8 / 42
第1章 転生
閑話・大人たちの話
しおりを挟むレオがアイスを作ったその日の夜、大人たちは再び食堂に集まっていた。
「…………」
アレンが無言で、レオの作ったアイスクリームに手をかざしている。それを、レオナ、マリア、グレイ、アドラスが見守っていた。
やがてアレンが手を離し、閉じていた目を開けた。
「間違いありませんでした」
「ああ、やはりな」
料理長アドラスが頷く。
「レオ坊ちゃんの手際は普通ではない。熟練の料理人のそれだ。ましてや今は3歳児。他の道具の扱いは、他の子供と変わらないと聞くから、余計にその異質さが目立つ」
そして、黙り込んでいたレオナが静かに言った。
「…レオは本当に神の加護を授かっているのね」
レオンが神妙に頷いた。
「ええ、あのアイスという料理には神の力が宿っていました。私がが今【鑑定】スキルで読み取れたのは、『幸運が訪れる』というような内容でしかありませんでしたが、おそらく、幸運の上昇で間違いないでしょう。どれほどの効果かは分かりませんが」
「それは経験からですか?」
執事のグレイが静かに問いかけた。
アレンは、一瞬苦い顔をしたもののすぐに表情を元に戻し、頷いた。
「…神の加護を得たものは、強大な力を手に入れます。それこそ、世界を変えてしまえるくらいの力を。レオ様の能力は今の所、料理に働くようです。直接的に破壊に結びつくような力ではないのが幸いですね」
「あなたがいうのだから間違いないわね。勇者アランフィアード」
「……もう、神の力は返還しました。それは捨てた名ですよ」
「…そうね、ごめんなさい。でも、レオにはあなたの力が必要だわ」
レオナが懇願するようにアレンを見つめる。アレンは顔をそらしながら小さく呟いた。
「あなたはずるい…」
「何か言った?」
「いえ、協力いたします。レオ様の加護はうまく使えば多くの人に恵みを与えるでしょう。ですが同時に、多くの人の欲を刺激する。我々は彼をそういった害意から守らねばなりません」
「そうね。あの子は絶対に私たちで守るわ」
レオナが宣言し、大人たちは皆頷いた。
レオの知らないところで、少しずつ運命は動き始めていた。
0
お気に入りに追加
1,302
あなたにおすすめの小説
二度目の世界で今度こそ俺は
開拓
ファンタジー
突如事故でアニメ制作会社に勤める25歳の男が悲惨な死を迎えた。
目が覚めると真っ白な空間に美しいの女性。
その女性は自分を女神だといい、ささやかな祝福とささやかな願いを叶え、
次の世界に送り出すと言う。
天然な女神のやらかしによって、
前世の記憶を持ち、強い力を持って転生した男は、
夢にまで見たアニメのような異世界を前に、
生きたいように生きてやると決意した。
ドジな女神に不死にされました ~今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった~
無職の狸
ファンタジー
俺はジュンヤ、前世は……碌でもない人生を送った糞ニートだ。
女神からも碌でもない事して下らない人生を送った俺には、チートなんかやるわけがない、と罵られた。
それを反省し、今世では平凡でもいいから真面目に暮らし、親を労り、のんびりとしたスローライフを、なんて思ってた。
なのにまた死んだ。しかも女神のミスで。
解放の砦
さいはて旅行社
ファンタジー
その世界は人知れず、緩慢に滅びの道を進んでいた。
そこは剣と魔法のファンタジー世界。
転生して、リアムがものごころがついて喜んだのも、つかの間。
残念ながら、派手な攻撃魔法を使えるわけではなかった。
その上、待っていたのは貧しい男爵家の三男として生まれ、しかも魔物討伐に、事務作業、家事に、弟の世話と、忙しく地味に辛い日々。
けれど、この世界にはリアムに愛情を注いでくれる母親がいた。
それだけでリアムは幸せだった。
前世では家族にも仕事にも恵まれなかったから。
リアムは冒険者である最愛の母親を支えるために手伝いを頑張っていた。
だが、リアムが八歳のある日、母親が魔物に殺されてしまう。
母が亡くなってからも、クズ親父と二人のクソ兄貴たちとは冷えた家族関係のまま、リアムの冒険者生活は続いていく。
いつか和解をすることになるのか、はたまた。
B級冒険者の母親がやっていた砦の管理者を継いで、書類作成確認等の事務処理作業に精を出す。砦の守護獣である気分屋のクロとツンツンなシロ様にかまわれながら、A級、B級冒険者のスーパーアスリート超の身体能力を持っている脳筋たちに囲まれる。
平穏無事を祈りながらも、砦ではなぜか事件が起こり、騒がしい日々が続く。
前世で死んだ後に、
「キミは世界から排除されて可哀想だったから、次の人生ではオマケをあげよう」
そんな神様の言葉を、ほんの少しは楽しみにしていたのに。。。
オマケって何だったんだーーーっ、と神に問いたくなる境遇がリアムにはさらに待っていた。
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―
北京犬(英)
ファンタジー
第一章改稿版に差し替中。
暫く繋がりがおかしくなりますが、ご容赦ください。(2020.10.31)
第四章完結。第五章に入りました。
追加タグ:愛犬がチート、モフモフ、農業、奴隷、少しコメディ寄り、時々シリアス、ほのぼの
愛犬のチワワと共に異世界転生した佐々木蔵人(ささき くらんど)が、愛犬プチのユニークスキル”ここ掘れわんわん”に助けられて異世界でスローライフを満喫しようとします。
しかし転生して降り立った場所は魔物が蔓延る秘境の森。
蔵人の基本レベルは1で、持っているスキルも初期スキルのLv.1のみ。
ある日、プチの”ここ掘れわんわん”によりチート能力を得てしまいます。
しかし蔵人は自身のイメージ力の問題でチート能力を使いこなせません。
思い付きで農場をチート改造して生活に困らなくなり、奴隷を買い、なぜか全員が嫁になってハーレム生活を開始。
そして塒(ねぐら)として確保した遺跡が……。大きな陰謀に巻き込まれてしまいます。
前途多難な異世界生活を愛犬や嫁達と共に生き延びて、望みのスローライフを送れるのだろうかという物語です。
基本、生産チートでほのぼの生活が主体――のはずだったのですが、陸上戦艦の艦隊戦や戦争描写が増えています。
小説家になろう、カクヨムでも公開しています。改稿版はカクヨム最新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる