11 / 13
リリアーナとジェラルド。
しおりを挟むあの日から月日は流れ、私はリリアーナとして、そして私として生きていた。
この頃になると以前の私の記憶を思い出すことがなくなっていたし、リリアーナの身体の記憶も自分の一部として受け入れていた。
ジェラルドとは少しは距離が縮んでいると思うけど、以前のように積極的に私に触れることはなくて。
そんなジェラルドに私は不安になっている。
ジェラルドには好ましいと、妻でいて欲しいと言われた。だがよく考えれば、それはグロスター公爵家の当主としてという意味かもしれない。
そう考えると何となく今のジェラルドとの距離感に納得したら、無性に泣きたくなってしまった。
人目を避けるように屋敷から出た私は、庭園の奥にある東屋で隠れて泣いた。
リリアーナになってから、涙脆くなったのかな…。
私は自分をリリアーナとして受け入れているけど、ジェラルドは違うのかもしれない。その証拠にジェラルドの口からリリアーナと呼ぶ事がなくなったから。
それでもジェラルドと会話をしない訳ではないし、食後の2人で過ごす時間もそれなりにある。
私は我儘なのかな。
ジェラルドと過ごせるならそれでいいのに。それ以上を望むなんて。
「リリィ、こんな所にいたんだね。」
背中から覆い被さるように優しく抱きしめられた。
その事にも驚いたけど、今…。
「リリィって…」
「だめだった?」
少し照れたように言うジェラルドが可愛くみえる。私は頭をフルフル横にふる。
「リリィがもうリリアーナであることはわかっているんだけど、何でかな…。私だけの呼び方でリリィを呼びたかったんだ。」
私はもうリリアーナだけど、『リリアーナ』が存在していた事を忘れることはできないし、今回の件で全て納得した訳ではないことをジェラルドは話してくれる。
「リリィ、少し時間がかかってしまったけど…。」
そう言いながら私の手をとると、青色の石がついた綺麗な指輪を嵌めてくれる。
「私と夫婦になってくれるかい?」
ジェラルドの美しい顔で言われて断れる人なんていないと思う。
それに…
「そういうのは指輪を嵌める前に言うものじゃない?」
「ふふ、それもそうだね。どうやら気が急いたみたいだ。」
楽しそうに笑うジェラルドに、私もおかしくなった。
「ジェラルド、私を妻にして下さい。」
「喜んで。私の可愛い奥さん。」
頬に手を添えられるとジェラルドの顔が近付いてくる。
私は急に恥ずかしくなって目をギュッと閉じた。心臓が飛び出してしまいそうだ。
チュッ
おでこに温もりを感じて目を開ける。
ジェラルドは楽しそうに笑っていた。
ジェラルドの指が私の唇を優しくなぞる。
「ココはまだ我慢することにするよ。」
私の顔はボンッと音がしそうなほど真っ赤になった。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
私の愛する夫たちへ
エトカ
恋愛
日高真希(ひだかまき)は、両親の墓参りの帰りに見知らぬ世界に迷い込んでしまう。そこは女児ばかりが命を落とす病が蔓延する世界だった。そのため男女の比率は崩壊し、生き残った女性たちは複数の夫を持たねばならなかった。真希は一妻多夫制度に戸惑いを隠せない。そんな彼女が男たちに愛され、幸せになっていく物語。
*Rシーンは予告なく入ります。
よろしくお願いします!
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ヤンデレ義父に執着されている娘の話
アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。
色々拗らせてます。
前世の2人という話はメリバ。
バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。
【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした
あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。
しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。
お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。
私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。
【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】
ーーーーー
小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。
内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。
ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が
作者の感想です|ω・`)
また場面で名前が変わるので気を付けてください
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる