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『リリアーナ』の想い。
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ジェラルドは、私が『リリアーナ』であり、『リリアーナ』ではないと知っていると言った。
そういえばジェラルドは私が目を覚ましてから『リリアーナ』と名前を呼んでいない。『君』と、私のことを読んでいる。
「君と共に過ごす短い時間の中で、ふと『リリアーナ』とは別人のように感じる時があったんだ。少しだが違和感を感じていたけど、それが何なのかよくわからなかったんだが…。これは君も見たほうがいいと思って持ってきた。」
ジェラルドに渡された小花柄の封筒を受け取ると中から便箋をだして開いた。
息を呑んだ。
すごく胸が締め付けられる。『彼女』の想いがそこにはあったから。
ずっと彼女はジェラルドを慕っている令嬢たちからの嫌がらせに苦しんでいた。誰にも相談出来ずにいたこと、いつしか消えて無くなりたいと思っていたこと。日々エスカレートしていく嫌がらせに彼女の心は壊れていた。たまたま手に取った本がまじないの本だったこと。半信半疑で試したまじないに効果を感じたこと。そして私が『リリアーナ』になったまじないのことが書かれている。
自分が消えることで公爵家の外聞が悪くなると想定して行ったこと。
『リリアーナ』になった『私』は巻き込まれただけの被害者であること。どうか『私』に悪くしないで欲しい。そう『リリアーナ』がジェラルドへ向けた最初で最後の手紙だった。
ジェラルドは今、何を想っているのだろう。『リリアーナ』と向き合おうと彼なりに歩み寄ってくれたのに。
強く握っていた手をジェラルドが解してくれる。
「君が何を思っているか、私にはわからないけど…。正直に言うよ。私は『リリアーナ』に対して色々と思うことが無いとは言えない。だがそれとこれはまた別だ。」
ジェラルドの真剣な顔から、真っ直ぐな目から逃げてしまいたい。
彼が何を言うのかこわくてたまらない。
「私は君のことを好ましく思っている。」
聞き間違いかと思った。
「愛しいと想う感情も無いとは言えない。短い時間だが『リリアーナ』ではない『君』と過ごして、今までのことが嘘のように『リリアーナ』に魅かれていた。『リリアーナ』には悪いが、それが別人である『君』だったんだ。妙にしっくりした気持ちになった。」
「私を避けていたのは…。」
「君が『リリアーナ』では無いと知って、それでも君に魅かれている私自身の気持ちに整理をつけていた。この話しをどう振ろうかと、君を傷つけないように話したいと思っていたら…その。申し訳なかった。」
ジェラルドは考えてくれていた。
私を受け入れようとしてくれていた。
「ごめんなさいっ。もっと早く、目が覚めた時に話していれば…。」
「それでもきっと変わらない。私は同じように君に魅かれていると思う。」
再びジェラルドの胸に抱きこまれた。
もっと責められるかと思っていたのに…。彼が私を気にしていてくれたことが嬉しかった。
「君さえ良ければ、このまま私の妻でいて欲しい。」
私は涙を流しながら頷いた。
そういえばジェラルドは私が目を覚ましてから『リリアーナ』と名前を呼んでいない。『君』と、私のことを読んでいる。
「君と共に過ごす短い時間の中で、ふと『リリアーナ』とは別人のように感じる時があったんだ。少しだが違和感を感じていたけど、それが何なのかよくわからなかったんだが…。これは君も見たほうがいいと思って持ってきた。」
ジェラルドに渡された小花柄の封筒を受け取ると中から便箋をだして開いた。
息を呑んだ。
すごく胸が締め付けられる。『彼女』の想いがそこにはあったから。
ずっと彼女はジェラルドを慕っている令嬢たちからの嫌がらせに苦しんでいた。誰にも相談出来ずにいたこと、いつしか消えて無くなりたいと思っていたこと。日々エスカレートしていく嫌がらせに彼女の心は壊れていた。たまたま手に取った本がまじないの本だったこと。半信半疑で試したまじないに効果を感じたこと。そして私が『リリアーナ』になったまじないのことが書かれている。
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強く握っていた手をジェラルドが解してくれる。
「君が何を思っているか、私にはわからないけど…。正直に言うよ。私は『リリアーナ』に対して色々と思うことが無いとは言えない。だがそれとこれはまた別だ。」
ジェラルドの真剣な顔から、真っ直ぐな目から逃げてしまいたい。
彼が何を言うのかこわくてたまらない。
「私は君のことを好ましく思っている。」
聞き間違いかと思った。
「愛しいと想う感情も無いとは言えない。短い時間だが『リリアーナ』ではない『君』と過ごして、今までのことが嘘のように『リリアーナ』に魅かれていた。『リリアーナ』には悪いが、それが別人である『君』だったんだ。妙にしっくりした気持ちになった。」
「私を避けていたのは…。」
「君が『リリアーナ』では無いと知って、それでも君に魅かれている私自身の気持ちに整理をつけていた。この話しをどう振ろうかと、君を傷つけないように話したいと思っていたら…その。申し訳なかった。」
ジェラルドは考えてくれていた。
私を受け入れようとしてくれていた。
「ごめんなさいっ。もっと早く、目が覚めた時に話していれば…。」
「それでもきっと変わらない。私は同じように君に魅かれていると思う。」
再びジェラルドの胸に抱きこまれた。
もっと責められるかと思っていたのに…。彼が私を気にしていてくれたことが嬉しかった。
「君さえ良ければ、このまま私の妻でいて欲しい。」
私は涙を流しながら頷いた。
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