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第1章.母 Ⅱ
015縫.新米の女神様です♡
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朱璃は、魂が急に抜けた様にピクリとも動かなくなったニックが心配で心配で仕方ありません。
「あの……ニックさん?
ニックさんってば……?」
つんつん……ツンツン……
「朱璃、ニックはみんなの代わりに大役を果たしてくれたの。
お父さんの声を届ける、って大役をね。
だから、ニックをそっと寝かせてあげてね……」
京子は優しくニックの頭をイイコイイコしてあげました。
そして、徐ろに朱璃の方へくるりと向き直りました。
「朱璃、大事なお話があるの。
今お父さんが言った言葉の意味、分かる?」
え~っと……と朱璃は人差し指を顎に当てながら考えます。
「『全てを手に入れろ!例え全てを失なう事になろうとも』……でしたっけ?」
京子は、ふるふると首を横に振りました。
「いえいえ、そっちじゃなくて。
そっちは、残念ながら私も見当付かないのよ。」
全てを手に入れろ……何を?
全てを失う……どうして?
私だって、皆目検討が付かないわよ……!
「ワタシが『大天使』であるお父さんと『人間』であるお母さんの間に生まれた女の子……の方ですね?」
そして母は瞳を閉じて……少し俯きます。
暫しそのままの状態から再び瞳を開いて言い放った母の次のひと言に、朱璃は我が耳を疑いました!
「お父さんの言いたい事はね……
つまり、アナタは……『女神』なのよ、朱璃!
って言うか……正確に言えば『人間』でもあり『女神』でもある、“ 半人半神 ” なのが今のアナタの状態なの。
だからこそ……『女神』であるアナタを身籠っていたからこそ、『人間』である私でも『天界』に入る事が出来たのよ!」
朱璃は、思わず息を呑みました。
つまり、ワタシは……『人間』では無いって事なんですかね……?
「つまり、ワタシには……半分『女神』って神サマの血も入っているって事ですか?
……ふざけないで下さい!!!」
人間の女の子が、ある日を境に『女神』として共に闘う仲間達と生きる事を余儀なくされる、というアニメを朱璃も見た事があるのですが……
“ 神衣 ” を纏って闘うその子を見て、あくまでこのアニメは現実にはあり得ないフィクションだと今まで割り切っていました。
だから、朱璃にとっていきなり母から宣告されたこの現実は……
とてもではありませんが、そのまますんなり受け入れられるモノではなかったんです。
「死んだと思っていたお父さんが実は生きていて、『大天使』っていう神サマでした?
余りにも話がブッ飛び過ぎていて、いきなり言われても何を証拠にそれらの話を信じればいいか分からないじゃないですか!」
でも本音は、全てを認めて今すぐにでもお父さんを探しに行きたい……
でも、全てを認めちゃうと自分の中のアイデンティティーが音を立てて崩れ去り、自分が自分で無くなっちゃうかも知れない……
朱璃は、そんな葛藤の中にいました。
「朱璃、確かにこの世界では荒唐無稽なお話よね。
でもね……
『異世界』っていう、この世界での常識が通用しない世界も確かに存在するの。
アナタも散々見て来たでしょ、ゴブリンみたいな普通の人には視えない生き物を?」
えっ、お母さん……知っていたんですか?
ワタシが2度に渡り、ゴブリンと接触していた事を。
「それに、もっと決定的な証拠が欲しければ、そこでキューってのびて寝てる子がいるじゃない……?」
京子が指す指の先を見てみると……ナルト目になっているニックの姿が。
確かに、ニックはフェアリーバード……
この世には存在しない生き物です。
朱璃、アナタはそんな事くらいで自身を見失う様な、そんな弱い女の子じゃないわ……
さあ……私がもうひと押し、背中をポンと押してあげるからね……
「朱璃……アナタが知りたがっている答えは、たぶんお父さんが知ってるハズよ。
だってお父さんもアナタと同じ “ 半人半神 ” の存在から大天使になったんですもの。」
そして、京子はその流れから朱璃を後ろから抱き締めて言いました。
「朱璃、お父さんを探しに行きなさい。
その為のサポートとして、私も手伝ってあげるからね。
朱璃……お父さんに会いたいんでしょ?」
朱璃はもう限界でした。
これ以上、自分のココロにウソは付けません。
朱璃は涙をポロボロ流しながら、
「ワタシ、お父さんに会いたいよぉ……
もう2度と会えないって思っていたお父さんが今も生きているって分かった時からずっと……
お父さんにひと目会って、抱き締めてもらいたいんです……」
京子は、そんな号泣する朱璃を優しく胸で抱き締めます。
「もう……分かっていたわよ、朱璃。
最初からずっとね。
だから、キュイぐるみも、ニックも、全てアナタに託したんじゃない。
朱璃……アナタは私の自慢の娘よ。」
いえ、アナタの潜在能力はかつて『白い巫女』と呼ばれた私の全盛期を凌駕するモノになるハズよ……
だって、アナタは “ キュルミーの能力が使える『女神』さま ” なんだからね……
そして、その能力をアナタに身につけさせる事こそが……
魔物に襲われる確率が高いアナタの為に『譲渡の儀式』を急がせた、本当の理由なの!
この能力が、きっとアナタをお父さんの許へと繋げてくれるわ。
これからも、路に迷った時は己のココロに従うのよ、朱璃……
「あの……ニックさん?
ニックさんってば……?」
つんつん……ツンツン……
「朱璃、ニックはみんなの代わりに大役を果たしてくれたの。
お父さんの声を届ける、って大役をね。
だから、ニックをそっと寝かせてあげてね……」
京子は優しくニックの頭をイイコイイコしてあげました。
そして、徐ろに朱璃の方へくるりと向き直りました。
「朱璃、大事なお話があるの。
今お父さんが言った言葉の意味、分かる?」
え~っと……と朱璃は人差し指を顎に当てながら考えます。
「『全てを手に入れろ!例え全てを失なう事になろうとも』……でしたっけ?」
京子は、ふるふると首を横に振りました。
「いえいえ、そっちじゃなくて。
そっちは、残念ながら私も見当付かないのよ。」
全てを手に入れろ……何を?
全てを失う……どうして?
私だって、皆目検討が付かないわよ……!
「ワタシが『大天使』であるお父さんと『人間』であるお母さんの間に生まれた女の子……の方ですね?」
そして母は瞳を閉じて……少し俯きます。
暫しそのままの状態から再び瞳を開いて言い放った母の次のひと言に、朱璃は我が耳を疑いました!
「お父さんの言いたい事はね……
つまり、アナタは……『女神』なのよ、朱璃!
って言うか……正確に言えば『人間』でもあり『女神』でもある、“ 半人半神 ” なのが今のアナタの状態なの。
だからこそ……『女神』であるアナタを身籠っていたからこそ、『人間』である私でも『天界』に入る事が出来たのよ!」
朱璃は、思わず息を呑みました。
つまり、ワタシは……『人間』では無いって事なんですかね……?
「つまり、ワタシには……半分『女神』って神サマの血も入っているって事ですか?
……ふざけないで下さい!!!」
人間の女の子が、ある日を境に『女神』として共に闘う仲間達と生きる事を余儀なくされる、というアニメを朱璃も見た事があるのですが……
“ 神衣 ” を纏って闘うその子を見て、あくまでこのアニメは現実にはあり得ないフィクションだと今まで割り切っていました。
だから、朱璃にとっていきなり母から宣告されたこの現実は……
とてもではありませんが、そのまますんなり受け入れられるモノではなかったんです。
「死んだと思っていたお父さんが実は生きていて、『大天使』っていう神サマでした?
余りにも話がブッ飛び過ぎていて、いきなり言われても何を証拠にそれらの話を信じればいいか分からないじゃないですか!」
でも本音は、全てを認めて今すぐにでもお父さんを探しに行きたい……
でも、全てを認めちゃうと自分の中のアイデンティティーが音を立てて崩れ去り、自分が自分で無くなっちゃうかも知れない……
朱璃は、そんな葛藤の中にいました。
「朱璃、確かにこの世界では荒唐無稽なお話よね。
でもね……
『異世界』っていう、この世界での常識が通用しない世界も確かに存在するの。
アナタも散々見て来たでしょ、ゴブリンみたいな普通の人には視えない生き物を?」
えっ、お母さん……知っていたんですか?
ワタシが2度に渡り、ゴブリンと接触していた事を。
「それに、もっと決定的な証拠が欲しければ、そこでキューってのびて寝てる子がいるじゃない……?」
京子が指す指の先を見てみると……ナルト目になっているニックの姿が。
確かに、ニックはフェアリーバード……
この世には存在しない生き物です。
朱璃、アナタはそんな事くらいで自身を見失う様な、そんな弱い女の子じゃないわ……
さあ……私がもうひと押し、背中をポンと押してあげるからね……
「朱璃……アナタが知りたがっている答えは、たぶんお父さんが知ってるハズよ。
だってお父さんもアナタと同じ “ 半人半神 ” の存在から大天使になったんですもの。」
そして、京子はその流れから朱璃を後ろから抱き締めて言いました。
「朱璃、お父さんを探しに行きなさい。
その為のサポートとして、私も手伝ってあげるからね。
朱璃……お父さんに会いたいんでしょ?」
朱璃はもう限界でした。
これ以上、自分のココロにウソは付けません。
朱璃は涙をポロボロ流しながら、
「ワタシ、お父さんに会いたいよぉ……
もう2度と会えないって思っていたお父さんが今も生きているって分かった時からずっと……
お父さんにひと目会って、抱き締めてもらいたいんです……」
京子は、そんな号泣する朱璃を優しく胸で抱き締めます。
「もう……分かっていたわよ、朱璃。
最初からずっとね。
だから、キュイぐるみも、ニックも、全てアナタに託したんじゃない。
朱璃……アナタは私の自慢の娘よ。」
いえ、アナタの潜在能力はかつて『白い巫女』と呼ばれた私の全盛期を凌駕するモノになるハズよ……
だって、アナタは “ キュルミーの能力が使える『女神』さま ” なんだからね……
そして、その能力をアナタに身につけさせる事こそが……
魔物に襲われる確率が高いアナタの為に『譲渡の儀式』を急がせた、本当の理由なの!
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