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第3章.地上界編
第44話.「ジョブ大全」とは(その1)
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フィリルは、シェリルとサクラを丸いテーブル、いや『ジョブ大全』の前に連れて行きます。
「さて、まずはどうして朝早くからワタシ達グレイシア一族を全員招集かけたのか……
ちゃんと説明して貰いましょうねぇ~?」
今シェリルの目の前にいるのは、いつものふんわりポワポワしているフィリル母さんではありません。
威厳も才知も兼ね備えた女傑、六大名家のひとつグレイシア家当主フィリル=グレイシアなんです!
「この件に関しては、私から説明させて頂くわ。」
そう口を挟んだのは、キョウコです。
キョウコが頷くと、シェリルとサクラもコクンと頷き返します。
詳しい説明は全てキョウコおばあちゃんに一任する、という意志表示でしょうか?
『確かに、オトナの話し合いにボク達コドモは口を挟むべきじゃないよね。』
『そうよね、シェリルくん。』
事前に、2人で念話のやり取りを交わしていたんです。
全く聞き分けのいい、デキた子達です。
念話が筒抜けのリフィおばさんも、ニッコリ微笑んでいます。
「今回お集まり頂いたのは、フィリルにも深く関係している事なの。
ついさっき、私の家で『禁忌』の力が再び活性化したのよ!」
静かに聞いていた、フィリルの右眉がピクッと上がります。
「今回、『禁忌』の力に侵されたのは私の息子、サクラの兄のカズマなの。
フィリル、貴女の時と同じで霊体が肉体から無理やり剥がされかけているのよ。」
「まさか、それって……」
「唯一『禁忌』の力から生還したフィリルならそれについて発生原因とか何らか情報を持っているかも知れないって思って、グレイシア家の皆さんに協力を仰ぎに来たのよ。」
「確かに、異変が起きた時点でココに来て最適解でしたわ。
さすがキョウコ様よねぇ~。
キョウコ様、サクラさん、シェリル、コレを見てくれない?」
フィリルは『ジョブ大全』を捲り、3人にあるページを見せます。
【禁忌とは】──────────
禁忌とは、地上界に生きているモンスターがもともと有する力では無く、『外の世界から持ち込まれた力』を指す。
────────────────
【禁忌スキルとは】───────
禁忌スキルとは、『禁忌の力に侵されたスキル』を指す。
今までに数例しか確認されていない為、幻のスキルと呼ばれている。
禁忌スキルは自然スキルと違い、必ず二次的被害が存在する。
二次的被害として、以下の事例が現在までに報告されている。
・対象者の生命力を著しく脅かす
・地上界に存在する時空間を歪に捻じ曲げる
・解除不能な呪いにより地上界がパンデミック状態になる
《表記方法》『レア度:禁忌』
────────────────
グレイシア家の最長老、カメルじいさんが口を開きました。
「3人とも、この『禁忌』関連の項目を見てくれんかの。
『禁忌スキル』の二次的被害に “ 対象者の生命力を著しく脅かす ” とあるじゃろ?
今回、かつてのフィリルとカズマさんに共通して該当する項目がコレなんじゃ。」
『ジョブ大全』は、表紙が総皮張りで文字に金の刺繍をあしらった分厚い古文書です。
古代言語で記されており、そのままでは読めないのでリフィの手により翻訳が施されています。
さすが、グレイシア軍団の情報分析担当だけあって……
かなりの実力者です。
3人とも、食い付く様にそのページを貪り読んでいます。
チックタック……チックタック……
壁時計の振り子が静かに時を刻み、それに伴い文字盤でダンスを踊る “ 男針 ” と呼ばれる長針、“ 女針 ” と呼ばれる短針が、恋人同士が引き裂かれるみたいに少しずつ遠ざかって行きます。
そして、再び恋人同士が恋慕の情に惹かれ近付いた時……
ボーン!……ボーン!……ボーン!……
あらかた、3人ともページに目を通し終わったみたいです。
カメルはふぅ、とため息をついてヤレヤレと両手を挙げます。
「そこに記されておる通り、もともとは地上界にはないスキルじゃからワシらも対応のしようがないんじゃよ。
だから、キョウコ様もココに来たんじゃろ?
そうでなければ、自分で解決出来る案件じゃからの。」
キョウコは話を聞いて、うんうんと深く頷きます。
「そうなのよねぇ。
実際『白い巫女』の力を持ってしても、手も足も出なかったのよね。」
すると、カメルは髭をシュルルと擦りながら言いました。
「そこで、我がグレイシア軍団のブレーンであるリフィに『禁忌』の力に関してより詳しく調査分析を依頼したんじゃが……」
続いて、リフィがコホンと咳をして言葉を続けます。
「これらのデータを元に、色々な可能性をシミュレートしてみたわ。
でも、いくら考えても “ ひとつの可能性 ” しか見出す事が出来なかったのよ。
それはね、『禁忌』の力に『禁忌』の力をぶつけるっていう方法!
正に文字通り、“ 毒を以て毒を制す ” の!」
本当にソレ、効果あるんですか……?
「たった1例だけどね、ちゃんと実例もあるらしいのよ。
この『ジョブ大全』によればね、
【禁都プルグ】─────────
大昔に『禁忌』の力に侵された者同士2人が力と力をぶつけ合い、その結果ひとつの大都市を焦土へと変貌させてしまった。
それ以来、この大都市は禁都プルグと呼ばれ『禁忌』の力の残滓を恐れて誰も近付かず廃墟化している。
────────────────
なんて記述が残されていたのよね。」
現実問題として、そんなに都合良く『禁忌』の力を有する者が同じ時代に2人以上ブッキングするモノなんでしょうか?
