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第四章
[ 225 ] 迎撃戦
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ハリルベルやロゼ、店長が応戦する中、僕は何も出来ないでいた。重力魔法では船へのダメージが大きすぎる……。
みんなのように、小回りが効く魔法を持っていないのが僕の弱点だ。そうこうしてる間にも、ホルツガルネーレの群れが次々船への体当たりを行い一部で破損している。
「おい! 子分! お前もやれよ!」
「でも、モンスターだけを攻撃するなんてどうすれば……」
「バカっ! 散々教えてやっただろ!」
「あ……」
そうか、ここで昨日から散々やった練習が生きるのか! 僕はジオグランツを無詠唱で発動させて、イメージした魔法範囲を細かくマス目にすると、ホルツガルネーレの魔力を感じるのを待った。
「そこだ! よし!」
甲板に上がってこようとした一匹だけ重力を重くして、上手くを海へ叩き落とせた。実戦ともなると、動かない木箱とは違い難易度が段違いだ。
「そこだ! おらぁ!」
ピラートも次々と叩き落としてホルツガルネーレを行動不能にしていく。しかし、僕らが倒すよりも早くホルツガルネーレの数が増えていて、船体を揺らされる回数も増えてきた。
「ちっ! 今日はしつけーな! お前らもっと風魔法を強くしろ!」
「もう限界ですよ!」
マストの上から風魔法使いと見られる船員が、白旗を上げた。船を動かすほどの風魔法となると、相当な力が必要になる。おそらく彼は有事の際に逃げ足として待機していたのだろう。
「船長! もう限界です! 船底に穴が!」
「クソが! おい! 冒険者! お前らの中に風魔法使いはいないのか?! こいつらから逃げないと船底に穴が空き始めてる!」
どうやら思ってたよりピンチのようだ。
これは僕らが動くしかない。
「シルフィさん! ちょっと来てください!」
ハリルベルの援護をしていたシルフィが僕のところへ駆け寄ってくると、いきなりグーパンチで殴られた。
「気安く名前を呼ばないでくださいます? 私はまだ許してないんですが?」
「ごめんなさいごめんなさい」
シルフィはフォレストでハリルベルと風呂に入ったのが余程許せなかったらしい……。まだ言ってる。
「で、何でしょうか」
シルフィも危険な状態だというのは、長年ギルドの受付をやって感覚が備わってるのだろう。顔付きがいつもと変わった。
「船底に穴が空き始めてます。僕が船を軽くするので、風魔法で船を飛ばしてくれますか?」
「ああ、そういうことですか。わかりました」
さすが冒険者に近い場所で活動しているだけあって、話が早い。僕が細かく指示するまでもなく、シルフィはピョンピョンと跳ねてマストの上まで登って行った。
「おい、子分! 何をする気だ?!」
「この船をこの海域から逃します!」
「全員捕まれーーーーー!」
船長の号令と共に僕は呪文を唱えた。
「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!!」
「ヴェルト出来るのかよ! 練度★4は、嘘だったのか?!」
「それには深いわけがあるんだけど」
ダメだ。全開まで範囲を広げても船全てを包み込めない……。このまま風魔法を使うと最悪船がバラバラになる可能性も高い。
「ピラート! 船の後方を軽くしてきて!」
「わ、わかった!」
後方へ向かって駆け出すピラートを見送ると、僕は次々に指示を出した。
「ハリルベルはピラートの援護をお願い!」
「ロゼは、船の周囲の温度を下げてホルツガルネーレの動きを鈍らせて! 凍らせないように注意して!」
「店長は、船の周りの空気を温めてください!」
最後に僕は重要人物に声をかけた。
彼女の助けなしには、この海域からは脱出できない。
「テトラさん。手伝ってください」
「えー? 私は役立たずだよー?」
「いえ、土魔法の練度★7、アルヒテクトゥーアってあれは土がなくても使える土魔法ですよね?」
「……バレてたか」
港からハリルベルとシルフィを船に乗せる時、足場の土の量よりも大量の土で橋が作られた。あれは過去僕が見た土魔法とは全く異なる性質を持つ魔法だった。
「で、私に何をして欲しいのかな?」
「こういうものを船の前に作って欲しいんですけど、出来ますか?」
「あー。なるほど? まぁ出来るかな。高くつくよー?」
「構いません」
「おっけー」
みんなのへの指示を出し終わると、ハリルベルから合図の魔法が空に飛んだ。合わせて船の後方が軽くなったらしく、船が前のめりになる。
「よし、テトラさん! シルフィさん! お願いします!」
僕が船全体の重量を軽くすると、船全体がふわっと宙へ浮いた。それを受けて乗組員は全員船にしがみつく。
