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第1章 転生

閑話・大人たちの話

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レオがアイスを作ったその日の夜、大人たちは再び食堂に集まっていた。

「…………」

アレンが無言で、レオの作ったアイスクリームに手をかざしている。それを、レオナ、マリア、グレイ、アドラスが見守っていた。
やがてアレンが手を離し、閉じていた目を開けた。

「間違いありませんでした」
「ああ、やはりな」

料理長アドラスが頷く。

「レオ坊ちゃんの手際は普通ではない。熟練の料理人のそれだ。ましてや今は3歳児。他の道具の扱いは、他の子供と変わらないと聞くから、余計にその異質さが目立つ」

そして、黙り込んでいたレオナが静かに言った。

「…レオは本当に神の加護を授かっているのね」

レオンが神妙に頷いた。

「ええ、あのアイスという料理には神の力が宿っていました。私がが今【鑑定】スキルで読み取れたのは、『幸運が訪れる』というような内容でしかありませんでしたが、おそらく、幸運の上昇で間違いないでしょう。どれほどの効果かは分かりませんが」
「それは経験からですか?」

執事のグレイが静かに問いかけた。
アレンは、一瞬苦い顔をしたもののすぐに表情を元に戻し、頷いた。

「…神の加護を得たものは、強大な力を手に入れます。それこそ、世界を変えてしまえるくらいの力を。レオ様の能力は今の所、料理に働くようです。直接的に破壊に結びつくような力ではないのが幸いですね」
「あなたがいうのだから間違いないわね。勇者アランフィアード」
「……もう、神の力は返還しました。それは捨てた名ですよ」
「…そうね、ごめんなさい。でも、レオにはあなたの力が必要だわ」

レオナが懇願するようにアレンを見つめる。アレンは顔をそらしながら小さく呟いた。

「あなたはずるい…」

「何か言った?」
「いえ、協力いたします。レオ様の加護はうまく使えば多くの人に恵みを与えるでしょう。ですが同時に、多くの人の欲を刺激する。我々は彼をそういった害意から守らねばなりません」
「そうね。あの子は絶対に私たちで守るわ」

レオナが宣言し、大人たちは皆頷いた。


レオの知らないところで、少しずつ運命は動き始めていた。
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