305 / 431
飛竜襲来 ✧
しおりを挟む
アルトからの報せを受け、キンケードと同時に空を振り仰ぐ。
じっと目を凝らしてもこの距離では像がぶれて良く見えない。だが言われてみれば確かに、空を飛ぶ影は両脚で何かを掴んでいるようにも見える。
<どうやら意識を失っているようです。負傷の有無なども調べたいところですが、ここからですとそれ以上のことは。力及ばず申し訳ありません>
高度的にまだ飛び立ったばかりのはず。この段階で飛竜の襲来とアダルベルトの誘拐を知れただけでも有益だった。十分だとポシェットの上から撫でたリリアーナはキンケードを見上げる。
厳しい顔で前髪をかき上げた男は、喉の奥で唸ってから「まずはやれることからだ」と言って一歩ファラムンドの方へ歩み寄った。
「オイ、聞け。信じられなくても信じてもらうしかねぇが、ありゃ飛竜だ。おまけにお前んとこの長男を脚に掴んでる。気を失ってるようだが、ケガの具合はここからじゃわからん」
「……世迷言だったら内臓ごと舌を引っこ抜くからな。おいカミロ、屋敷を出てくる時に異常は?」
「いえ、これといって気づくようなものは何も。アダルベルト様へは出発前にご挨拶をし、部屋に戻られるとのことで階段を上っていく姿をお見送りしたのが最後です。飛竜といえば群れで行動する竜種、単独で特定の人間を攫うほどの知能はないはず。キンケード、他に姿は見えますか?」
<今のところ、空にいる個体はあれのみのようです>
アルトからの報告をキンケードがそのまま伝えると、カミロは何か考えているのか眼鏡を指で押さえて黙り込んだ。
その横でファラムンドは両手を招くような形で翻し、周辺にいた自警団員や従者たちに傾聴を促す。そのわずかな仕草だけで、空を仰ぎながらどよめいていた十数人が口を閉じ、視線をファラムンドへと向けた。
「今のキンケードの話が聞こえてた奴、一切の口外を禁じる。破った野郎は領外追放じゃ済まないから肝に銘じろ。聞こえてなかった奴に説明し直す時間はないから簡単に言うが、うちの屋敷が何者かに襲撃された可能性がある。ひとり飛竜に捕まった、他の被害は今のとこ不明だ」
周囲を取り囲む面々に緊張が走る。
「時間が惜しい、一度しか言わんから各々最適に行動しろ。今からここの人手を四班に分ける。まず厩に繋いでる馬を全て連れて来い、一番脚の速い馬は俺が使う。他にあと二人ばかり、先発隊として直ちに屋敷へ向かうからついて来い。人選はお前に任せる」
視線を受け、キンケードが力強くうなずく。
「今からここを臨時の中継所として使う、詰め所にいる奴らも連れて来い。間違っても空けすぎるなよ、陽動って可能性もあるし次はこっちに来るかもしれん、見回りのシフトは崩すな。後発隊は四人ぐらいでいい、武装でき次第、屋敷へ向かえ。そして途中に誰かいたら商人だろうが身内だろうが全て止めろ、逆らうようなら捕縛でいい、俺が許可する。事態が確定するまで決して情報を外に漏らすな」
キンケードは一番近くにいたナポルへ指示を出し、別邸の外へ向かわせた。人員を呼びに行ったのだろう。
朗々と通る父の声を聞きながら、リリアーナは空を舞う影を目で追い続けた。まだ螺旋状に上昇している最中で、どこかに飛び去る気配はない。
