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どうやら転生したそうですよ。
しおりを挟む見覚えのない天井をみつめながら途方にくれて数十分。
部屋の中を見渡したが、どれもこれも知らないものばかり。
窓に反射して見えた自分の姿をみた時なんて、驚きすぎて声すら出なかった。
やたら立派でふかふかなソファーに腰掛け天井を仰ぐ。
30歳主婦だった私にこんな乙女チックな転生とかまじ勘弁。
そんなふうに思ってしまうのも、先日暇つぶし程度に読んだ小説のせいだと思いたい。
もし自分が10代や20代ならテンションが上がることもあったかもしれないが…。
口から出たのは、それはそれは重たい溜息ひとつのみ。
その時ふと部屋に気配を感じて、この部屋に唯一ある扉に視線を向けた。
メイド服を着た女性が驚いた顔で私をみたと思った瞬間、大きな声を出しながら部屋から出ていってしまった。
「旦那様~!奥様が~!」
よくあんな大きな声が出せたものだ。
それより今、奥様と言った?
もしかして私、転生したというのに既に既婚者なんですかね?
どうせなら独身に転生させてよなんてどうでもいいことを思う。
先程のメイドさんが出て行ってから数分もせずに、バタバタと大きな足音が数人分きこえてくる。
何事かと再び扉の方へ視線を向けると、あらご馳走様です。
芸能人?いや何処かの国の王子様?っていうくらいキラキラのイケメンさんが驚いた顔で此方をみていた。
「リリアーナ!」
すぐそばまで駆け寄ってきたイケメンは私の手を両手で包み込む。
どうやら私の名前はリリアーナというらしい。
「もう目が覚めないかとっ!私が、私が不甲斐ないばかりに!リリアーナに傷をつけてしまって本当に申し訳なかった!!」
酷く傷付いた悲しそうな顔のイケメンさん。さてどうしたものだろう…。
「リリアーナ?」
心配そうに覗きこまれる。
近くにイケメンとか本当無理。
私イケメンって心臓に悪くて苦手なのよね。なんて今思うべきでない無駄なことを心の中で呟いてみる。
「もう私と口もききたくないのか…?」
悲しそうに呟かれるが、何か私にしたんですかね?
考えるにこのイケメンさんが私の旦那さんってことになるのだろうか…。
あぁー無理だわ。
「あの、大変申し訳ないけど…。貴方、誰ですか?」
とりあえず今できることは正直に聞くことですね。
私の問いかけに、目の前のイケメンさんも、まわりにいる燕尾服の男性も、先程大声で叫んでいたメイド服の女性も、私以外の人たちが酷く絶望したような表情をしているのは、私の勘違いであり気のせいだと思いたい。
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