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第二章 ベネッサ編

no24...出会いは突然に

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「なにこれ! ひーふーみ……八匹?!」

 私の周りにいる八匹のストリングタラテクトは、口の中で糸を作り今にも襲いかかってきそうだった。

『早く我を抜け!』

 言われて地面に刺さったカグラに手を伸ばした時、高速で飛んできた糸がカグラへ巻きつくと、ストリングタラテクトに奪い取られてしまった。

『阿呆ーーーーー!』

「あーーー! 嘘でしょーー?!」

 なんだか長い夢を見ていたせいか、身体が思うように動かず初動が遅れた。

〉お? おいみんな!あの女、起きたぞ!
〉なんだよ! もう少しで蜘蛛の餌食だったのに!
〉やっと終わりだと思ったのになぁ
〉あのつえー剣も取られたし、もう終わりだろう

 糸で奪われたカグラは、そのままブンブン回されて天井付近まで飛ばされると、鍾乳石に巻き付けられてしまった。

 まずい……! カグラなしでストリングタラテクト八匹とだなんて……。配信スライムは私を警戒して天井付近を飛んでしまっていて、配信魔法は使えない。

 でも! 怯んでる場合じゃない! 私だってレベルは上がっているんだ! カグラなしだって戦える!

「食らえ! 煉獄魔法《スプレットバースト》!」

 唱えると、私の周りにフレアバレットよりも小さい火炎弾が無数に現れて、ストリングタラテクトの群れに向かって飛び散った。

〉うお! なんだあれ!
〉いつの間にレベルあがってやがった!
〉おい、蜘蛛達なにやってんだありゃ

 フレアバレットより威力は低いけど速度が速いため、ストリングタラテクトでは回避が難しい、煉獄魔法Lv4の魔法だ。

 いまの状況を打破するには最適かつ、私の放てる最大の魔法攻撃。これで一網打尽!のはずだった。

「えっ……」

 八匹のストリングタラテクトは、お互いがお互いに糸で引っ張り合って、放った無数のスプレットバーストを全て回避した。

〉蜘蛛の奴ら連携えぐいな
〉あれを回避されるんじゃ終わりだろう
〉多勢に無勢だな

 ほぼノーダメージで私の攻撃を回避した蜘蛛達は、反撃だとばかりに一斉に蜘蛛糸を飛ばしてきた。何匹か倒せるだろうと思っていた私は思考が遅れてしまった。

『蜘蛛糸で防御しろ!』

「くっ!《蜘蛛糸》!」

 カグラに言われて、飛んできた蜘蛛糸を蜘蛛糸で撃ち落とす。しかし、次々と飛んでくる八匹分の蜘蛛糸を、二本の腕で防ぎ切るのは不可能だった。

〉蜘蛛相手に蜘蛛糸で勝負とか無理だろ
〉相手が二匹ならまだしもなぁ
〉あーあ、今度こそ終わりだ
〉ま、楽しめたな

 右足が、左腕が……。次々に蜘蛛糸に絡め取られ、私は蜘蛛糸で磔状態にされてしまった。文字通り、手も足も出ない。

「ぐっ……痛たたたたた!」

 四肢に絡まった蜘蛛糸が、ギリギリと締め付けられる。ストリングタラテクトの群れが近づいて来る。もうダメだ……。こんなところで死んじゃうなんて……。

 諦めかけた その時だった。

 (……私と変わりなさい!)

「え?……。だ、誰?」

 思わず辺りを見回したけど誰もいない。
 違う。声の主は私の頭の中……。
 脳に直接聞こえたその声は、どこかで聞いたことのある声だった。

 (早く私と交代〈スイッチ〉しなさい!)

 頭の中に響くその声に、訳がわからないまま「交代〈スイッチ〉」と叫ぶと、ふっと身体が軽くなり、四肢を締め付けられていた痛みも消えた。

 (なにこれ、どうなってるの?!)

 驚いた事に、声を出そうとしても声が出ない。まるでテレビを見てるかのように、私の中から私を見ている。奇妙な感覚に陥った。

 それと同時に思い出した。 さっきまで見ていた夢を……。

「……よくも私を傷付けましたね」

 私の中に突如現れた別人格。

「その身で償いなさい」

 四肢を蜘蛛糸で縛られても、なお衰えないその気迫。 この人こそ、この身体の持ち主……。ベネッサ・ユーリーン、その人だ。

「出よ! 《サモンテイム》メテオウルフ!」

 私が覚えてない《サモンテイム》を唱えると、展開された魔法陣の中から、遠吠えと共に全身が炎に包まれた狼が現れた。

――配信累計時間:5時間45分
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