だが気流を捕まえられる高度まで上れば、翼で風を受けながら一気に加速して飛んでいくはずだ。あまり時間は残っていないと見ていい。
「次に物見と中継係として街に残る者。これの指揮はキンケードに一任するから、団員の残りも併せて街の防備に集中しろ。手薄になった所へ何がくるかわからん。最後の一隊は、あの飛竜の追跡だ。方向がわかったら増援も向かわせる、まずは体力のある馬と追尾に長けた者を用意しろ」
「旦那様。屋敷へ向かうのでしたらもう少し人数をお連れください」
「あっちには守衛部もいる、たとえ群れに襲われたって全滅はしてないだろ。俺も向かうんだから屋敷のことはいい、お前は追跡に加われ、方角と手掛かりを見逃すな」
「かしこまりました」
カミロは礼をして停めている馬車に向かい、キンケードは周囲の団員たちへ機敏に指示を飛ばす。
緊急事態のさなかにありながら、無駄に騒ぐ者はひとりもいない。それぞれが指示を受け、迅速に行動に移す様は不安を拭うに足るほど心強い。
それに、父が領主として指示を出す様子を間近に見たのは初めてだ。よく通る声には自信が漲り、視線や手の動きひとつひとつに耳目を集める力がある。ヒトの上に立つ者はこうでなくてはと、誇らしさとともに憧憬がじわりと胸を満たす。
肩にかけていた上着を脱いで従者に預けたファラムンドがリリアーナへと向き直り、何か言いかける。そこへ、地面に潰れていたはずのエルシオンが行く手を遮るように立ちはだかった。
「邪魔だゴミ屑。お前に構ってる暇はない、消えろ、どたまカチ割られてぇのか?」
「イバニェス側の人たちってなんか揃ってガラが悪いよね……。いや、それはともかく。お義父さん、あれを追うならオレ良いもの持ってるん痛だだだだっ、真面目な話してるから最後まで聞いてぇー!」
ファラムンドは片手でエルシオンの頭を掴み、こめかみをぎりぎり締め上げた。そのまま足をばたつかせて抵抗する男をゴミ屑のようにポイと脇に放り捨てる。
<あっ、飛竜が飛び去ります、気流によって若干変わる可能性もありますが、向かう先は北東でしょうか>
はっと空を見るリリアーナの視線に気づいたファラムンドも同じ方向を仰ぎ、舌打ちする。
両手で頭を押さえながら蹲っていたエルシオンはすぐさま立ち上がり、今度は微妙な距離を取りながらファラムンドに訴えた。
「飛竜を追うのに、馬じゃさすがに無理があるでしょ。オレ、空を往くための乗り物を持ってるから使ってよ」
「空を? 気球やカイトの類か?」
「いや、おっきい鳥を召喚するの。言うこと聞くし、背にふたりは乗れる。ここからだと飛び立つのに魔法の補助が必要だけど、馬で追うよりは確実に速いよ!」
訝し気に訊ねるファラムンドへ、両手を広げて大きさをアピールするエルシオン。
すでに元『勇者』であることが明かされているとはいえ、召喚魔法なんて持ち出すとは思わなかった。だが、確かに飛竜を追うなら同じ空を飛べるものに騎乗したほうが確実と言える。
ここがキヴィランタであれば翼竜セトの力を借りたいところだが、今となってはそうもいかない。
そんな叶いもしない策はともかく、エルシオンの言葉が気になった。言うことを聞く大きな鳥というのは……もしや、いつぞやのクッション用に胸の羽毛をむしられたという、極楽鳥のことだろうか?
