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第2章.妖精王
029話.お母さんと勘違い?
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アカリは『アマテラスのお話』を通して、お姉さんから
・「地上界」と「天界」、そしてもうひとつの世界と3つの世界が存在する事
・アマテラスという女神さまが「天界」を創った事
という、とても興味深い伝承話を聞く事が出来ました。
そんな伝承話をなぜお姉さんが知っていたのか、その答えも何となく想像がつきました。
たぶん予想では……あの話の『7人の弾き子達』の末裔のひとりがお姉さんなんだと思います。
でも旅の出会いと別れは一期一会、いつの日かお姉さんは真相を話してくれるんでしょうか?
いや、たぶん無理でしょう。
この楽器の澄んだ音色みたいに……空に舞ったら溶けて消えるだけですから。
ならば、楽器の音色をじっくりココロに刻み付けようと静かに耳を傾けていたアカリがふと我に返り周りを見回すと……
座楽団を囲む様に、いつの間にかキュルムの町の人達が集まっています。
ワイワイワイ……ガヤガヤガヤ……
右手前では、お互いの肩を組んで酒を呑み交わしています。
音楽はココロの扉を開き、酒は男の友情を育むんです。
ペチャクチャ……キャイキャイ……
左奥では、輪を囲んで女性同士で話に華を咲かせています。
女性は男性と比べて右脳と左脳の橋渡しをする脳梁がブッ太くて、両方の脳をフル活用して “ 思考 ” をブン回す事が出来るので……
だから、女性は一日中でも会話する事が出来ると聞いた事があります。
キュルムの町のお姉さん達も、かぐら座の “ 弾き子 ” の皆さんも、とにかく喋るのが大好きみたいです。
おっとっと……♪おっとっと……♪
向こうでは、酒を呑んで酔っ払った連中がニックと一緒にお馬鹿なダンスを踊っているみたい。
こちらは、酔うと体躯を動かさずにはいられないタイプの皆さんですね。
どいつもこいつもみんな、晴れやかなイイ顔をしているじゃありませんか!
一度打ち解ける事さえ出来れば、後はこんなもんです。
でも何故か、みんな “ きぐるみ ” は着たままなんですが……
アカリ達とかぐら座の皆さんがキュルムの町の人々に歓迎され溶け込む光景を微笑ましく見ていたこの町の長老が、酒を持ってゆらりとこちらにやって来ました。
この町で作られたラム酒の様です。
あ……この酒ボトルにも、あの掲示板で見たものと同じデザインのステッカーが貼ってありますね。
「先ほどはどうもすみませんでしたわい、よくこの町に来る事が出来ましたなぁ!
迷い込む者が年に数人はおるから、その度に追い返しておるんじゃが……
旅のお方の様に、明確にこの町を目指して来る者は初めてだったんじゃ。
いや、2度目だったかのぉ……」
だから、みんな怖れて家の中から出て来なかったんだ……
「いえ、ワタシ達も深い霧に迷い込んでしまって……
気付いたらこの町に着いていたんです。」
突然起きた頭痛に導かれて、この町にやって来た……
なんて事は、この際内緒にしておきましょう。
たぶん、誰も信じてくれないでしょうし……
「あの、長老さん。
ひとつ聞きたい事があるのですが、この町の人達は何でみんな “ きぐるみ ” を着ているんですか?」
「あぁ……それはな、この町には『きぐるみ信仰』、『獣着師信仰』が根強く残っているからなのじゃ。
“ キュルミー達の町 ” という意味も込めて、この町を『キュルムの町』と名乗っているほどなのじゃよ……」
だから、『キュルム』の町って名付けたんですね。
「この町は一度、後に『白い巫女』と呼ばれ英雄と讃えられたあるお方によって壊滅の危機から救って頂いているのじゃよ。
その時の、あのお方の……」
と、長老さんはそこまで喋ってようやく、アカリもガウンの下にきぐるみを着ているのに気付いたみたいです。
「ちょっ、旅のお方、ご無礼をお許しくだされ。
その純白のウサギのきぐるみ、もしや……」
「あっ、このきぐるみですか……?
コレは、『キュイぐるみ』って言って……」
アカリは、借りていた座楽団『かぐら座』のガウンをファサッと脱ぎました。
思わず、長老は手に持ったラム酒の酒ボトルをゴトンと落としてしまいました。
町の人達の視線も、みんな一斉にこの『キュイぐるみ』にくぎ付けです!
「ま、まさか……そんな……見間違うハズもない……
ついに帰って来られたのじゃ……
その『純白のウサギのきぐるみ』を見た時にはもう……」
長老の言葉に合わせて、町の人達が一斉に、
「お帰りなさいませっっっ、キョウコ様っっっ!!!」
……えっ!?
ワタシの姿を見て、お母さんだと思っているんですか?
確かに今、お母さんから譲ってもらった純白のウサギのきぐるみを着てはいますけど……
まさか、この町の人達みんな
『このきぐるみを着てる人=お母さん』
って認識なんですか?
お母さんはお母さんっ、ワタシはワタシですからっ!
そこは思春期の年ごろの女の子、難しいのです。
「皆さん、盛大なカン違いをしちゃってませんか?
皆さんがさっきから仰っているキョウコはワタシのお母さんで、ワタシは娘のアカリと言いますっ!」
すると……しばらくの沈黙の後、町の人達が一斉に、
「えぇぇ~~~っっ!!!」
そして手のひらを返す様な、見事なまでのガッカリ感。
……はいっ、そこっ!
そんな露骨にガッカリしなーいっ!