「アルヒテクトゥーア・オルト・ヴェルト!」
「ヴィベルスルフト・オルト!」
無重力になった船は、テトラさんの作った発射台に乗り上げそのままシルフィの魔法で加速すると、船はロケットのごとく飛び出した。
みんなのように、小回りが効く魔法を持っていないのが僕の弱点だ。そうこうしてる間にも、ホルツガルネーレの群れが次々船への体当たりを行い一部で破損している。
「おい! 子分! お前もやれよ!」
「でも、モンスターだけを攻撃するなんてどうすれば……」
「バカっ! 散々教えてやっただろ!」
「あ……」
そうか、ここで昨日から散々やった練習が生きるのか! 僕はジオグランツを無詠唱で発動させて、イメージした魔法範囲を細かくマス目にすると、ホルツガルネーレの魔力を感じるのを待った。
「そこだ! よし!」
甲板に上がってこようとした一匹だけ重力を重くして、上手くを海へ叩き落とせた。実戦ともなると、動かない木箱とは違い難易度が段違いだ。
「そこだ! おらぁ!」
ピラートも次々と叩き落としてホルツガルネーレを行動不能にしていく。しかし、僕らが倒すよりも早くホルツガルネーレの数が増えていて、船体を揺らされる回数も増えてきた。
「ちっ! 今日はしつけーな! お前らもっと風魔法を強くしろ!」
「もう限界ですよ!」
マストの上から風魔法使いと見られる船員が、白旗を上げた。船を動かすほどの風魔法となると、相当な力が必要になる。おそらく彼は有事の際に逃げ足として待機していたのだろう。
「船長! もう限界です! 船底に穴が!」
「クソが! おい! 冒険者! お前らの中に風魔法使いはいないのか?! こいつらから逃げないと船底に穴が空き始めてる!」
どうやら思ってたよりピンチのようだ。
これは僕らが動くしかない。
「シルフィさん! ちょっと来てください!」
ハリルベルの援護をしていたシルフィが僕のところへ駆け寄ってくると、いきなりグーパンチで殴られた。
「気安く名前を呼ばないでくださいます? 私はまだ許してないんですが?」
「ごめんなさいごめんなさい」
シルフィはフォレストでハリルベルと風呂に入ったのが余程許せなかったらしい……。まだ言ってる。
「で、何でしょうか」
シルフィも危険な状態だというのは、長年ギルドの受付をやって感覚が備わってるのだろう。顔付きがいつもと変わった。
「船底に穴が空き始めてます。僕が船を軽くするので、風魔法で船を飛ばしてくれますか?」
「ああ、そういうことですか。わかりました」
さすが冒険者に近い場所で活動しているだけあって、話が早い。僕が細かく指示するまでもなく、シルフィはピョンピョンと跳ねてマストの上まで登って行った。
「おい、子分! 何をする気だ?!」
「この船をこの海域から逃します!」
「全員捕まれーーーーー!」
船長の号令と共に僕は呪文を唱えた。
「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!!」
「ヴェルト出来るのかよ! 練度★4は、嘘だったのか?!」
「それには深いわけがあるんだけど」
ダメだ。全開まで範囲を広げても船全てを包み込めない……。このまま風魔法を使うと最悪船がバラバラになる可能性も高い。
「ピラート! 船の後方を軽くしてきて!」
「わ、わかった!」
後方へ向かって駆け出すピラートを見送ると、僕は次々に指示を出した。
「ハリルベルはピラートの援護をお願い!」
「ロゼは、船の周囲の温度を下げてホルツガルネーレの動きを鈍らせて! 凍らせないように注意して!」
「店長は、船の周りの空気を温めてください!」
最後に僕は重要人物に声をかけた。
彼女の助けなしには、この海域からは脱出できない。
「テトラさん。手伝ってください」
「えー? 私は役立たずだよー?」
「いえ、土魔法の練度★7、アルヒテクトゥーアってあれは土がなくても使える土魔法ですよね?」
「……バレてたか」
港からハリルベルとシルフィを船に乗せる時、足場の土の量よりも大量の土で橋が作られた。あれは過去僕が見た土魔法とは全く異なる性質を持つ魔法だった。
「で、私に何をして欲しいのかな?」
「こういうものを船の前に作って欲しいんですけど、出来ますか?」
「あー。なるほど? まぁ出来るかな。高くつくよー?」
「構いません」
「おっけー」
みんなのへの指示を出し終わると、ハリルベルから合図の魔法が空に飛んだ。合わせて船の後方が軽くなったらしく、船が前のめりになる。
「よし、テトラさん! シルフィさん! お願いします!」
僕が船全体の重量を軽くすると、船全体がふわっと宙へ浮いた。それを受けて乗組員は全員船にしがみつく。
「アルヒテクトゥーア・オルト・ヴェルト!」
「ヴィベルスルフト・オルト!」
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