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第15話:打ち上げ

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「たっくん、たっくん! 早く乾杯の音頭ぉっ!」

「ちょ、待てよ! ビール注いでるとこなんだからさ! ルゥルゥはお子様ビールとオレンジジュースどっちがいい?」

 タクヤ達はあの後無事にギルド酒場に戻り、クエスト達成の打ち上げ兼ルゥルゥの歓迎パーティをそのまま開始しようと準備の最中だ。

「お、おこさまびいるって何でしょうか、タクヤ様ぁ」

「見た目も味もビールに似せたジュースさ。ノンアルコールっていい方の方がわかりやすいかな?」

「他、試しに飲んでみようかなぁ、ですぅ」

 最近のノンアルコールビールの製造技術はすごい。

 ノンアルコールビールというジャンルが確立され、どれが定着するぐらいだから。



 がたがたがた!



 タクヤ達の使用する机がなぜか小刻み、いや、大刻みに振動する。



 何かと思い、タクヤは視線をフレデリカの方へ向けると。



「早く、早く、早く! はじめよ~よぉ~」

 フレデリカは机を揺らして、周囲を促す。

 忙しないこの上なく。



 ゾンビのように机を鷲掴みし、駄々をこねるアイドル戦士。



「あれ? フレデリカさ~ん? ジョッキにビールが入ってないのですが? 何で白い髭つけてるにですか~?」

「ルゥルゥ、あれはフライングっていう、反則行為だよ。良い子は真似しないでね。特に職場で! 仕事クビになるかもしれないからっ」



 ルゥルゥは素朴な疑問をフレデリカに投げた。

 タクヤはそれに対して大人な返答を返す。

 一方のフレデリカはまわりの空気を読まず、勝手に飲酒スタートしていた。



 今回のクエストでは、タクヤに一本取られたようなのでフレデリカは不機嫌だ。

 彼女は非常にナルシストであり、自分が大活躍するべきだと常日頃考えている。だから、彼女のストレスはマッハなのである。



 ピンポンピンポンピンポン



 そんなハーフエルフ女は、ベルの役割を持つ魔石のスイッチを連打。



 ――暫く経つと――



「はいは~い、ご注文は何にいたしましょう?」

「ごくごくごく……、っぷは――、おい! そこの下僕! 馳走じゃ! 馳走を持ってこ,ぎゃっ!? な、だにするのよぉ~!?」

 早くも泥酔状態になり、酒場のウェイトレスの娘に横柄な態度を取るフレデリカにタクヤはチョップをかます。

 ウェイトレスの娘は高圧的なフレデリカの態度に怯えている様子だ。小声でひっ、という声が聞こえてくる。



 なれていないのだろうか?



「あ~、連れがこんなんでホントすんませんすんません……」

 タクヤはウェイトレスの娘に謝罪をするが。

「おいっ! たっくん! まさかとはぁ~、おもうけどぉ~、この娘ナンパするつもりなんでしょうねぇ~。ほら、目の前にこんな綺麗どころがいるのにぃ~、今日のクエストの一件はそちの手柄じゃ! 負けを認めるぞよ? 褒めて使わそう! 今なら一杯付き合ってやってもいいぞよ!?」

「うわっ! 酒くせえっ! 離れろ! いててててて! 力つええ! 爪食い込んでる! 服破ける!」



 一瞬ぎくりと言う挙動を取るタクヤ。



「た、タクヤ様、手当たり次第に女の人に手を出そうとするなんて、やっぱり男の人ってみんな獣ですぅ……」



 そんなタクヤの動きを見逃さないルゥルゥはタクヤに対して引き気味な動きをとる。



 泥酔しているフレデリカは片腕でタクマを強引に引き寄せる。彼女はエルフなのだが、なぜか怪力の持ち主だ。

 エルフが怪力なんて聞いたことがない話だ。

 言葉遣いも殿様風と意味不明である。



「うう……、なんだかフレデリカさん、こわいですぅ」

「ブラック先輩に当たると辛いんですよ、ルゥルゥさん……、ぐすっ。ちょっとこのバカ止めたいから、“ギルマス”に通信するわ」

 そういい、タクヤは携帯魔導端末マグホを取り出し、通話を始めようと連絡先をタップする。

 とぅるるるるる、とぅるるるるる。



 ディスプレイにはねっ毛のロングヘアの少女が映し出される。

 年の頃は、おそらくルゥルゥと同じくらいなのだろうか。

 瞳は赤く、髪の色は透き通るようなエメラルドグリーン。そのロングヘアは外側に向かい跳ね上がり気味で、左右の一部分を小さなツインテールにしている。耳はルゥルゥと同じく尖り耳なのだがルゥルゥのものと比べると尖り方は少し鈍い。ブカブカの白地のTシャツを着ており、赤字で血に飢えていると書いてある。そして肌の色は透き通るように白く、その白さは生気を感じさせないまでもあるが、それはどこか多くの者を魅了する性質をはらんでいるように見えさせる。

「なんじゃ? 妾に恋しくなったのか?タクヤよ?」

「ワイズさ~ん、ちょっと今大丈夫ですか? このバカハーフエルフをなんとかしていただきたいのですが、いっててて! 首折れる!」

「大丈夫じゃないのじゃっ! それどころではないのじゃ! 妾のHPがっ! ああっ!」

 端末越しにドカーン、バコーンと轟音が響き渡る。

 タクヤは端末に顔を向けていたが、フレデリカに無理やり方向転換された。

「これっ! お主のせいじゃ! “BNO”のカリスマである妾が、ザコ相手にしてやられてしまったのではないか――!  これはトマトジュース1年分じゃっ! 妾にトマトジュースを差し出すのじゃ!」

「いい加減現場に出てくださいよ~! “怪我”治っているのでしょ? こっちはめちゃくちゃですよ~? ワイズさん? おいっ! ワイズっ!」

「嫌じゃ、嫌じゃ! いやじゃいやじゃいやじゃ――! ネトゲ王に妾はなる! リアル(現実)はクソゲーなのじゃ!」

 “BNO”とはブラック・ナイト・オンラインというネトゲの略称だ。

 ワイズと呼ばれた少女はBNOのガチ勢だ。以前は現場仕事もこなすギルマスだったのだが、とある戦闘中の“事故”による大怪我が原因で自宅で療養生活を送っていたのだが、その途中でBNOと出会いその幻想的な世界観と臨場感あふれる戦闘に酔いしれてドハマリして現在に至るのである。ちなみに怪我は完治している模様。

 タクヤは仕事をほっぽりでしている上司にキレてかかかる。

 ワイズはひっくり返り、バタバタと足をバタつかせて駄々をこねる。



 どたばたは一旦やみ、

「――というわけで、乾杯の音頭をとらせていただきたく……」

「はい、はーいっ!カンパーイ!」

「乾杯ですっ!」

「乾杯なのじゃ」

「ちょ、まてよ?乾杯!」



 ルゥルゥはお子様ビール。

 フレデリカはビール3杯目。

 画面越しのワイズはトマトジュース

 タクヤはビール。



 各々片手に飲み物を持ち打ち上げ本番がスタート。



 タクヤが乾杯の音頭を取るはずが、フレデリカにその役割を奪われてしまう。



「ごくごく……、ぷはっー!仕事の後のビールは格別だなぁ。染み渡る~」

「うむ、美味じゃ。妾だけ画面越しながらじゃが、こうして皆で宴を開き、そこでいただくトマトジュースは格物じゃな、お主よ」

「もういい加減リアルで出てこいよ?」

「いやじゃ! そ、そういえばじゃ、実はまだ古傷が癒えていないのじゃ!」

「今思いつきで言っただろっ!? ワイズ!」

「ズビーズズビー、そ、そんなことより、その娘について妾は色々知りたいのじゃ。タクヤよ、話せっ」

「話をそらすな、ネトゲ廃人!」

 タクヤとワイズが言い合いになっているが、

「そ~んなことより、私の武勇伝でも聞かな~い? オークキング倒した話とか」

 あくまでフレデリカは自分中心。

 ブレない奴だ。

 タクヤは横目でジト目でハーフエルフを蔑視する。

「あ、あのう、皆さんもっと仲良くやりませんかですっ」

 まさかの新人がフォロー。



 今日も一日平和で終わった。

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長らく更新が止まっていましたので、ここで終了とさせていただきます。
大変申し訳ございません。
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