だって『禁忌』の力を有する者は地上界の有史以降、数例しか確認されていないんでしょ?
「さて、まずはどうして朝早くからワタシ達グレイシア一族を全員招集かけたのか……
ちゃんと説明して貰いましょうねぇ~?」
今シェリルの目の前にいるのは、いつものふんわりポワポワしているフィリル母さんではありません。
威厳も才知も兼ね備えた女傑、六大名家のひとつグレイシア家当主フィリル=グレイシアなんです!
「この件に関しては、私から説明させて頂くわ。」
そう口を挟んだのは、キョウコです。
キョウコが頷くと、シェリルとサクラもコクンと頷き返します。
詳しい説明は全てキョウコおばあちゃんに一任する、という意志表示でしょうか?
『確かに、オトナの話し合いにボク達コドモは口を挟むべきじゃないよね。』
『そうよね、シェリルくん。』
事前に、2人で念話のやり取りを交わしていたんです。
全く聞き分けのいい、デキた子達です。
念話が筒抜けのリフィおばさんも、ニッコリ微笑んでいます。
「今回お集まり頂いたのは、フィリルにも深く関係している事なの。
ついさっき、私の家で『禁忌』の力が再び活性化したのよ!」
静かに聞いていた、フィリルの右眉がピクッと上がります。
「今回、『禁忌』の力に侵されたのは私の息子、サクラの兄のカズマなの。
フィリル、貴女の時と同じで霊体が肉体から無理やり剥がされかけているのよ。」
「まさか、それって……」
「唯一『禁忌』の力から生還したフィリルならそれについて発生原因とか何らか情報を持っているかも知れないって思って、グレイシア家の皆さんに協力を仰ぎに来たのよ。」
「確かに、異変が起きた時点でココに来て最適解でしたわ。
さすがキョウコ様よねぇ~。
キョウコ様、サクラさん、シェリル、コレを見てくれない?」
フィリルは『ジョブ大全』を捲り、3人にあるページを見せます。
【禁忌とは】──────────
禁忌とは、地上界に生きているモンスターがもともと有する力では無く、『外の世界から持ち込まれた力』を指す。
────────────────
【禁忌スキルとは】───────
禁忌スキルとは、『禁忌の力に侵されたスキル』を指す。
今までに数例しか確認されていない為、幻のスキルと呼ばれている。
禁忌スキルは自然スキルと違い、必ず二次的被害が存在する。
二次的被害として、以下の事例が現在までに報告されている。
・対象者の生命力を著しく脅かす
・地上界に存在する時空間を歪に捻じ曲げる
・解除不能な呪いにより地上界がパンデミック状態になる
《表記方法》『レア度:禁忌』
────────────────
グレイシア家の最長老、カメルじいさんが口を開きました。
「3人とも、この『禁忌』関連の項目を見てくれんかの。
『禁忌スキル』の二次的被害に “ 対象者の生命力を著しく脅かす ” とあるじゃろ?
今回、かつてのフィリルとカズマさんに共通して該当する項目がコレなんじゃ。」
『ジョブ大全』は、表紙が総皮張りで文字に金の刺繍をあしらった分厚い古文書です。
古代言語で記されており、そのままでは読めないのでリフィの手により翻訳が施されています。
さすが、グレイシア軍団の情報分析担当だけあって……
かなりの実力者です。
3人とも、食い付く様にそのページを貪り読んでいます。
チックタック……チックタック……
壁時計の振り子が静かに時を刻み、それに伴い文字盤でダンスを踊る “ 男針 ” と呼ばれる長針、“ 女針 ” と呼ばれる短針が、恋人同士が引き裂かれるみたいに少しずつ遠ざかって行きます。
そして、再び恋人同士が恋慕の情に惹かれ近付いた時……
ボーン!……ボーン!……ボーン!……
あらかた、3人ともページに目を通し終わったみたいです。
カメルはふぅ、とため息をついてヤレヤレと両手を挙げます。
「そこに記されておる通り、もともとは地上界にはないスキルじゃからワシらも対応のしようがないんじゃよ。
だから、キョウコ様もココに来たんじゃろ?
そうでなければ、自分で解決出来る案件じゃからの。」
キョウコは話を聞いて、うんうんと深く頷きます。
「そうなのよねぇ。
実際『白い巫女』の力を持ってしても、手も足も出なかったのよね。」
すると、カメルは髭をシュルルと擦りながら言いました。
「そこで、我がグレイシア軍団のブレーンであるリフィに『禁忌』の力に関してより詳しく調査分析を依頼したんじゃが……」
続いて、リフィがコホンと咳をして言葉を続けます。
「これらのデータを元に、色々な可能性をシミュレートしてみたわ。
でも、いくら考えても “ ひとつの可能性 ” しか見出す事が出来なかったのよ。
それはね、『禁忌』の力に『禁忌』の力をぶつけるっていう方法!
正に文字通り、“ 毒を以て毒を制す ” の!」
本当にソレ、効果あるんですか……?
「たった1例だけどね、ちゃんと実例もあるらしいのよ。
この『ジョブ大全』によればね、
【禁都プルグ】─────────
大昔に『禁忌』の力に侵された者同士2人が力と力をぶつけ合い、その結果ひとつの大都市を焦土へと変貌させてしまった。
それ以来、この大都市は禁都プルグと呼ばれ『禁忌』の力の残滓を恐れて誰も近付かず廃墟化している。
────────────────
なんて記述が残されていたのよね。」
現実問題として、そんなに都合良く『禁忌』の力を有する者が同じ時代に2人以上ブッキングするモノなんでしょうか?
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