あんまり露骨過ぎると、傷つきますよぉ……
・「地上界」と「天界」、そしてもうひとつの世界と3つの世界が存在する事
・アマテラスという女神さまが「天界」を創った事
という、とても興味深い伝承話を聞く事が出来ました。
そんな伝承話をなぜお姉さんが知っていたのか、その答えも何となく想像がつきました。
たぶん予想では……あの話の『7人の弾き子達』の末裔のひとりがお姉さんなんだと思います。
でも旅の出会いと別れは一期一会、いつの日かお姉さんは真相を話してくれるんでしょうか?
いや、たぶん無理でしょう。
この楽器の澄んだ音色みたいに……空に舞ったら溶けて消えるだけですから。
ならば、楽器の音色をじっくりココロに刻み付けようと静かに耳を傾けていたアカリがふと我に返り周りを見回すと……
座楽団を囲む様に、いつの間にかキュルムの町の人達が集まっています。
ワイワイワイ……ガヤガヤガヤ……
右手前では、お互いの肩を組んで酒を呑み交わしています。
音楽はココロの扉を開き、酒は男の友情を育むんです。
ペチャクチャ……キャイキャイ……
左奥では、輪を囲んで女性同士で話に華を咲かせています。
女性は男性と比べて右脳と左脳の橋渡しをする脳梁がブッ太くて、両方の脳をフル活用して “ 思考 ” をブン回す事が出来るので……
だから、女性は一日中でも会話する事が出来ると聞いた事があります。
キュルムの町のお姉さん達も、かぐら座の “ 弾き子 ” の皆さんも、とにかく喋るのが大好きみたいです。
おっとっと……♪おっとっと……♪
向こうでは、酒を呑んで酔っ払った連中がニックと一緒にお馬鹿なダンスを踊っているみたい。
こちらは、酔うと体躯を動かさずにはいられないタイプの皆さんですね。
どいつもこいつもみんな、晴れやかなイイ顔をしているじゃありませんか!
一度打ち解ける事さえ出来れば、後はこんなもんです。
でも何故か、みんな “ きぐるみ ” は着たままなんですが……
アカリ達とかぐら座の皆さんがキュルムの町の人々に歓迎され溶け込む光景を微笑ましく見ていたこの町の長老が、酒を持ってゆらりとこちらにやって来ました。
この町で作られたラム酒の様です。
あ……この酒ボトルにも、あの掲示板で見たものと同じデザインのステッカーが貼ってありますね。
「先ほどはどうもすみませんでしたわい、よくこの町に来る事が出来ましたなぁ!
迷い込む者が年に数人はおるから、その度に追い返しておるんじゃが……
旅のお方の様に、明確にこの町を目指して来る者は初めてだったんじゃ。
いや、2度目だったかのぉ……」
だから、みんな怖れて家の中から出て来なかったんだ……
「いえ、ワタシ達も深い霧に迷い込んでしまって……
気付いたらこの町に着いていたんです。」
突然起きた頭痛に導かれて、この町にやって来た……
なんて事は、この際内緒にしておきましょう。
たぶん、誰も信じてくれないでしょうし……
「あの、長老さん。
ひとつ聞きたい事があるのですが、この町の人達は何でみんな “ きぐるみ ” を着ているんですか?」
「あぁ……それはな、この町には『きぐるみ信仰』、『獣着師信仰』が根強く残っているからなのじゃ。
“ キュルミー達の町 ” という意味も込めて、この町を『キュルムの町』と名乗っているほどなのじゃよ……」
だから、『キュルム』の町って名付けたんですね。
「この町は一度、後に『白い巫女』と呼ばれ英雄と讃えられたあるお方によって壊滅の危機から救って頂いているのじゃよ。
その時の、あのお方の……」
と、長老さんはそこまで喋ってようやく、アカリもガウンの下にきぐるみを着ているのに気付いたみたいです。
「ちょっ、旅のお方、ご無礼をお許しくだされ。
その純白のウサギのきぐるみ、もしや……」
「あっ、このきぐるみですか……?
コレは、『キュイぐるみ』って言って……」
アカリは、借りていた座楽団『かぐら座』のガウンをファサッと脱ぎました。
思わず、長老は手に持ったラム酒の酒ボトルをゴトンと落としてしまいました。
町の人達の視線も、みんな一斉にこの『キュイぐるみ』にくぎ付けです!
「ま、まさか……そんな……見間違うハズもない……
ついに帰って来られたのじゃ……
その『純白のウサギのきぐるみ』を見た時にはもう……」
長老の言葉に合わせて、町の人達が一斉に、
「お帰りなさいませっっっ、キョウコ様っっっ!!!」
……えっ!?
ワタシの姿を見て、お母さんだと思っているんですか?
確かに今、お母さんから譲ってもらった純白のウサギのきぐるみを着てはいますけど……
まさか、この町の人達みんな
『このきぐるみを着てる人=お母さん』
って認識なんですか?
お母さんはお母さんっ、ワタシはワタシですからっ!
そこは思春期の年ごろの女の子、難しいのです。
「皆さん、盛大なカン違いをしちゃってませんか?
皆さんがさっきから仰っているキョウコはワタシのお母さんで、ワタシは娘のアカリと言いますっ!」
すると……しばらくの沈黙の後、町の人達が一斉に、
「えぇぇ~~~っっ!!!」
そして手のひらを返す様な、見事なまでのガッカリ感。
……はいっ、そこっ!
そんな露骨にガッカリしなーいっ!
あんまり露骨過ぎると、傷つきますよぉ……
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