闇の支配者

プロローグ — 思い出

　 
　巨大な迷宮は、時間と共にその形を変えながらも、ついに終わりにたどり着いたようだった。私の目の前で、重い金属の威圧的な扉が軽く触れるだけで動いた。金属が軋む鋭い音が暗い洞窟に響き渡り、扉がついに開いたとき、そこには広大な部屋のように見える暗闇が広がっていた。
　突然、いくつもの松明が灯り、その場所の広さが明らかになった。五百人以上を容易に収容できるほどの広大な部屋だった。部屋の中央には、予期しない光景が私を驚かせた。私は確かめるために中央に歩み寄ることにした。近づくにつれて、私は見たものが正しいことを確認した。
　私の目の前の光景は、同時に興味深くも不安を掻き立てるものだった。大きな部屋の中央には、一人の人物が天井と床に鎖で縛られており、完全に動きを封じられていた。彼の頭には布が被せられ、視界が遮られ、体と顔には奇妙な記号の書かれた紙が貼り付けられていた。
　注意深く観察すると、同じ記号が部屋の隅々にまで存在しており、それが単なる装飾ではないことを示していた。私の前に立つフードを被った人物は、恍惚としたように静止していた。
「こんにちは？」私は彼の注意を引こうとしたが、返答はなかった。「聞こえますか」
　再び、静寂が支配し、奇妙で重苦しい雰囲気が漂った。徐々に弱まる感覚が私を包み込み、生命力を吸い取られるようだった。頭痛が始まったものの、その謎めいた人物の状態を確かめるために近づくことにした。私は彼の顔から記号の紙と頭を覆っていたフードを取り除いた。
「*****」彼の弱々しい声が、未知の言語で言葉を発した。
「理解できない…」私は苛立ちながら呟いたが、次の言葉は驚くほど明瞭だった。「***** ここに…」
「どうやってここに来たの？」その孤立した場所にいる彼の存在に興味を抱きながら尋ねた。
「ここにいるべきではない…」彼の声は心配そうに響き、視界を取り戻そうとしていた。
　私は彼を手伝うことにし、彼の目を覆っていた布を取り除いた。若々しくも脆弱に見える外見は、その堅実で決然とした声と対照的だった。彼は瞬きを繰り返し、今や顔を照らす光に順応していった。純白の長い髪が肩に垂れ、燃え盛るような赤い瞳が好奇心に満ちて私を見つめていた。その視線は鋭く、まるで私の魂の奥深くを見通すかのようだった。
　"素敵ですね。" 私は微笑みながら言いました、緊張を和らげようとして。私の突然の言葉に彼は笑顔を浮かべました。"あなたも笑うことができるのですか" と挑発しました。
　"冗談好きなタイプなの？" 彼は明らかに興味深そうに尋ねました。"あなたにぴったりな友達がいますよ。" 次の瞬間、彼の顔から笑顔が消えました。まるで、彼がついに自分の状況を理解したかのように。
　"あなたはなぜここにいるのですか？" 私は状況を理解しようとして急いで尋ねました。
　彼の顔に暗い表情が広がり、彼はつぶやきました。"もし神を傷つけたと言ったら、信じてくれますか？"
　その告白に私は驚きましたが、彼の声には無垢な真実が宿っているように感じました。私はもっと聞きたいと思い、そのあり得ない出会いの謎を解き明かすことを決意しました。
　"ええ？本当ですか？ちょっと待って！神って本当に存在するの？"
　"はい、でも私たちが話しているのは同じ神ではないと思います。私をここに閉じ込めた神は、あなたが知っている神とは違います…"
　神を傷つけることがここまでの扱いを受けるには十分なのでしょうか？この神は傲慢な存在なのでしょうか、それとも単なる"傷つけた"というだけではないのでしょうか。どちらもあり得る選択肢でした…
　私は近づきました。彼はただの美しい少年に過ぎませんでした。私の判断で、彼は無意味に人を傷つけるような人物ではないように思えました。私の考えが誤っているかもしれませんが、どういうわけか、それを否定することができませんでした。
　彼の腕の鎖に力を込めましたが、それらは動きませんでした。どれだけ力を入れても、まるで山を動かそうとしているようでした。
　"何をしているんですか？"
　彼は私の行動に驚きつつも見つめました。しかし、私はやめるつもりはありませんでした。ただ、鎖を外すことだけを考えていました。
　"簡単な答えじゃないですか？あなたを解放しています。"
　彼は驚きの表情で私を見つめ、彼の赤い瞳に希望と不信の混ざった表情が輝いていました。私の心には明確な決意がありました。彼を解放することが唯一正しい選択肢に思えました。
「いいえ！ しないでください。そうすれば、あなたはただ苦しむだけです…」彼の声は真剣なままでしたが、悲しみが滲んでいました。
　彼がここにいたくないことを理解しましたが、自力で脱出する手段がないことも理解しました。「神を傷つけたのですね？ だから私を守れるのです。」私は現場で唯一の大人なので、この子供に自信を見せなければなりません。目の前の少年に囚われている信頼であるかもしれませんが。
　再び鎖を外そうと試みましたが、成功しませんでした。実際、これほど重いはずのない鎖でした。鎖は細く、そのため重さが合わないのです。
「封印を解除すべきです。」そのとき、私はついに理解しました。彼の頭からマントを取り除くと、多数の記号で覆われていることがわかりました。私はそれが意味がないと思いました。どうして数枚の紙がこれほど重い鎖を作ることができるのでしょうか？ 私は自分が最も賢くないことを知っていますが、それでも理解できることがありました。これまでに目撃したことは何も意味がないと思い、ただ彼の指示に従うことにしました。鎖から記号の紙を取り除き、まるで魔法のようにそれらは落ちました。
　この時点で、私は簡単に驚かなくなりました。私は世界が私が考えていたようには機能しないことを受け入れました。「これはいくつかの冗談に使えるかもしれません。その作成者の連絡先を覚えておくようにしてください、必要になるでしょう…」私の言葉はつぶやきのように出ていきましたが、少年はただ立ち上がるだけでした。
　彼は手首をこすり始めました。鎖が残したいくつかの跡がありました、それは彼が長い間そこにいたことを示しています。彼はその弱々しい体で立つのに苦労しているように見えました。もっとよく観察すると、彼の皮膚は日光不足で青白くなっていました。彼は正しく食事をしていないようです。彼の体は非常に弱っているのが明らかでした。
「ありがとう…」彼のわずかな言葉には悲しみ、喜び、混乱、疑念が込められていました。説明できない多くの感情がありましたが、私はそれが何であるかをよく知っています。
　私は彼に近づき、抱きしめました。もしかしたら、私は小さな娘を持つ母親として、女性としてではなく、無防備な子供を見守る母親として考えることができました。「もう大丈夫です。心配しなくてもいいですよ。」彼が感情を抑えようとしている息遣いを感じましたが、すべてを隠すことはできませんでした。
　私にはその言葉を述べる資格はありませんが、今私はここにいます。子供を慰めるのは大人の仕事です。彼がどんな葛藤に巻き込まれているのか、何を目撃したのかはわかりませんが、今彼が誰かを必要としていることはわかります。「さあ、私の家まで連れていきます。快適な場所で話すことができると思います。」私は場所から抜け出す方法を全く知りませんが、言葉に対する自信があったので信じました。それは自信過剰とも言えるかもしれませんが。
「そうそう、あなたの名前をまだ知りませんね。」
　彼は距離を取った。顔を撫でた後、私は彼の視線を感じました。彼の存在は以前ほど疲れているようには見えませんでした。"名前... そう、私の名前... 私の名前は―"
　その言葉は遠くで響く轟音に遮られました。洞窟の壁を響かせたそれに私たちは振り向きました。私の感覚は最大限に研ぎ澄まされました。突然、私たちの足元が揺れ始めました。まるで洞窟自体が生きていて不安定なようでした。
　"ここから出なければならない、今すぐ！" 彼の声が緊急感を帯び、彼は新たな努力で立ち上がりました。

　"アズラエル！！"
　眠たそうに天井を見上げた。声の方向を目で追い、六歳ほどの子供がいることに気づいた。夢だろうか？
　彼女の短くて黒い髪が、明るい肌に映える。大きな紫色の目は子供らしい好奇心を宿しながらも、何か謎めいたものを持っていた。彼女はレースと赤いバラが飾られた黒いドレスを着ており、ややゴシックで神秘的な風貌をしていた。小さな手はレースの手袋で覆われ、網タイツとバックル付きの黒い靴を履いていた。
　"アズ！！"
　"はい、はい。もう起きてるよ。"
　起き上がろうとしたが、いきなり彼女に胸に寄りかかられ、引き摺り下ろされた。
　"彼女が来たの。" 彼女の柔らかい声が心地よかった。
　彼女の言葉で、今日取り扱うべき問題を思い出した。友人の妹を受け入れるべきであり、1年間彼女の訓練を担当しなければならない。今、その場で彼女を迎えに行くはずだったが、その場所に行くつもりはない。実際、私は裏でされた選択に同意したことはなかった。将来的に彼女に近づくための他の方法を拒否するつもりだが、後にすでに起こったことを知ったので、拒否する機会はなかった。
　"ノワール、アリスは私のことを知ってる？" 確認しようとした。
　ノワールはゆっくりと頭を振った。最近到着したばかりで、私の場所を伝えていなかった。彼女が私の場所を知る前に、少し平和を楽しむことができるかもしれない。
　"彼女を迎えに行かないの？" と心配そうに尋ねたノワール。
　"それは考えていない。" と即座に答えた。
　ノワールは私を見て、少し悲しそうにしているようだった。
　"彼女の現状が知りたかったんだけど…"
　私は彼女の頭を撫でた。"心配しないで、1年間でそのことができるよ。"

「あなた次第では、それは起こらないでしょうね？」
　苦い笑みを浮かべながら、すでに答えを知っていた。
「その通りだけど…私には意見がないんだ。どうせ私の同意なしに全てが決められたんだから。」
　私はいる場所を見渡した。それは屋敷の裏手にある温室だった。様々な種類の花がここに咲いており、特別な人物によって厳選されたものだ。ここのそれぞれの花には言葉にできない意味がある。だからこそ、この場所で穏やかな気持ちでいられるのだろう。薔薇の香りを感じながら、木陰に横たわり心地よい影に包まれている時、これ以上の状況は考えられない。
「アズ、お腹がすいたよ。」
「そして、会話のトピックが突然変わったことに驚いている。」
　私の胸に横たわっているノワールが起き上がり、温室の出口に向かって歩き出した。
「過度にやりすぎないように。」
「了解！」
　彼女が場を去り、私を自分の思考に委ねた。もう少し休むべきか…ゆっくりと目を閉じる感覚がした。アリスに見つかる前にこの時間だけでも眠っておくべきだろう。そう遠くはない…ゼニスが彼女にすぐ連絡を取るだろう。
　未来は何を持っているのか、私は考えてみる。

　気がつかないうちに再び眠ってしまっていたことに気づくと、ノワールが戻ってきたことに気づいた。彼女は一人ではなかった…彼女の側に一人の人物がいた。何年も前に見た顔だが、記憶の中で常に残っていた。ほとんど忘れることができないものだ。私たちの目が一瞬交わった時、遠い過去を思い出した…