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第1章
夢と僕と俺
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母さんゆずりの無鉄砲な自分。
自分の凡才さに嘆く自分。
優しさ故に、損ばかりする自分。
灰崎 天青 という名前を持つ自分。
いつも俺はここにいる。
「僕は× × × の笑っている顔が好きなんだよ」
「だから、そんなに泣かないでおくれよ× × × ..」
綺麗な白い髪の少女が俺の腕の中で静かに泣いている。
頬を夕焼けのような赤くして、空のようにどんなに理不尽な事も吸い込んでしまいそうな彼女の眼が涙を流している。
「だって......だって.....」
少女はそう声を震わして言い放った。
「どこかケガをしたのかい?」
「僕が直ぐに治してあげるよ」
「.....って」
「あれ...? おかしいな.. ハハ」
乾いた笑いを俺はする。
流石の俺もこの乾いた笑いは聞き飽きた。
自分でもよく分からないが虫唾が走るような気持ちになる。
「魔力切れ...なのかな..魔法がでないや...」
「× × × × × × × × ×!!!」
少女が声を荒らげている。まるで鬼の形相のようだ。
だがいつも通り何と言ったのかは聞き取れない。
普段はここで夢から現実に舞い戻る。
「僕は諦めない...何としても× × × だけでも...」
「もう辞めてよ...!」
「それ以上はもう体が...」
少女は俺に向かって吐き捨てるように言った。
「大丈夫だ...ここで゛僕 ゛が死のうとも....」
俺は声を絞り出す。
「お願い!!!!辞めて!!!!」
「君を守る為に僕は存在するんだ」
「ありがとう。」
少女が泣き叫ぶのを遮るように言った。
「もっと.......一緒に......!!!」
これが少女の最後の言葉らしい。
「タイムコール 時間逆行 」
そう゛僕 ゛が言い放つと゛俺 ゛の視界は暖かな白に吸い込まれた。
ぼやける白の奥に、僕がみえる。
その時、初めて俺は僕の姿を朧気ながらみた。
あの少女と同じ白い髪だ。だが、あの少女と比べると色が少し違うのだろう。
朧気な為、顔や、細かな風貌はみえない。
「俺は弱いみたいだね。」
僕はそう言った。
「...」
言い返そうとしたが、俺は何も喋れないらしい。
「次は君の番だ。」
「大丈夫。君は僕で、僕は君なんだ。」
俺はこの時、全てを理解した。
彼の過ごした一生が、体験が、記憶が俺の中に流れてきた。
この疲れきって、まるで萎れた花の様な暗い顔をしているのは未来の俺だ。
そして、僕が...いや、俺が守りたかったあの少女はルシアだ。
だが名前しか思い出せない。
僕はニヤリと微笑んでこう言った。
「僕の全てを君に渡す。」
「ただ記憶や力に関しては少しずつ思い出すはずさ」
「僕の人生は濃密だからね。一度に流そうとでもするものなら君は脳死にでもなるだろうね。」
俺は背筋に悪寒が走った。
「今度こそ、守ってくれよ。」
彼はそう言い俺の中に消えていった。
なんだか、果てしなく長い時を過ごした気がする。
まるでこれから俺の全てが始まる様な。
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自分の凡才さに嘆く自分。
優しさ故に、損ばかりする自分。
灰崎 天青 という名前を持つ自分。
いつも俺はここにいる。
「僕は× × × の笑っている顔が好きなんだよ」
「だから、そんなに泣かないでおくれよ× × × ..」
綺麗な白い髪の少女が俺の腕の中で静かに泣いている。
頬を夕焼けのような赤くして、空のようにどんなに理不尽な事も吸い込んでしまいそうな彼女の眼が涙を流している。
「だって......だって.....」
少女はそう声を震わして言い放った。
「どこかケガをしたのかい?」
「僕が直ぐに治してあげるよ」
「.....って」
「あれ...? おかしいな.. ハハ」
乾いた笑いを俺はする。
流石の俺もこの乾いた笑いは聞き飽きた。
自分でもよく分からないが虫唾が走るような気持ちになる。
「魔力切れ...なのかな..魔法がでないや...」
「× × × × × × × × ×!!!」
少女が声を荒らげている。まるで鬼の形相のようだ。
だがいつも通り何と言ったのかは聞き取れない。
普段はここで夢から現実に舞い戻る。
「僕は諦めない...何としても× × × だけでも...」
「もう辞めてよ...!」
「それ以上はもう体が...」
少女は俺に向かって吐き捨てるように言った。
「大丈夫だ...ここで゛僕 ゛が死のうとも....」
俺は声を絞り出す。
「お願い!!!!辞めて!!!!」
「君を守る為に僕は存在するんだ」
「ありがとう。」
少女が泣き叫ぶのを遮るように言った。
「もっと.......一緒に......!!!」
これが少女の最後の言葉らしい。
「タイムコール 時間逆行 」
そう゛僕 ゛が言い放つと゛俺 ゛の視界は暖かな白に吸い込まれた。
ぼやける白の奥に、僕がみえる。
その時、初めて俺は僕の姿を朧気ながらみた。
あの少女と同じ白い髪だ。だが、あの少女と比べると色が少し違うのだろう。
朧気な為、顔や、細かな風貌はみえない。
「俺は弱いみたいだね。」
僕はそう言った。
「...」
言い返そうとしたが、俺は何も喋れないらしい。
「次は君の番だ。」
「大丈夫。君は僕で、僕は君なんだ。」
俺はこの時、全てを理解した。
彼の過ごした一生が、体験が、記憶が俺の中に流れてきた。
この疲れきって、まるで萎れた花の様な暗い顔をしているのは未来の俺だ。
そして、僕が...いや、俺が守りたかったあの少女はルシアだ。
だが名前しか思い出せない。
僕はニヤリと微笑んでこう言った。
「僕の全てを君に渡す。」
「ただ記憶や力に関しては少しずつ思い出すはずさ」
「僕の人生は濃密だからね。一度に流そうとでもするものなら君は脳死にでもなるだろうね。」
俺は背筋に悪寒が走った。
「今度こそ、守ってくれよ。」
彼はそう言い俺の中に消えていった。
なんだか、果てしなく長い時を過ごした気がする。
まるでこれから俺の全てが始まる様な。
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