上 下
1 / 1
第1章

夢と僕と俺

しおりを挟む
母さんゆずりの無鉄砲な自分。

自分の凡才さに嘆く自分。

優しさ故に、損ばかりする自分。                

灰崎 天青 という名前を持つ自分。

いつも俺はここにいる。


「僕は× × × の笑っている顔が好きなんだよ」


「だから、そんなに泣かないでおくれよ× × × ..」


綺麗な白い髪の少女が俺の腕の中で静かに泣いている。

頬を夕焼けのような赤くして、空のようにどんなに理不尽な事も吸い込んでしまいそうな彼女の眼が涙を流している。



「だって......だって.....」

少女はそう声を震わして言い放った。


「どこかケガをしたのかい?」

「僕が直ぐに治してあげるよ」

「.....って」

「あれ...? おかしいな.. ハハ」

乾いた笑いを俺はする。


流石の俺もこの乾いた笑いは聞き飽きた。

自分でもよく分からないが虫唾が走るような気持ちになる。




「魔力切れ...なのかな..魔法がでないや...」



「× × × × × × × × ×!!!」

少女が声を荒らげている。まるで鬼の形相のようだ。

だがいつも通り何と言ったのかは聞き取れない。


普段はここで夢から現実に舞い戻る。



「僕は諦めない...何としても× × × だけでも...」


「もう辞めてよ...!」

「それ以上はもう体が...」

少女は俺に向かって吐き捨てるように言った。


「大丈夫だ...ここで゛僕   ゛が死のうとも....」

俺は声を絞り出す。



「お願い!!!!辞めて!!!!」



「君を守る為に僕は存在するんだ」


「ありがとう。」

少女が泣き叫ぶのを遮るように言った。


「もっと.......一緒に......!!!」

これが少女の最後の言葉らしい。




「タイムコール 時間逆行 」

そう゛僕   ゛が言い放つと゛俺  ゛の視界は暖かな白に吸い込まれた。


ぼやける白の奥に、僕がみえる。

その時、初めて俺は僕の姿を朧気ながらみた。


あの少女と同じ白い髪だ。だが、あの少女と比べると色が少し違うのだろう。


朧気な為、顔や、細かな風貌はみえない。


「俺は弱いみたいだね。」

僕はそう言った。


「...」

言い返そうとしたが、俺は何も喋れないらしい。


「次は君の番だ。」

「大丈夫。君は僕で、僕は君なんだ。」



俺はこの時、全てを理解した。

彼の過ごした一生が、体験が、記憶が俺の中に流れてきた。

この疲れきって、まるで萎れた花の様な暗い顔をしているのは未来の俺だ。

そして、僕が...いや、俺が守りたかったあの少女はルシアだ。

だが名前しか思い出せない。


僕はニヤリと微笑んでこう言った。


「僕の全てを君に渡す。」

「ただ記憶や力に関しては少しずつ思い出すはずさ」

「僕の人生は濃密だからね。一度に流そうとでもするものなら君は脳死にでもなるだろうね。」

俺は背筋に悪寒が走った。


「今度こそ、守ってくれよ。」

彼はそう言い俺の中に消えていった。


なんだか、果てしなく長い時を過ごした気がする。


まるでこれから俺の全てが始まる様な。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る! #ハズワケ!

寝る犬
ファンタジー
【第3回HJ小説大賞後期「ノベルアップ+」部門 最終選考作品】 「ハズワケ!」あらすじ。 ギフト名【運び屋】。 ハズレギフトの烙印を押された主人公は、最高位のパーティをクビになった。 その上悪い噂を流されて、ギルド全員から村八分にされてしまう。 しかし彼のギフトには、使い方次第で無限の可能性があった。 けが人を運んだり、モンスターをリュックに詰めたり、一夜で城を建てたりとやりたい放題。 仲間になったロリっ子、ねこみみ何でもありの可愛い女の子たちと一緒に、ギフトを活かして、デリバリーからモンスター討伐、はては他国との戦争、世界を救う冒険まで、様々な荷物を運ぶ旅が今始まる。 ※ハーレムの女の子が合流するまで、マジメで自己肯定感の低い主人公の一人称はちょい暗めです。 ※明るい女の子たちが重い空気を吹き飛ばしてゆく様をお楽しみください(笑) ※タイトルの画像は「東雲いづる」先生に描いていただきました。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園
ファンタジー
義妹に婚約者の王太子を横取りされ、獄死した悪役令嬢ヒロインが、10歳の自分に巻戻って目覚める。 前世の過ちは犯さない! ヒロインの反撃が始まる。 タイトル通りにテンプレ要素を盛込んでみました。 処女作です。10章ちょっとで終わる予定です。良ければ読んでみてください。

(完結)皇帝に愛されすぎて殺されましたが、もう絶対に殺されません!

青空一夏
恋愛
Hotランキング37位までいった作品です。 皇帝が深く愛する妃がお亡くなりになった。深く悲しんで帝は食事もあまり召し上がらず、お世継ぎもまだいないのに、嘆き悲しみ側室のもとにも通わない。困った臣下たちは、亡くなった妃によく似た娘、を探す。森深くに住む木こりの娘だったスズランは、とてもよく似ていたので、無理矢理連れていかれる。泣き叫び生きる気力をなくしたスズランだが、その美しさで皇帝に深く愛されるが周囲の側室たちの嫉妬により、罠にはまり処刑される。スズランはそのときに、自分がなにも努力しなかったことに気づく。力がないことは罪だ‥‥スズランが悔やみ泣き叫んだ。今度こそ‥‥すると時間が巻き戻って‥‥

処理中です...