そんな疑問を乗せた視線に、エルシオンは片目を閉じた妙な笑顔で応える。
「フン、身元が知れたところで誰が犯罪者の手など借りるか」
「汚名返上とまではいかなくても、ちゃんと役に立つって所を見せたいんだ。だからお義父さん、攫われた子を無事に連れ戻せたらさ、オレをイバニェスの自警団に入れてよ」
「次にその呼び方をしたら上下の前歯引っこ抜いて釘を詰めんぞこの青二才が!」
息巻くファラムンドの背後から、しばし姿を消していたカミロが現れた。先発用の馬の準備ができたこと、追跡用の荷馬車はここに停めているものをそのまま使うとの報告を手短に伝える。そして。
「この際、使える物は何でも使いましょう。どの道、馬で追ってもあの高度では手出しができません。体面や手段よりも今はアダルベルト様の安全確保が第一です」
「おっ、カミロサン話がわかる~!」
「自警団への入団については成功報酬として後で考慮に入れることをお約束いたします。その騎乗用の鳥というのは、すぐに呼べるのですか?」
「うん、任せて。召喚なんてずいぶん久し振りだけど、まぁこの時間なら巣で寝てるんだろうし、失敗はしないよ」
気楽に請け負いながら、エルシオンは馬車の停めてある一帯からいくらか距離を取った。
何をする気なのかと馬や荷車のそばで作業を進める自警団員たちも、各々手を止めないまま注目する。
「召喚魔法ってだいぶ難しいんだよね、半分は転移との掛け合わせじゃん? えーっと、こうやって、こうでいいかな……?」
そんな気の抜けたようなことを呟きながらも、描き出される構成は緻密で隙のないものだった。
対象、契約、座標。所々にリリアーナの知らない記述も織り混ぜながら、光る召喚構成陣が紡ぎ出されていく。
描き込まれた座標軸を計算すると、思った通りテルバハルム山脈からの転送で間違いない。転移に距離は関係ないが、体積の数値が異常だ。
「これは……ずいぶん大きいな。父上、カミロ、もう少し離れたほうが良いかもしれない」
そばに立っている男たちの袖を引いてともに数歩下がると、すぐに地揺れのような振動と風圧を感じた。
一瞬だけ目を閉じ、開ける。
そんな瞬きの間に突如現れた、堂々たる巨体。周囲にいる大人たちと一緒になって、唖然としながらそれを見上げる。
薄紅色に輝く美しい羽毛に覆われた、艶やかな体。これまでどんな生物にも見たことのない虹を纏う見事な輝きは、一度目の当たりにすれば一生忘れないだろう。
湾曲した首の先にあるつぶらな黒い瞳に、平たいくちばし。
短い尾羽、鋭い爪を備える太い脚。
丸々とよく肥えた体。
丸々……ふっくら……こんもりと。
「何だか、少し、思っていたのと違うな……?」
エルシオンの召喚に応えて現れた伝説級の生物、極楽鳥。
初めて目にするその外見は、一言で表せば、薄紅色の巨大アヒルだった。
じっと目を凝らしてもこの距離では像がぶれて良く見えない。だが言われてみれば確かに、空を飛ぶ影は両脚で何かを掴んでいるようにも見える。
<どうやら意識を失っているようです。負傷の有無なども調べたいところですが、ここからですとそれ以上のことは。力及ばず申し訳ありません>
高度的にまだ飛び立ったばかりのはず。この段階で飛竜の襲来とアダルベルトの誘拐を知れただけでも有益だった。十分だとポシェットの上から撫でたリリアーナはキンケードを見上げる。
厳しい顔で前髪をかき上げた男は、喉の奥で唸ってから「まずはやれることからだ」と言って一歩ファラムンドの方へ歩み寄った。
「オイ、聞け。信じられなくても信じてもらうしかねぇが、ありゃ飛竜だ。おまけにお前んとこの長男を脚に掴んでる。気を失ってるようだが、ケガの具合はここからじゃわからん」
「……世迷言だったら内臓ごと舌を引っこ抜くからな。おいカミロ、屋敷を出てくる時に異常は?」
「いえ、これといって気づくようなものは何も。アダルベルト様へは出発前にご挨拶をし、部屋に戻られるとのことで階段を上っていく姿をお見送りしたのが最後です。飛竜といえば群れで行動する竜種、単独で特定の人間を攫うほどの知能はないはず。キンケード、他に姿は見えますか?」
<今のところ、空にいる個体はあれのみのようです>
アルトからの報告をキンケードがそのまま伝えると、カミロは何か考えているのか眼鏡を指で押さえて黙り込んだ。
その横でファラムンドは両手を招くような形で翻し、周辺にいた自警団員や従者たちに傾聴を促す。そのわずかな仕草だけで、空を仰ぎながらどよめいていた十数人が口を閉じ、視線をファラムンドへと向けた。
「今のキンケードの話が聞こえてた奴、一切の口外を禁じる。破った野郎は領外追放じゃ済まないから肝に銘じろ。聞こえてなかった奴に説明し直す時間はないから簡単に言うが、うちの屋敷が何者かに襲撃された可能性がある。ひとり飛竜に捕まった、他の被害は今のとこ不明だ」
周囲を取り囲む面々に緊張が走る。
「時間が惜しい、一度しか言わんから各々最適に行動しろ。今からここの人手を四班に分ける。まず厩に繋いでる馬を全て連れて来い、一番脚の速い馬は俺が使う。他にあと二人ばかり、先発隊として直ちに屋敷へ向かうからついて来い。人選はお前に任せる」
視線を受け、キンケードが力強くうなずく。
「今からここを臨時の中継所として使う、詰め所にいる奴らも連れて来い。間違っても空けすぎるなよ、陽動って可能性もあるし次はこっちに来るかもしれん、見回りのシフトは崩すな。後発隊は四人ぐらいでいい、武装でき次第、屋敷へ向かえ。そして途中に誰かいたら商人だろうが身内だろうが全て止めろ、逆らうようなら捕縛でいい、俺が許可する。事態が確定するまで決して情報を外に漏らすな」
キンケードは一番近くにいたナポルへ指示を出し、別邸の外へ向かわせた。人員を呼びに行ったのだろう。
朗々と通る父の声を聞きながら、リリアーナは空を舞う影を目で追い続けた。まだ螺旋状に上昇している最中で、どこかに飛び去る気配はない。
だが気流を捕まえられる高度まで上れば、翼で風を受けながら一気に加速して飛んでいくはずだ。あまり時間は残っていないと見ていい。
「次に物見と中継係として街に残る者。これの指揮はキンケードに一任するから、団員の残りも併せて街の防備に集中しろ。手薄になった所へ何がくるかわからん。最後の一隊は、あの飛竜の追跡だ。方向がわかったら増援も向かわせる、まずは体力のある馬と追尾に長けた者を用意しろ」
「旦那様。屋敷へ向かうのでしたらもう少し人数をお連れください」
「あっちには守衛部もいる、たとえ群れに襲われたって全滅はしてないだろ。俺も向かうんだから屋敷のことはいい、お前は追跡に加われ、方角と手掛かりを見逃すな」
「かしこまりました」
カミロは礼をして停めている馬車に向かい、キンケードは周囲の団員たちへ機敏に指示を飛ばす。
緊急事態のさなかにありながら、無駄に騒ぐ者はひとりもいない。それぞれが指示を受け、迅速に行動に移す様は不安を拭うに足るほど心強い。
それに、父が領主として指示を出す様子を間近に見たのは初めてだ。よく通る声には自信が漲り、視線や手の動きひとつひとつに耳目を集める力がある。ヒトの上に立つ者はこうでなくてはと、誇らしさとともに憧憬がじわりと胸を満たす。
肩にかけていた上着を脱いで従者に預けたファラムンドがリリアーナへと向き直り、何か言いかける。そこへ、地面に潰れていたはずのエルシオンが行く手を遮るように立ちはだかった。
「邪魔だゴミ屑。お前に構ってる暇はない、消えろ、どたまカチ割られてぇのか?」
「イバニェス側の人たちってなんか揃ってガラが悪いよね……。いや、それはともかく。お義父さん、あれを追うならオレ良いもの持ってるん痛だだだだっ、真面目な話してるから最後まで聞いてぇー!」
ファラムンドは片手でエルシオンの頭を掴み、こめかみをぎりぎり締め上げた。そのまま足をばたつかせて抵抗する男をゴミ屑のようにポイと脇に放り捨てる。
<あっ、飛竜が飛び去ります、気流によって若干変わる可能性もありますが、向かう先は北東でしょうか>
はっと空を見るリリアーナの視線に気づいたファラムンドも同じ方向を仰ぎ、舌打ちする。
両手で頭を押さえながら蹲っていたエルシオンはすぐさま立ち上がり、今度は微妙な距離を取りながらファラムンドに訴えた。
「飛竜を追うのに、馬じゃさすがに無理があるでしょ。オレ、空を往くための乗り物を持ってるから使ってよ」
「空を? 気球やカイトの類か?」
「いや、おっきい鳥を召喚するの。言うこと聞くし、背にふたりは乗れる。ここからだと飛び立つのに魔法の補助が必要だけど、馬で追うよりは確実に速いよ!」
訝し気に訊ねるファラムンドへ、両手を広げて大きさをアピールするエルシオン。
すでに元『勇者』であることが明かされているとはいえ、召喚魔法なんて持ち出すとは思わなかった。だが、確かに飛竜を追うなら同じ空を飛べるものに騎乗したほうが確実と言える。
ここがキヴィランタであれば翼竜セトの力を借りたいところだが、今となってはそうもいかない。
そんな叶いもしない策はともかく、エルシオンの言葉が気になった。言うことを聞く大きな鳥というのは……もしや、いつぞやのクッション用に胸の羽毛をむしられたという、極楽鳥のことだろうか?
そんな疑問を乗せた視線に、エルシオンは片目を閉じた妙な笑顔で応える。
「フン、身元が知れたところで誰が犯罪者の手など借りるか」
「汚名返上とまではいかなくても、ちゃんと役に立つって所を見せたいんだ。だからお義父さん、攫われた子を無事に連れ戻せたらさ、オレをイバニェスの自警団に入れてよ」
「次にその呼び方をしたら上下の前歯引っこ抜いて釘を詰めんぞこの青二才が!」
息巻くファラムンドの背後から、しばし姿を消していたカミロが現れた。先発用の馬の準備ができたこと、追跡用の荷馬車はここに停めているものをそのまま使うとの報告を手短に伝える。そして。
「この際、使える物は何でも使いましょう。どの道、馬で追ってもあの高度では手出しができません。体面や手段よりも今はアダルベルト様の安全確保が第一です」
「おっ、カミロサン話がわかる~!」
「自警団への入団については成功報酬として後で考慮に入れることをお約束いたします。その騎乗用の鳥というのは、すぐに呼べるのですか?」
「うん、任せて。召喚なんてずいぶん久し振りだけど、まぁこの時間なら巣で寝てるんだろうし、失敗はしないよ」
気楽に請け負いながら、エルシオンは馬車の停めてある一帯からいくらか距離を取った。
何をする気なのかと馬や荷車のそばで作業を進める自警団員たちも、各々手を止めないまま注目する。
「召喚魔法ってだいぶ難しいんだよね、半分は転移との掛け合わせじゃん? えーっと、こうやって、こうでいいかな……?」
そんな気の抜けたようなことを呟きながらも、描き出される構成は緻密で隙のないものだった。
対象、契約、座標。所々にリリアーナの知らない記述も織り混ぜながら、光る召喚構成陣が紡ぎ出されていく。
描き込まれた座標軸を計算すると、思った通りテルバハルム山脈からの転送で間違いない。転移に距離は関係ないが、体積の数値が異常だ。
「これは……ずいぶん大きいな。父上、カミロ、もう少し離れたほうが良いかもしれない」
そばに立っている男たちの袖を引いてともに数歩下がると、すぐに地揺れのような振動と風圧を感じた。
一瞬だけ目を閉じ、開ける。
そんな瞬きの間に突如現れた、堂々たる巨体。周囲にいる大人たちと一緒になって、唖然としながらそれを見上げる。
薄紅色に輝く美しい羽毛に覆われた、艶やかな体。これまでどんな生物にも見たことのない虹を纏う見事な輝きは、一度目の当たりにすれば一生忘れないだろう。
湾曲した首の先にあるつぶらな黒い瞳に、平たいくちばし。
短い尾羽、鋭い爪を備える太い脚。
丸々とよく肥えた体。
丸々……ふっくら……こんもりと。
「何だか、少し、思っていたのと違うな……?」
エルシオンの召喚に応えて現れた伝説級の生物、極楽鳥。
初めて目にするその外見は、一言で表せば、薄紅色の巨大アヒルだった。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる