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薬師の神の信仰の種
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大会が終わると、自ずと祭りも終わり始めました。
獣人は、お祭り好きらしいので、来年に向けて、動いていくらしいです。
経済も祭りの効果で上がり、病魔の影響もなくなりました。
「また来年来るわよね?」
「やっぱりそうなりますか?」
「当たり前でしょ?」
ミュートさんが言うことには逆らえないなぁ。
俺は、そう思いながらも、冒険ギルドからの依頼を見る。
「…エルフ国に王子を無事に送る…か?王子強いし、1人でも大丈夫じゃない?」
「…流石の私も、一人旅では油断も出てきます。出来ればご一緒してください」
いつになく低姿勢な王子。
「フェルミナル王子様。何が目的ですか?正直に、この指名依頼の裏を話してください」
俺が強く睨みつけると、王子様は狼狽えながら、裏事情を答えた。
「獣王に薬草に詳しいとお聞きしました。薬草といえば我が国の者は黙っていられません。新たな技術ならば…なおのこと…どうかご教授願えませんか?」
教えるのは構わない…ただし、信仰に繋がるのならば…である。
「…タダとは言えません。此方も、それなりに協力出来ることがあれば、幾らでも使ってくれて構わないのですよ?交換条件とは虫のいい話ですが…国に着くまでに、何か考えておいてください」
いい案が思いつかない。
だって、エルフは危機に瀕しているわけでも無い。
俺に恩義がある訳でもない。
只の知識の提供を求めているだけなのだ。
強い信仰の対象には成り得ない。
「…今はまだ、指名依頼をまっとうすることに集中します。薬のことは考えさせてください」
「…それで構いません。道中よろしくお願いします」
実は、一瞬で移動できるのですが、普通に馬車移動である。
だから、採取などのイベントはない。
かなり急ぎで馬車を移動させているので、盗賊やその他の障害イベントも起きずに済んでいる。
「ミュート殿は、本当にハイエルフではないのですね?」
「ええそうよ。ただ、女性のエルフに変わっただけよ?ステータスはかなり上がったけれど…元々戦闘職ではないから、ハイエルフには、成りきれなかったのでしょう」
精霊視で強かっただけだと、ミュートさんが説明する。
国を出てからは、雑貨屋の亭主だったのだから、間違ってはないだろう…か?
初心者の時の俺にとっては、最強の戦闘職に見えましたが?
俺は、疑問に思ったことを隠しながら、エルフ国に着いた後のことを考える。
どうしたら、薬師の神の信仰を集められるのか?
エルフ国に信仰が根付けば、此方としても嬉しい。
でも、良い方法が思いつかない。
知識を本にしてみようか?
本は、蔵書されても、俺の名前が残るようにしてもらえれば…いや…信仰ではなく、俺の名前が有名になるだけか?
「エルフの国に崇めている存在…信仰はありますか?神とか?世界樹とか?精霊とか?」
唐突な質問にミュートさんが答えてくれた。
「そうね。精霊の力を借りている種族なので、精霊を崇めているのは確かね。信仰は世界樹にと言った方が良いわね。世界樹は精霊の母と呼ばれているのよ。祭りや儀式的行事は全て、世界樹に祈っているわね」
世界樹の行事が沢山残っているらしいです。
俺の入る隙間はなさそうだ。
普通に薬草の知識や薬の知識を本にまとめて、王家に献上することにしようと思う。
それが一番無難そうだ。
わかる人には、わかるはずだ。
薬師の知識が…神からもたらされていることをだ。
「徐々に信仰を増やせればいいかなぁ」
俺は分厚い本を用意した。
エルフの王に献上するつもりだ。
見返りは…国中のエルフに広めること…その一点に絞る。
ここまで悩んでみたが…それが一番良さそうだ。
無事にエルフの国に王子を送り届けた。
只今、謁見の間にいる。
「よくぞ起こしいただけた!」
気さくな美形のイケメンに声をかけられた。
この人が、現国王でハイエルフのチュラレフ国王様らしい。
見かけは、二十代の後半。
少し貫禄が出てきそうなところ…でも、若い。
エルフの王と言えば、女王をイメージしていたので、男の王は、それだけで意外でした。
一通り報告と挨拶をする。
大会での王子の行いの謝罪を受けて…薬師の話になった。
俺は、さりげなく分厚い本を渡す。
「この国の薬師の発展に役に立てたら光栄です」
「この知識を無償で広めて良いと言うのか?」
「それこそが、俺の望みなので…他に希望はありません」
王は喜び、俺を気さくに呼んで、友になることを約束された。
「ハイエルフになると、みんな遠巻きになってしまうので、友が欲しかったのだよ」
ナチュラルに笑う王に、内心ビックリしています。
イケメン!爆発しろ!…なんて、昔だったら思ったかもしれない。
こうして、薬師の神の信仰の種をまきました。
どうなるか?楽しみです。
獣人は、お祭り好きらしいので、来年に向けて、動いていくらしいです。
経済も祭りの効果で上がり、病魔の影響もなくなりました。
「また来年来るわよね?」
「やっぱりそうなりますか?」
「当たり前でしょ?」
ミュートさんが言うことには逆らえないなぁ。
俺は、そう思いながらも、冒険ギルドからの依頼を見る。
「…エルフ国に王子を無事に送る…か?王子強いし、1人でも大丈夫じゃない?」
「…流石の私も、一人旅では油断も出てきます。出来ればご一緒してください」
いつになく低姿勢な王子。
「フェルミナル王子様。何が目的ですか?正直に、この指名依頼の裏を話してください」
俺が強く睨みつけると、王子様は狼狽えながら、裏事情を答えた。
「獣王に薬草に詳しいとお聞きしました。薬草といえば我が国の者は黙っていられません。新たな技術ならば…なおのこと…どうかご教授願えませんか?」
教えるのは構わない…ただし、信仰に繋がるのならば…である。
「…タダとは言えません。此方も、それなりに協力出来ることがあれば、幾らでも使ってくれて構わないのですよ?交換条件とは虫のいい話ですが…国に着くまでに、何か考えておいてください」
いい案が思いつかない。
だって、エルフは危機に瀕しているわけでも無い。
俺に恩義がある訳でもない。
只の知識の提供を求めているだけなのだ。
強い信仰の対象には成り得ない。
「…今はまだ、指名依頼をまっとうすることに集中します。薬のことは考えさせてください」
「…それで構いません。道中よろしくお願いします」
実は、一瞬で移動できるのですが、普通に馬車移動である。
だから、採取などのイベントはない。
かなり急ぎで馬車を移動させているので、盗賊やその他の障害イベントも起きずに済んでいる。
「ミュート殿は、本当にハイエルフではないのですね?」
「ええそうよ。ただ、女性のエルフに変わっただけよ?ステータスはかなり上がったけれど…元々戦闘職ではないから、ハイエルフには、成りきれなかったのでしょう」
精霊視で強かっただけだと、ミュートさんが説明する。
国を出てからは、雑貨屋の亭主だったのだから、間違ってはないだろう…か?
初心者の時の俺にとっては、最強の戦闘職に見えましたが?
俺は、疑問に思ったことを隠しながら、エルフ国に着いた後のことを考える。
どうしたら、薬師の神の信仰を集められるのか?
エルフ国に信仰が根付けば、此方としても嬉しい。
でも、良い方法が思いつかない。
知識を本にしてみようか?
本は、蔵書されても、俺の名前が残るようにしてもらえれば…いや…信仰ではなく、俺の名前が有名になるだけか?
「エルフの国に崇めている存在…信仰はありますか?神とか?世界樹とか?精霊とか?」
唐突な質問にミュートさんが答えてくれた。
「そうね。精霊の力を借りている種族なので、精霊を崇めているのは確かね。信仰は世界樹にと言った方が良いわね。世界樹は精霊の母と呼ばれているのよ。祭りや儀式的行事は全て、世界樹に祈っているわね」
世界樹の行事が沢山残っているらしいです。
俺の入る隙間はなさそうだ。
普通に薬草の知識や薬の知識を本にまとめて、王家に献上することにしようと思う。
それが一番無難そうだ。
わかる人には、わかるはずだ。
薬師の知識が…神からもたらされていることをだ。
「徐々に信仰を増やせればいいかなぁ」
俺は分厚い本を用意した。
エルフの王に献上するつもりだ。
見返りは…国中のエルフに広めること…その一点に絞る。
ここまで悩んでみたが…それが一番良さそうだ。
無事にエルフの国に王子を送り届けた。
只今、謁見の間にいる。
「よくぞ起こしいただけた!」
気さくな美形のイケメンに声をかけられた。
この人が、現国王でハイエルフのチュラレフ国王様らしい。
見かけは、二十代の後半。
少し貫禄が出てきそうなところ…でも、若い。
エルフの王と言えば、女王をイメージしていたので、男の王は、それだけで意外でした。
一通り報告と挨拶をする。
大会での王子の行いの謝罪を受けて…薬師の話になった。
俺は、さりげなく分厚い本を渡す。
「この国の薬師の発展に役に立てたら光栄です」
「この知識を無償で広めて良いと言うのか?」
「それこそが、俺の望みなので…他に希望はありません」
王は喜び、俺を気さくに呼んで、友になることを約束された。
「ハイエルフになると、みんな遠巻きになってしまうので、友が欲しかったのだよ」
ナチュラルに笑う王に、内心ビックリしています。
イケメン!爆発しろ!…なんて、昔だったら思ったかもしれない。
こうして、薬師の神の信仰の種をまきました。
どうなるか?楽しみです。
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