11 / 46
10話
しおりを挟む昨日のお別れ会が終わり、俺の出発の日。
みんな涙を浮かべて見送ってくれる。
「今までありがとうございました」
「ジン、お前は落ち着いてればなんでもやれる。あっちで有名になって名前…聞かせてくれよな」
「はい、また…ここに帰ってきます」
俺は馬車に乗る。
この馬車はダーングラウトに商売しに行くキャラバンで、いい人達の集まりで俺たちを見て涙をぐんでいた。
「ジンさん、今日から一週間よろしくお願いします」
帝国を出て数分するとキャラバンの団長のハンスさんが話しかけてくれた。
「あ、はい。急な話をのんでいただいてありがとうございます」
「いえいえ、騎士団長のアルス様の養子となればこちらも無下にはできません。お噂も聞いていますし、ジンさんのような方に護衛を頼めるのはありがたいです」
「ありがとうございます。全身全霊、頑張ります」
ここのキャラバンの人は俺の傷跡を見ても気味悪がったりしない人達のだから、俺も頑張らないと。
「てめーがジンだな。俺はこのキャラバンの戦闘隊のリーダーのウタクリスだ」
ハンスさんとの話が終わると、ゴツい大男が俺に話しかけてきた。
「はい、よろしくお願いします」
「おう、ただそんなかしこまらなくていい。俺は堅っ苦しいのが嫌いなんだ」
こういう人はやっぱり見た目で判断しちゃいけないんだなって思ったよ。
笑った顔が優しそうな人だ。
「分かった、ウタクリスさん。今日からよろしく」
「よし、お前の担当は真ん中の馬車だ。俺ら戦闘隊が前と後ろを担当する。索敵は俺たちでやるからお前はお前の担当で好きに暴れていい。終わり次第、前か後ろの援護に回ってくれ。俺は前にいるから何かあったら報告しろよな」
ウタクリスさんはそう言うと馬車から飛び降りて前の馬車に向かって走っていく。見た目と反して動ける人らしい。
馬車の中で手持ち無沙汰になったから武器の手入れをする。
俺の得物は少し大きい片刃のナイフで、刃背に溝が浅い鋸刃があるナイフと投げナイフ。
手入れをしていて数十分経ち魔物と遭遇した。
「ロックバードだ!こいつの肉はうめーからな!今日のメシは豪華だせ!」
前方からウタクリスさんの叫び声が聞こえる。
「エンチャント:攻3重、防2重、速3重。術式展開、発動」
3つの魔法陣が腕、体、足に広がり吸い込まれる。
久しぶりの付与魔法だからゆっくりと術式を展開する。
「肩慣らしだ…ちょっとは持ってくれよ?」
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
【完結】ハッピーエンドのその後は・・・?
夜船 紡
恋愛
婚約者のいるアイザックに惹かれ、秘密の愛を育んでいたクリスティーヌ。
ある日、アイザックはクリスティーヌと生きることを決意し、婚約者であるイザベラに婚約破棄を叩きつけた。
障害がなくなった2人は結婚し、ハッピーエンド。
これは、ハッピーエンドの後の10年後の話。
物語の終わりが本当に幸せなのだという保証は、どこにもない。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる