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第一章 欲張り転生
no1...転生、即処刑
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「王子をたぶらかし、王国の転覆を企てた悪女ベネッサを死刑に処す!」
私は目を覚ますと処刑場で磔にされていた。よくわからないけど、周りには大観衆が押し寄せ、通路を埋め尽くしている。
「よくも王子を誘惑したな! この悪女め!」
「街がモンスターに襲われたのもお前の仕業だろ!」
まさに手も足も出ない状態で私は罵詈雑言を受けながら、処刑台の上に立たされてるわけですけど……。
まったく身に覚えがない。それもそのはず、私がこの世界に転生したのは、たった数分前だから。
――感覚上ではほんの少し前、私は例の真っ白い空間にいた。
もちろん対面にいるのは、みんなの大好きな長い白髭の威厳ありそうな神様っぽい服装のおじいさん。
「で、私は神様の手違いで殺されたんですね?」
「いやーすまんすまん。最近ちょっとボケがひどくてのぉ」
私、宮森涼音はごく普通の会社員で、ごく普通のゲームや小説やアニメが大好きなOLだった。日々変化のない業務をこなし、夜は好きなことをして遊ぶだけ。
あの日も、今日からデビューするというvtuberの配信を楽しみに、露店で買った鮎の塩焼きを片手にルンルン気分で帰宅する途中だった。そんな私は、突如空から降ってきたトラックに踏みつぶされて死んだ。
「私の死因、雑すぎませんか?」
「いやーすまん。お詫びに生まれ変わりの状況について、なんでも望みを叶えてやろうかの」
「え? な、なんでも?!」
「ああ、神に二言はない。なんでもじゃ。言ってみよ」
正直、宮森涼音としての人生は何も面白いことがなかった。
結婚なんて夢の夢で彼氏すら出来ず、これといって頑張ったものがないから人より優れている部分もなかった。
新しい人生は薔薇色にしたい!
でもいざ言われるとなると悩む。
「どうしようかな。やっぱり転生するなら魔法があるファンタジー世界がいいよね」
魔法あり冒険ありの世界なんて憧れる。SFとかは現代の知識が役に立たないし。
「ピカーっと光魔法を使ったり、ちょっと鑑定と使ってさ。ダンジョンを冒険!みたいな」
とは言ってみたものの、最近はその手の漫画やアニメに小説も増えて飽和状態だ。
昔はワクワクしたけど、今じゃ手に取っては「また同じ内容か」と思ってしまうようになった。
「あー。確か最近はダンジョン配信系も流行ってるよね。あとはテイマーかな? 可愛いスライムなんかをテイムしたり」
いや、待って?
そんな危険な冒険をするくらいなら、ハーレム路線の方がいいんじゃないかな?
一度くらいイケメンに囲まれてチヤホヤされたいし……。
「あ! そうだ悪役令嬢! 自分の悪逆非道を知っているからこそ、次の人生では人に尽くして今を懸命に生きる!みたいな。ラストが最高」
「なるほど、じゃぁ送るぞーい。元気でなー」
「は? え、ちょ! 待ってまだ何にも……!」
――気づいた時には、こうして処刑場で大勢に取り囲まれ、悪役令嬢として処刑されるラストシーンだったというわけ。
なぜ処刑されようしているのはかわからないけど、なんか口の中が苦い……。とりあえず、あの神を名乗る爺さんが完全にボケているのはわかった。
「諸君! この悪女の処刑方法はより残酷なモノでなければならない!」
「そうだそうだ! 火あぶりにしろー!」
「いや、絞首刑だ!」
「首を切り落とせー!」
みんな私に石を投げつけながら好き勝手言っている。痛いです。何が悲しくて転生直後に死ななきゃいけないんだろう。
「王の命により! 悪女ベネッサの処刑方法は、絶死のダンジョンへの追放とする!」
群衆から大歓声が巻き起り、空気が震えた。絶死ダンジョンって何? 絶対死ぬの?!
「やったぜ! 何十年振りだ?!」
「おい! すぐに賭けの準備だ!」
「今度は何秒で死ぬんだろうな」
あちこちから不穏な発言が飛び交う。秒で死ぬの?!
もうだめじゃん!
「なお! 死刑の様子は、配信スライム経由で、この映像スライムへ映し出される!」
は、配信?
もしかして私が「配信系も流行ってる」とか余計なことを言ったから実現されたの?!
この横に飛んでる羽の生えた青いスライムが配信スライム?
とりあえず神様に言った通り、私は悪女にはなっているし、配信もされるみたいだから、何も望みが叶えられていないわけじゃなさそうだけど、ひどくない?
そもそも私は神様になんて言ったかな? 転生するなら異世界ファンタジーがいいなーって言ってそれから……。
「絶死の門を開けよ!」
私が自分で言った言葉を思い出しているうちに、ガンガン処刑が進んでいく。偉そうなおいじさんが両手を上げると、私の左にいた覆面の大男が巨大なスイッチを押した。
ゴゴゴゴゴゴゴ!と激しい地鳴りを伴いながら、私の足元が開閉されていく。
少し隙間が空いただけで、全身に悪寒が走り、身震いが止まらなくなった。それは私の周りにいた群衆も同様のようだ。
「……やべぇ、あれが絶死のダンジョンか」
「なんて邪悪な魔力だ」
穴の中を覗くと、真っ暗で何も見えない。足元にあった小石が穴へ落ちたけどぶつかった音がまったくしない。相当に深い穴だ。
「死刑執行!」
その合図を受けて大男が斧で私を磔にしていた縄を斬ると、私は穴の中へ落ちていった。
「きゃあぁぁあ!」
こうして私の処刑を兼ねたダンジョン配信が始まった。
――配信累計時間:14分
私は目を覚ますと処刑場で磔にされていた。よくわからないけど、周りには大観衆が押し寄せ、通路を埋め尽くしている。
「よくも王子を誘惑したな! この悪女め!」
「街がモンスターに襲われたのもお前の仕業だろ!」
まさに手も足も出ない状態で私は罵詈雑言を受けながら、処刑台の上に立たされてるわけですけど……。
まったく身に覚えがない。それもそのはず、私がこの世界に転生したのは、たった数分前だから。
――感覚上ではほんの少し前、私は例の真っ白い空間にいた。
もちろん対面にいるのは、みんなの大好きな長い白髭の威厳ありそうな神様っぽい服装のおじいさん。
「で、私は神様の手違いで殺されたんですね?」
「いやーすまんすまん。最近ちょっとボケがひどくてのぉ」
私、宮森涼音はごく普通の会社員で、ごく普通のゲームや小説やアニメが大好きなOLだった。日々変化のない業務をこなし、夜は好きなことをして遊ぶだけ。
あの日も、今日からデビューするというvtuberの配信を楽しみに、露店で買った鮎の塩焼きを片手にルンルン気分で帰宅する途中だった。そんな私は、突如空から降ってきたトラックに踏みつぶされて死んだ。
「私の死因、雑すぎませんか?」
「いやーすまん。お詫びに生まれ変わりの状況について、なんでも望みを叶えてやろうかの」
「え? な、なんでも?!」
「ああ、神に二言はない。なんでもじゃ。言ってみよ」
正直、宮森涼音としての人生は何も面白いことがなかった。
結婚なんて夢の夢で彼氏すら出来ず、これといって頑張ったものがないから人より優れている部分もなかった。
新しい人生は薔薇色にしたい!
でもいざ言われるとなると悩む。
「どうしようかな。やっぱり転生するなら魔法があるファンタジー世界がいいよね」
魔法あり冒険ありの世界なんて憧れる。SFとかは現代の知識が役に立たないし。
「ピカーっと光魔法を使ったり、ちょっと鑑定と使ってさ。ダンジョンを冒険!みたいな」
とは言ってみたものの、最近はその手の漫画やアニメに小説も増えて飽和状態だ。
昔はワクワクしたけど、今じゃ手に取っては「また同じ内容か」と思ってしまうようになった。
「あー。確か最近はダンジョン配信系も流行ってるよね。あとはテイマーかな? 可愛いスライムなんかをテイムしたり」
いや、待って?
そんな危険な冒険をするくらいなら、ハーレム路線の方がいいんじゃないかな?
一度くらいイケメンに囲まれてチヤホヤされたいし……。
「あ! そうだ悪役令嬢! 自分の悪逆非道を知っているからこそ、次の人生では人に尽くして今を懸命に生きる!みたいな。ラストが最高」
「なるほど、じゃぁ送るぞーい。元気でなー」
「は? え、ちょ! 待ってまだ何にも……!」
――気づいた時には、こうして処刑場で大勢に取り囲まれ、悪役令嬢として処刑されるラストシーンだったというわけ。
なぜ処刑されようしているのはかわからないけど、なんか口の中が苦い……。とりあえず、あの神を名乗る爺さんが完全にボケているのはわかった。
「諸君! この悪女の処刑方法はより残酷なモノでなければならない!」
「そうだそうだ! 火あぶりにしろー!」
「いや、絞首刑だ!」
「首を切り落とせー!」
みんな私に石を投げつけながら好き勝手言っている。痛いです。何が悲しくて転生直後に死ななきゃいけないんだろう。
「王の命により! 悪女ベネッサの処刑方法は、絶死のダンジョンへの追放とする!」
群衆から大歓声が巻き起り、空気が震えた。絶死ダンジョンって何? 絶対死ぬの?!
「やったぜ! 何十年振りだ?!」
「おい! すぐに賭けの準備だ!」
「今度は何秒で死ぬんだろうな」
あちこちから不穏な発言が飛び交う。秒で死ぬの?!
もうだめじゃん!
「なお! 死刑の様子は、配信スライム経由で、この映像スライムへ映し出される!」
は、配信?
もしかして私が「配信系も流行ってる」とか余計なことを言ったから実現されたの?!
この横に飛んでる羽の生えた青いスライムが配信スライム?
とりあえず神様に言った通り、私は悪女にはなっているし、配信もされるみたいだから、何も望みが叶えられていないわけじゃなさそうだけど、ひどくない?
そもそも私は神様になんて言ったかな? 転生するなら異世界ファンタジーがいいなーって言ってそれから……。
「絶死の門を開けよ!」
私が自分で言った言葉を思い出しているうちに、ガンガン処刑が進んでいく。偉そうなおいじさんが両手を上げると、私の左にいた覆面の大男が巨大なスイッチを押した。
ゴゴゴゴゴゴゴ!と激しい地鳴りを伴いながら、私の足元が開閉されていく。
少し隙間が空いただけで、全身に悪寒が走り、身震いが止まらなくなった。それは私の周りにいた群衆も同様のようだ。
「……やべぇ、あれが絶死のダンジョンか」
「なんて邪悪な魔力だ」
穴の中を覗くと、真っ暗で何も見えない。足元にあった小石が穴へ落ちたけどぶつかった音がまったくしない。相当に深い穴だ。
「死刑執行!」
その合図を受けて大男が斧で私を磔にしていた縄を斬ると、私は穴の中へ落ちていった。
「きゃあぁぁあ!」
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