魔眼の復讐者

山﨑キョウ

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10話

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昨日のお別れ会が終わり、俺の出発の日。
みんな涙を浮かべて見送ってくれる。

「今までありがとうございました」

「ジン、お前は落ち着いてればなんでもやれる。あっちで有名になって名前…聞かせてくれよな」

「はい、また…ここに帰ってきます」

俺は馬車に乗る。
この馬車はダーングラウトに商売しに行くキャラバンで、いい人達の集まりで俺たちを見て涙をぐんでいた。

「ジンさん、今日から一週間よろしくお願いします」

帝国を出て数分するとキャラバンの団長のハンスさんが話しかけてくれた。

「あ、はい。急な話をのんでいただいてありがとうございます」

「いえいえ、騎士団長のアルス様の養子となればこちらも無下にはできません。お噂も聞いていますし、ジンさんのような方に護衛を頼めるのはありがたいです」

「ありがとうございます。全身全霊、頑張ります」

ここのキャラバンの人は俺の傷跡を見ても気味悪がったりしない人達のだから、俺も頑張らないと。



「てめーがジンだな。俺はこのキャラバンの戦闘隊のリーダーのウタクリスだ」

ハンスさんとの話が終わると、ゴツい大男が俺に話しかけてきた。

「はい、よろしくお願いします」

「おう、ただそんなかしこまらなくていい。俺は堅っ苦しいのが嫌いなんだ」

こういう人はやっぱり見た目で判断しちゃいけないんだなって思ったよ。
笑った顔が優しそうな人だ。

「分かった、ウタクリスさん。今日からよろしく」

「よし、お前の担当は真ん中の馬車だ。俺ら戦闘隊が前と後ろを担当する。索敵は俺たちでやるからお前はお前の担当で好きに暴れていい。終わり次第、前か後ろの援護に回ってくれ。俺は前にいるから何かあったら報告しろよな」

ウタクリスさんはそう言うと馬車から飛び降りて前の馬車に向かって走っていく。見た目と反して動ける人らしい。

馬車の中で手持ち無沙汰になったから武器の手入れをする。

俺の得物は少し大きい片刃のナイフで、刃背に溝が浅い鋸刃セレーションがあるナイフと投げナイフ。

手入れをしていて数十分経ち魔物と遭遇した。

「ロックバードだ!こいつの肉はうめーからな!今日のメシは豪華だせ!」

前方からウタクリスさんの叫び声が聞こえる。

「エンチャント:アタック3重、ガード2重、スピード3重。術式展開、発動」

3つの魔法陣が腕、体、足に広がり吸い込まれる。
久しぶりの付与魔法だからゆっくりと術式を展開する。

「肩慣らしだ…ちょっとは持ってくれよ?」

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