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 連れてこられた場所が座敷牢と呼ばれる場所だと気付いたのは、数度の失神を繰り返した後だった。
 天井付近にある明かり取りの小窓とはめ殺しの木格子。これらに気付いたのも、つい最近のことだった。
 時代錯誤もいいところだと思いかけて、それは自分の方だったと思い出した。
 忘れた頃に思い出させてくる現代の名残は多少の暇つぶしにはなるけれど、その後に残るのは空虚感だけ。
 最早ここに閉じ込められているのか閉じこもっているのか、どちらとも言い難いのが現状だ。

 目を覚まして、彰久がいれば抱き潰され。いなくとも疲れ切った体で動くことはできず、昏々と眠り続ける。
 彰久も座敷牢に籠るようになったから、前者がほとんどだ。
 昼とも夜ともわからなくなるのに、時間はかからなかった。
 ただ、定期的に女中が出入りしているらしいことはわかった。姿を見たことはないが、起きた時には膳が用意されているし、体も清められている。
 それに、毎日一輪、花が贈られてくるのだ。
 まさか彰久が自分如きにそこまで手を尽くすとは思えない。

 あってないような単衣を適当に羽織り、幸菜は隠れるように布団の中で丸くなった。
 幾度となく貪られている体は、彰久がいない時でさえ痺れているような気がする。
 怖かった。こんなはずじゃなかった。どうしてこんなことに、と栓無い疑問が浮かんでは消える。
 それと同時に浮かぶのは、ずるいと思う悲しみだった。
 幸菜を翻弄して、困らせて。だけれど対等ではないから、幸菜にはそんなことをさせてくれない。
 溜息を吐くと、ぐらりとにわかに視界が揺らいだ。疲れが溜まっているのだろうか、ここしばらく目眩が頻発していた。
 それを正直に訴えれば、もしかしたら休ませて貰えるかもしれないと甘い誘惑もあるが、何だか口に出すのが恥ずかしくて言い出せなかった。
 せめて、これ以上悪くならないように気をつけたい。
 もう一度溜息を吐くと、今度は目眩はしなかった。

 また、彼は来るのだろうか。起きている時、一度は考えてしまう。
 どうしてか、彰久からの執着が度を超しているように思えてならない。それは座敷牢に入れられてからというもの、より顕著になった。

 囚われたばかりの頃、「遼展様は?」と尋ねたことがある。客人として滞在していた彼の前での不始末だ、気を損ねていないかとそれだけを案じていた。
 だというのに、彰久は彼の名前が出た途端目を吊り上げて、幸菜を叩きつけるように組み伏せたのだ。
 亜希に対しては幾分かましだったが、それでも誰かの名前を口に出すと目に見えて不機嫌になるため、外の情報が全く入ってこない。
 それほどまでに執着する理由が幸菜には全くわからなかった。
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