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第5話:とある冒険者ギルドの一日の始まり
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「ひゅううううううっ! 遅刻、遅刻ぅ~」
タクヤは所属している冒険者ギルドの集会所になっている“ギルド酒場スカイフィッシュ”に向かうべく、ギルドバイトの貯金で買った魔動自転車に乗り颯爽と町中の風を切る。
――10分後――
「ハァハァ……、約束の時間には間に合ったようだ」
タクヤは息を切らし、ギィカランカランと古風な木製の扉をギィカランカランと鳴らして、ギルド酒場の扉を押し開けて店内に入った。
「えっと……、あいつ・・・はどこかな?」
タクヤは店に入るなり店内をキョロキョロとしながらギルドの仲間を探す。
カチャカチャカチャ……、ッターン!
前方左45度あたりからドヤリングよろしくなキーボード音が木霊した。
あそこだな、とタクヤは一発で目的の人物の居場所を音だけで探り当てた。
だが、タクヤ本人より先に気づいたのは相手の方からだった。
「あっ! たっくん、たっくん! おはよーっ!」
「……うす……、相変わらずテンション高いな、フレデリカ」
大声で挨拶とともに出迎えたフレデリカと呼ばれた女性――彼女の肌の色は透き通るように白く、髪の毛はピンクがかった茶色のロングヘアでいわゆる二本角の位置で輪っかののように髪の毛の一部を束ねている。目の色はエメラルドグリーンで、何よりの彼女の特徴はその尖った形状の耳――つまりはエルフ、というわけではなくハーフエルフと呼ばれる混血種族なのである。
タクヤはフレデリカの手招きに応じ、空いている座席に腰を掛けた。
よっこいしょっと。
「たっくん! 早速だけど今日の案件の確認しよっか。はいはい、そぉ~れ!」
ッターン、と勢い良くノート型の魔導端末“ワックブックエアー”のエンターキーを弾いた。
端末のボディの梨のロゴマークが白く光っている。
フレデリカはその端末を向い側の席にいるタクヤに見えるようにくるっと反転させた。
端末の画面にはギルドの引受案件について表示されている。
「えとえと、フレデリカさ~ん? 案件は“ギガントトロルの鼻くその採取”? なんぞこれ……?」
「ええ、今日引き受けた案件はそこのワックブックに表示されてることそのまんまよ、たっくん?」
たっくん呼ばわりやめてよぉ。
公衆の面前でなんか恥ずかしい。
「いや、鼻くそって何だよ?鼻くそって」
「えっ!? 知らないのぉ~? 今、トロルの鼻くそには美容薬の原料になるってことがわかって、採取ブームになってるって? ギガントだから通常のトロルのより5倍の採取量と言われているわぁっ! これを欲しがる業者は今わんさかいるのよぉっ!」
「いやいやいや! だいたい、ギガントトロルなんてSSS級の凶悪モンスターじゃないかっ!? いくらなんでも危険すぎるよ!? それに今日の外注の魔導師はどうしたんだ?」
「そういえば一応、昨日連絡とったんだけど、まだ音沙汰ないわね……」
ブィーン、ブィーン、ブィーン……
突然フレデリカの足元から携帯魔導端末マグホのバイブ音がなったので、彼女は座ったまま膝を抱え込むように高く上げスカートがはだけるポーズになり、太腿にベルトでくくりつけられている端末ケースから端末を取り出す。
これ完全に回りに見せつけてるだろ……
「どう……、見とれちゃったでしょ? この美しいおみ足に!」
「いいからとっとと出ろよ、フレデリカ」
あんまり凝視すると周囲の視線が痛いということをわかっていたタクヤは、そこまでフレデリカのおみ足を拝見しなかったが
「はいは~い! ……えっ!? やっぱ辞めとくって!? いやいやぁ、来てくださいよぉ~、今なら応援者全員サービスしちゃうわよん。あれれ~? ちょっ! ちょ・ま・て・よ!」
(応援者全員サービスってなんだよ?漫画誌か?)
ツー、ツー、ツー……
通話を切られたようである。
いわゆるドタキャンである。
「ああああああああああ――――! せっかくの貴重なマジックキャスターがぁああああああ!」
「あのですね、電話の相手の方の判断は正しいんじゃないかと。だってさ、俺だってこんな危険な案件は御免なんだよ? 受付に行ってキャンセルするなら今のうちだぞ? フレデリカ。俺からも他の案件あたってみるわ」
タクヤはギルド酒場の受付嬢にコンタクトをとるため窓口に向かおうとしたら。
ガシィッ!
これ以上前に進めない!
タクヤは後ろを振り向くと、フレデリカの手がタクヤの足首をホラー映画のようにつかみ、涙目で
「たっく~ん? どうしても、どうしてもこの案件を断るわけには行かないのぉ!? ランクが――!私のランクがぁ――!」
「離せっ!怖ええええええ!?お化けか、お前は!?ギガントトロルと戦うなんて勘弁なんだよぉっ!」
タクヤは足首を掴まれても強引に前進するが、彼の足首を掴んで離さないフレデリカはずるずると牽引される。
フレデリカの執念にタクヤは次第に顔色を悪くする。
冒険者にはランクがあり、一番最上級がSSSランクで初級冒険者はFランクと指定されており、タクヤはBランク、フレデリカはSランク(魔王の幹部を倒せるレベル)である。
フレデリカはランク昇級を望んでいるのである。
より一層民衆の偶像になるがために。
ちなみにフレデリカはエルフィン・エルフィンという3人組アイドルギルドのメンバーでもあり、センターだそうな。
「ちっ! ギャーギャーうっせーぞっ!」
タクヤたちの騒ぎを見たギルド酒場の客から野次が飛んだ
タクヤとフレデリカはもみ合いになっていると、
「タクヤ様ぁ――、見つけましたのですぅ――!」
ダークエルフの幼女が彼らの目の前に立っていた。
タクヤは所属している冒険者ギルドの集会所になっている“ギルド酒場スカイフィッシュ”に向かうべく、ギルドバイトの貯金で買った魔動自転車に乗り颯爽と町中の風を切る。
――10分後――
「ハァハァ……、約束の時間には間に合ったようだ」
タクヤは息を切らし、ギィカランカランと古風な木製の扉をギィカランカランと鳴らして、ギルド酒場の扉を押し開けて店内に入った。
「えっと……、あいつ・・・はどこかな?」
タクヤは店に入るなり店内をキョロキョロとしながらギルドの仲間を探す。
カチャカチャカチャ……、ッターン!
前方左45度あたりからドヤリングよろしくなキーボード音が木霊した。
あそこだな、とタクヤは一発で目的の人物の居場所を音だけで探り当てた。
だが、タクヤ本人より先に気づいたのは相手の方からだった。
「あっ! たっくん、たっくん! おはよーっ!」
「……うす……、相変わらずテンション高いな、フレデリカ」
大声で挨拶とともに出迎えたフレデリカと呼ばれた女性――彼女の肌の色は透き通るように白く、髪の毛はピンクがかった茶色のロングヘアでいわゆる二本角の位置で輪っかののように髪の毛の一部を束ねている。目の色はエメラルドグリーンで、何よりの彼女の特徴はその尖った形状の耳――つまりはエルフ、というわけではなくハーフエルフと呼ばれる混血種族なのである。
タクヤはフレデリカの手招きに応じ、空いている座席に腰を掛けた。
よっこいしょっと。
「たっくん! 早速だけど今日の案件の確認しよっか。はいはい、そぉ~れ!」
ッターン、と勢い良くノート型の魔導端末“ワックブックエアー”のエンターキーを弾いた。
端末のボディの梨のロゴマークが白く光っている。
フレデリカはその端末を向い側の席にいるタクヤに見えるようにくるっと反転させた。
端末の画面にはギルドの引受案件について表示されている。
「えとえと、フレデリカさ~ん? 案件は“ギガントトロルの鼻くその採取”? なんぞこれ……?」
「ええ、今日引き受けた案件はそこのワックブックに表示されてることそのまんまよ、たっくん?」
たっくん呼ばわりやめてよぉ。
公衆の面前でなんか恥ずかしい。
「いや、鼻くそって何だよ?鼻くそって」
「えっ!? 知らないのぉ~? 今、トロルの鼻くそには美容薬の原料になるってことがわかって、採取ブームになってるって? ギガントだから通常のトロルのより5倍の採取量と言われているわぁっ! これを欲しがる業者は今わんさかいるのよぉっ!」
「いやいやいや! だいたい、ギガントトロルなんてSSS級の凶悪モンスターじゃないかっ!? いくらなんでも危険すぎるよ!? それに今日の外注の魔導師はどうしたんだ?」
「そういえば一応、昨日連絡とったんだけど、まだ音沙汰ないわね……」
ブィーン、ブィーン、ブィーン……
突然フレデリカの足元から携帯魔導端末マグホのバイブ音がなったので、彼女は座ったまま膝を抱え込むように高く上げスカートがはだけるポーズになり、太腿にベルトでくくりつけられている端末ケースから端末を取り出す。
これ完全に回りに見せつけてるだろ……
「どう……、見とれちゃったでしょ? この美しいおみ足に!」
「いいからとっとと出ろよ、フレデリカ」
あんまり凝視すると周囲の視線が痛いということをわかっていたタクヤは、そこまでフレデリカのおみ足を拝見しなかったが
「はいは~い! ……えっ!? やっぱ辞めとくって!? いやいやぁ、来てくださいよぉ~、今なら応援者全員サービスしちゃうわよん。あれれ~? ちょっ! ちょ・ま・て・よ!」
(応援者全員サービスってなんだよ?漫画誌か?)
ツー、ツー、ツー……
通話を切られたようである。
いわゆるドタキャンである。
「ああああああああああ――――! せっかくの貴重なマジックキャスターがぁああああああ!」
「あのですね、電話の相手の方の判断は正しいんじゃないかと。だってさ、俺だってこんな危険な案件は御免なんだよ? 受付に行ってキャンセルするなら今のうちだぞ? フレデリカ。俺からも他の案件あたってみるわ」
タクヤはギルド酒場の受付嬢にコンタクトをとるため窓口に向かおうとしたら。
ガシィッ!
これ以上前に進めない!
タクヤは後ろを振り向くと、フレデリカの手がタクヤの足首をホラー映画のようにつかみ、涙目で
「たっく~ん? どうしても、どうしてもこの案件を断るわけには行かないのぉ!? ランクが――!私のランクがぁ――!」
「離せっ!怖ええええええ!?お化けか、お前は!?ギガントトロルと戦うなんて勘弁なんだよぉっ!」
タクヤは足首を掴まれても強引に前進するが、彼の足首を掴んで離さないフレデリカはずるずると牽引される。
フレデリカの執念にタクヤは次第に顔色を悪くする。
冒険者にはランクがあり、一番最上級がSSSランクで初級冒険者はFランクと指定されており、タクヤはBランク、フレデリカはSランク(魔王の幹部を倒せるレベル)である。
フレデリカはランク昇級を望んでいるのである。
より一層民衆の偶像になるがために。
ちなみにフレデリカはエルフィン・エルフィンという3人組アイドルギルドのメンバーでもあり、センターだそうな。
「ちっ! ギャーギャーうっせーぞっ!」
タクヤたちの騒ぎを見たギルド酒場の客から野次が飛んだ
タクヤとフレデリカはもみ合いになっていると、
「タクヤ様ぁ――、見つけましたのですぅ――!」
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