切り直すと、こちらにカードを配った。
小生の手札は、クラブK、ハート9。合わせて19
ドリーミングの手札は、ダイア4、スペード6。合わせて10。
レティシアの手札は、スペード7、クラブ8。合わせて15。
1枚ずつもらうと、小生はハートのJでもちろんバスト。靴を失った。
ドリーミングは、クラブの3。合わせて13。
そしてレティシアは、ハートの10を引いてしまった。
「これで……私も最期……」
「いや待って! ゲームマスター」
「ん? なんだい?」
小生はダメ元でヘリクツを並べることにした。
「よく見て、レティシアの髪の毛が、ドリーミング号のタテガミに絡まっている。彼女はプレイヤーであると同時に、ドリーミング号の衣服だ。消滅は待って欲しい!」
さすがの奇術師の子供も、苦笑しながら小生やレティシアを眺めた。
「ま、まあいいだろう……ウマだけになったら、手札も握れないだろうしね」
奇術師は、嫌らしい笑みを浮かべたまま言う。
「服なら服らしく、お馬さんにしがみついてて」
そう言われたレティシアは、ドリーミング号の首を両手で抱きしめた。これで残った戦力は、小生とドリーミング号だけだ。ここからが……苦しくなりそうだ。
【パーティーリーダーのアレックス】
アレックスチームのリーダーだが、ワンマンではなく協調・調和タイプ。
実は祖父が異世界転移した勇者だが、勇者は好色家としても有名で、旅先で口説かれた村の少女がアレックスの祖母である。
ただ、アレックス自身には祖父のアビリティは、それほど引き継がれてはおらず、今の段階では一端の冒険者としてくすぶってしまっている状況だ。
アレックスから見て祖父は、尊敬できる勇者であるが、同時に異性にだらしなく、異母兄弟や親戚が何人いるかわからないという、一言では言い表せない特異な存在らしい。
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、〇セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
アレックス。×上着、×靴、×シャツ、〇ズボン、〇パンツ
ケヴィン。×上着、×靴、×シャツ、×ズボン、〇パンツ
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着
ジルー。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇ズボン、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着
7回戦は、誰もエースを引かなかったし、さらにソフィアが3枚目を受けたった際に22を超えるアクシデントにも見舞われた。更に4枚目を受け取ったところでアレックスとジルーも立て続けにバストし、パーティーも半壊する状況となったが、ここでケヴィンの手札に奇跡が起きた。
「よし、エース来た!!」
ケヴィンの幸運により、奇術師の子供もセーターを脱ぎ、どうにか負け試合を実質引き分けにすることができた。
しかし続く8回戦では、誰もいいカードを引かないという不運が襲ってきた。
これによって、アレックス、ケヴィン、さらにはジルーまでもが一気に脱落し、小生たちの目の前で3人もの仲間が一気に消滅することになった。
「ここまでか……」
アレックスが肩を落とすと、ジルーは小生を見た。
「後は……お願いねディディ」
その言葉を受けた小生は、あえてジルーの席に腰を下ろすことにした。隣に座っているレティシアも、姿勢を正して奇術師の子供を睨んだ。
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着
まだ小生を含めて3人残っているとも言えるが、脱衣ブラックジャックのルールを考えると、凄く不利な状況に追い込まれたと言える。このゲームはプレイヤーの頭数が減れば減るほど出題者が有利になるからだ。
「…………」
このままじゃ負け確定だ。何か方法は無いか。頭数を1人でも増やすアイディアは……
考えを巡らせていると、小生の能力はユニコーンケンタウロスだということを思い出した。完全にウマやヒトになるだけでなく、身体の一部でもウマに出来ないだろうか。
今は座っているのだから、例えば足などは要らないはず。
――アビリティオン! ユニコーンケンタウロス!!
心の中で力いっぱいに念じると、小生は両足を一時的に消滅させる代わりに、自分の背中にウマの頭や前脚を出すことに成功した。それだけでなく、覆面、シャドーロール、手綱、ウマの服、鞍、前脚のバンデージ、蹄もおまけ付きだ。
突然のウマの登場に、奇術師の子供も驚いた様子で目を見開いていた。
「……ウマが出て来るなんて驚いたな」
「コイツも小生たちの仲間だ。人数に加えてもいいだろう?」
「あ、ああ……人数にカウントしよう」
奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
ディディ。〇全身服、〇靴
ドリーミング。〇覆面、〇シャドーロール、〇手綱、〇ウマの服、〇鞍、〇バンデージ、〇蹄
レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着
9回戦開始と共に、奇術師の子供はカードを渡してきた。
小生の手札は、ハート3、スペード5、合わせて8。
ドリーミングの手札は、ダイア7、クラブ9、合わせて16。
レティシアの手札は、クラブK、ハート5。合わせて15。
ソフィアの手札は、ダイア6、スペードJ。合わせて16。
この状況だと、全員が1枚ずつ引く必要がある。
まず、小生が3枚目を引くと、クラブ4。合わせて12。
次にドリーミングの分は、ダイアK。合わせて26でバスト。さっそくウマの服を失った。
レティシアは、スペードの8を引きバスト。スカートを失う。
最後にソフィア。彼女はハート6を引きバスト。遂に彼女を守るモノも全てなくなってしまった。
「ここまでのようですね……皆さんのご武運を……お祈り……」
そう言いながらソフィアは、手札だけを残して消滅した。
ここで勝てなければ、一気に全滅に近づいてしまう。そう思いながら小生は自分の手札を睨んだ。
「更に1枚」
「はい」
カードを受け取ると、出てきたのはスペードの9。小生は少しだけ安堵しながら4枚のカードを奇術師の子供に見せた。
奇術師の子供も、ソックスを脱ぐとこちらを見た。
「では、10回戦……行こうか!」
「ああ!」
奇術師の子供はカードを切り直すと、こちらにカードを配った。
小生の手札は、クラブK、ハート9。合わせて19
ドリーミングの手札は、ダイア4、スペード6。合わせて10。
レティシアの手札は、スペード7、クラブ8。合わせて15。
1枚ずつもらうと、小生はハートのJでもちろんバスト。靴を失った。
ドリーミングは、クラブの3。合わせて13。
そしてレティシアは、ハートの10を引いてしまった。
「これで……私も最期……」
「いや待って! ゲームマスター」
「ん? なんだい?」
小生はダメ元でヘリクツを並べることにした。
「よく見て、レティシアの髪の毛が、ドリーミング号のタテガミに絡まっている。彼女はプレイヤーであると同時に、ドリーミング号の衣服だ。消滅は待って欲しい!」
さすがの奇術師の子供も、苦笑しながら小生やレティシアを眺めた。
「ま、まあいいだろう……ウマだけになったら、手札も握れないだろうしね」
奇術師は、嫌らしい笑みを浮かべたまま言う。
「服なら服らしく、お馬さんにしがみついてて」
そう言われたレティシアは、ドリーミング号の首を両手で抱きしめた。これで残った戦力は、小生とドリーミング号だけだ。ここからが……苦しくなりそうだ。
【パーティーリーダーのアレックス】
アレックスチームのリーダーだが、ワンマンではなく協調・調和タイプ。
実は祖父が異世界転移した勇者だが、勇者は好色家としても有名で、旅先で口説かれた村の少女がアレックスの祖母である。
ただ、アレックス自身には祖父のアビリティは、それほど引き継がれてはおらず、今の段階では一端の冒険者としてくすぶってしまっている状況だ。
アレックスから見て祖父は、尊敬できる勇者であるが、同時に異性にだらしなく、異母兄弟や親戚が何人いるかわからないという、一言では言い表せない特異な存在らしい。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる