我儘に生きる妹が許される世界

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母親視点

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私には、越えられない壁がいつもそばにいた。
仲が悪い訳ではなく、甘えたりもした。

私の姉だ。
歳が近いからいつも一緒。
ただ、一つ歳が違うだけで、色んなことが私よりも優れていた。

それが…とても嫌だった。

「狡い」と何度も思ったけれども、勝つことは容易ではなく、そのうち…態度にもその気持ちが現れていたらしい。

姉との会話は、日々減って行った。

離れれば離れるほど、姉が羨ましくなっていた。
だから、姉のものを欲しがった。
母はそんな私を可愛がってくれ、姉のものを与えてくれた。
つまり、私が奪ったわけではない。
あくまでも母の独断だ。
こうして、母は父に咎められても、私を甘やかした。
その分、姉は父から信頼されていた。
それがたまらなく悔しかった。

いつか…見返したい。

そう思っていた矢先。

姉の婚約者が公爵家の身分の人に決まった。

悔しくてたまらなかった。
公爵家の身分よりも上と言ったら、王太子ぐらいしかいない。
でも、同じ年代に王太子はいない。

母に相談したら、翌日から姉の婚約者を紹介された。
姉と婚約者とのお茶会の場に…何度も連れて行かれることになる。

つまり…姉から奪えと言っているのだ。


公爵様もそのうち、姉よりも私と話をするようになる。

「妻にするなら少しバカなくらいがちょうどいい」公爵様がそう言って、私は姉の婚約者を奪うことに成功した。

優秀なだけでは男の人には好かれないのだ。

いい気味!

姉に対して…「勝った」と喜んだ。



そして、数日後…姉は亡くなった。

病死とされているが…
家の後を継いだ弟から「何であんたが生きてるの?」と、他人のように見られた。

母は「気にしないで幸せになりなさい」と何度も言って、後日…父から家を出されていた。
領地の別荘で暮らしたらしい。


家族から疎遠となり、公爵家の婦人として楽しく過ごしていた私の元に…1人の長男と2人の娘が生まれた。

長男はしっかり物で、公爵様にそっくりに育った。
末の娘は、私そっくり。
真ん中の長女は…

姉に似ていた。



「きっと姉の生まれ変わりなのね…私に復讐しに来たんだわ」

コッチを見て、様子を伺う感じは、姉に似ていて不気味だった。

いつの間にかマナーも完璧で、家庭教師が「婦人を見て育ったのですね?完璧で言うことないですわ」と言った。
でも、私よりもそのマナーは飛び抜けて素晴らしかった。
何処で学んだのかわからない。
実の子なのに…この子だけ畏怖なものに見えた。

だから、妹を贔屓して、姉を差別をした。
長男はその行為を知って、私から離れて行った。
公爵様には、私から報告をしている。
家内の使用人たちは私の味方だ。
みんな、結局は不気味に思っていたのだ。
子供に見えない娘だったから。
しかし、古株の執事は違った。

「イボンヌお嬢様は公爵様の子どもの頃にそっくりですなぁ。手がかからず、聡明なところは特に!」
そんなことを話す。

「女は少しぐらいバカな方がいい」公爵様がそう言って返した。

私はホッとした。
公爵様が私を選んだのだ。
執事が何を言おうが、私の意見が通る。



社交会も一緒にデビューさせ、婚約者を変えた。
イボンヌが追い出した兵士を助けて、領地に送った。
その兵士が後々私の財産を盗むことになる。
そのことを知らずにイボンヌだけを責め立てた。


そして、イボンヌは家を出ると言った。

イボンヌは学園を卒業すると世界に瞬く女商人としてかなりの財を成し、沢山の孤児を養子に迎えて商会を作り、後々の世の中・世界になくてはならない商会を作った。




イボンヌが居なくなると…長男は私を領地の別荘に押し込めた。
そこは、ど田舎。
楽しむところもない。
使用人は私を味方してくれていた本宅の気の知れたみんなだったが、そのうち雇えなくなって…出て行った。
私の財産を盗んだ兵士は、その後…すぐに公爵様に捕まり、処刑された。
財産は戻って来なかった。
公爵様が「兵を出させた費用として預かる」と言った。
何が起きたのかわからない。
とにかく、世話をしてくれる人が居なくなって、私はひっそりとこの世から去ることになる。

「私は幸せだったの?」

疑問だらけだ。
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