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第二章
[ 066 ] 森の中の騎士団
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「ど、どうして騎士団がこんなところに……ナッシュにいるはずじゃ……」
騎士団の一人が馬を降り、近づいてくる。みんな同じ格好してるが、この人だけ長い黒髪が兜からはみ出ている。
「わたくしにお任せください」
ボソリとロゼが呟いて、馬車から顔を覗かせた。
「ごきげんよう、騎士様。何か御用でしょうか?」
「不審者の捜索をしている」
無骨な見た目とは裏腹に、黒い長髪の騎士は男の僕でもドキッとするような、澄んだ甘い声だった。
「全員出てもらおうか」
これには従うしかない。僕らも馬車を出ると、王国騎士団による確認作業が始まった。
「ふむ、ナッシュからフォレストへの貿易品の輸送か。先ほども通ったな。よし、お前らは積荷の確認をしろ」
先ほども通った? ロゼが放ったダミーの馬車があったのか。さすがマスター、何台も通れば警戒心は緩くなる。
合図を受けて、後ろで待機していた四人の騎士のうち二人が馬を降りて、慣れた手つきで積荷の確認を始めた。
リストと品が一致しているかの確認をしているふりをして、積荷に誰か隠れて無いかを探しているようだ。
「行者と護衛が二人か、ギルドカードを見せてもらおう」
黒髪の騎士に怪しまれるので、目配りなどはしない。言われた通りに、僕とハリルベルはギルドカードを騎士へ手渡した。
「ハリルベル、ランクFか。火属性……ふむ。良かろう」
ハリルベルは、すぐにカードを返して貰った。少しホッとしたが、ハリルベルは本当に冒険者なので、嘘偽りない。問題は僕だ……。
「ロイエ、ランクGで重力か……何歳だ」
ハリルベルには聞かれなかった質問が、僕にだけ飛んできた。みんなに緊張が伝わる。
「じゅ、十三です……」
「ほぉ? いつからナッシュにいる」
「二年ほど前です」
「親はどうした」
「ナッシュへ来る途中にモンスターに襲われて……」
「身元保証人は誰だ」
「キーゼル採掘所の親方です」
どうして僕にだけこんなに質問を……。冷や汗が止まらない。もしかしてバレているのか……?
「確認のため、重力魔法を見せてもらおうか」
どうしてこんなに疑われているんだ……。もう実はバレていて魔法を使った後の連続使用制限中に捕まえるつもりか……? 僕にはツヴァイがある。大丈夫だ。
「わ、わかりました」
「練度★一でいい。俺にかけてみろ」
落ち着け。回復術師は他の魔法を使えない。ゆえにこれが偽装でないか確認したいだけだ。大丈夫……。
「ジオグランツ」
範囲を騎士を中心に絞り、徐々に重力を重くしていく……。それを確認するかのように、騎士は腕を上げ下げした。
「確かに発動しているな」
ここで、極小のジオフォルテを騎士の頭に重ねれば即死させられる……。どうせ、いつかやるなら……。
「わかったもう良い」
騎士の声で、僕はジオグランツを止めた。ハリルベルがふぅと息を吐いたのが微かに聞こえた。
「すまないね。十三歳前後の子がナッシュ近郊で行方不明になったという情報があってね。探していたんだ」
「そうなんですね」
「もう少し行くと、ラングザームの花の香りが効かないモンスターが出るという噂もある。気をつけていくように」
ハリルベルとナッシュへ向かう際に通った甘い森には、ラングザームというモンスターの嫌がる臭いを出す花があった。
この馬車にもその香料がまぶしてあるが、どうやら効かないモンスターもいるらしい。
「おい! 行くぞ!」
騎士団は馬に跨ると、手綱を振りナッシュの方向へ駆けて行った。
僕の正直な感想として、初めての騎士団との接触は……悪印象が無かった。
騎士団の一人が馬を降り、近づいてくる。みんな同じ格好してるが、この人だけ長い黒髪が兜からはみ出ている。
「わたくしにお任せください」
ボソリとロゼが呟いて、馬車から顔を覗かせた。
「ごきげんよう、騎士様。何か御用でしょうか?」
「不審者の捜索をしている」
無骨な見た目とは裏腹に、黒い長髪の騎士は男の僕でもドキッとするような、澄んだ甘い声だった。
「全員出てもらおうか」
これには従うしかない。僕らも馬車を出ると、王国騎士団による確認作業が始まった。
「ふむ、ナッシュからフォレストへの貿易品の輸送か。先ほども通ったな。よし、お前らは積荷の確認をしろ」
先ほども通った? ロゼが放ったダミーの馬車があったのか。さすがマスター、何台も通れば警戒心は緩くなる。
合図を受けて、後ろで待機していた四人の騎士のうち二人が馬を降りて、慣れた手つきで積荷の確認を始めた。
リストと品が一致しているかの確認をしているふりをして、積荷に誰か隠れて無いかを探しているようだ。
「行者と護衛が二人か、ギルドカードを見せてもらおう」
黒髪の騎士に怪しまれるので、目配りなどはしない。言われた通りに、僕とハリルベルはギルドカードを騎士へ手渡した。
「ハリルベル、ランクFか。火属性……ふむ。良かろう」
ハリルベルは、すぐにカードを返して貰った。少しホッとしたが、ハリルベルは本当に冒険者なので、嘘偽りない。問題は僕だ……。
「ロイエ、ランクGで重力か……何歳だ」
ハリルベルには聞かれなかった質問が、僕にだけ飛んできた。みんなに緊張が伝わる。
「じゅ、十三です……」
「ほぉ? いつからナッシュにいる」
「二年ほど前です」
「親はどうした」
「ナッシュへ来る途中にモンスターに襲われて……」
「身元保証人は誰だ」
「キーゼル採掘所の親方です」
どうして僕にだけこんなに質問を……。冷や汗が止まらない。もしかしてバレているのか……?
「確認のため、重力魔法を見せてもらおうか」
どうしてこんなに疑われているんだ……。もう実はバレていて魔法を使った後の連続使用制限中に捕まえるつもりか……? 僕にはツヴァイがある。大丈夫だ。
「わ、わかりました」
「練度★一でいい。俺にかけてみろ」
落ち着け。回復術師は他の魔法を使えない。ゆえにこれが偽装でないか確認したいだけだ。大丈夫……。
「ジオグランツ」
範囲を騎士を中心に絞り、徐々に重力を重くしていく……。それを確認するかのように、騎士は腕を上げ下げした。
「確かに発動しているな」
ここで、極小のジオフォルテを騎士の頭に重ねれば即死させられる……。どうせ、いつかやるなら……。
「わかったもう良い」
騎士の声で、僕はジオグランツを止めた。ハリルベルがふぅと息を吐いたのが微かに聞こえた。
「すまないね。十三歳前後の子がナッシュ近郊で行方不明になったという情報があってね。探していたんだ」
「そうなんですね」
「もう少し行くと、ラングザームの花の香りが効かないモンスターが出るという噂もある。気をつけていくように」
ハリルベルとナッシュへ向かう際に通った甘い森には、ラングザームというモンスターの嫌がる臭いを出す花があった。
この馬車にもその香料がまぶしてあるが、どうやら効かないモンスターもいるらしい。
「おい! 行くぞ!」
騎士団は馬に跨ると、手綱を振りナッシュの方向へ駆けて行った。
僕の正直な感想として、初めての騎士団との接触は……悪印象が無かった。
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