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きぐるみんZ

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第3章.地上界編

第41話.『黒い影』の恐怖!(その1)

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 どうやら、フィリルの『無限探査インフィニティ』の制限時間が切れたみたいです。

「この一帯に巣食うモンスター達を一網打尽に出来たし……
シェリルがひと皮剥けたのも見れたし……
京子に誘われて見に来て良かったわ。
じゃ、私これで帰るわねぇ~。」

 それだけ言い残し、フィリルの“ 精神体 ” はシュワワ……っと霧の様になって消えて無くなったんです。

「シェリルさん、ひとつお話に付き合ってくれんかね?
桜も、心して聞きなさい。」

 京子は桜とシェリルを縁側に連れて行き、京子を中心に3人で腰掛けました。
京子が桜とシェリルの間に座ったって事は、ちゃんと最後まで聞いて欲しい大事な話なんでしょうか?

「こちら人間の世界では、魂は “ 心臓 ” に宿っていて、そこから発せられる気の事を『霊気』、それを糧にした力の源を霊力って言うの。
それに対して、向こうの地上界では魂はこちらでいう心臓に当たる “ 魔核 ” に宿っていて、そこから発せられる気の事を『魔気』、それを糧にした力の源を魔力って言うのよ。
言い方は違うけど、意味合いは同じね。」

 そして、京子は夜空を見上げます。

「この一帯にいるモンスター達にとって、私や和諒、桜の純度の濃い霊力はまるで灯台の様に暗闇を照らすのか、みんなココに向かって集まって来るのよ。
特に、桜のは生まれつき膨大なのよ!
だから、家族の誰よりも桜を守る必要があるのよ。
だからシェリルさん、貴方が桜を一生守りたいって言ってくれた事には凄く感謝しているのよ。
だって、桜を守るのが私達だけではそろそろ限界な所まで来ていたもの……」

 そう言って、京子はペコリとお辞儀をします。
本当に切羽詰まっていたんでしょう、安堵した祖母の顔です。

「これからも桜の事、宜しくお願いしますね。」

「はい……分かりました。」

 だけど今はまだ、確約は出来ません。
ダダ甘♡状態の桜ではなく、何も包み隠さない素の状態の時に愛の言葉を囁いてくれる日が来るまでは……

 一番最後に、桜のお兄さんに闇冥撃を放った時に感じたあのドロッとした感覚……
お兄さんは何も感じなかったみたいだけど、この世のものとは思えないくらい、まるで魂を鷲掴みにされたみたいなあの不気味な感覚はナニ……?

 いくら考えても、1人だけで答えまで辿り着くのは無理そうですね。
知っていて、なおかつ助力を仰げる人を探さないと……でもそんな人、この世に存在するんでしょうか?

 今まで見かけたどのスキルとも違うし……
しかもアレ、まるで “ 自分の意思 ” で闇冥撃に割り込んで来た様な……?

「シェリルさん、私も今日から貴方の義祖母おばあちゃんになるって決めたわ!
まだ、ちょっと ( 桜と結婚するまで ) 気が早いかしら?
困った事があったら、何でもおばあちゃんに相談してね!」


 ボクが悩んでいるのを、何となく察したんでしょうか……?
でもこの場では、一番頼りになる人です!


「さっそくですけどお祖母ちゃん、教えて欲しい事があるんです!
『自らの意思を持つスキル』って聞いた事ありませんか?
ココロ当たり、ありませんか?」

 京子には、実際心当たりがありました。
言わば、『白い巫女』時代の “ 負の遺産 ” です。
しかし、それを解決するにはあまりに歳を取りました。
なので、何も知らないフリしてシェリルと桜にウインクをしながらこう言ったんです。

「ごめんなさいね、人間の世界では『すきる』って概念が無いから分からないわ。
でも、もしその『すきる』……ってモノが仮にシェリルさんの住む地上界から来た “ 新種 ” だったとしたら……
シェリルさんなら、次にどういうアクションを起こすね?」

 京子のその問いに、シェリルと桜はお互いの顔を見て声を揃えます!

『スキルの種類に詳しい人に当たってみる!』×2

 どうやら2人には、思い当たる節のある人がいたみたいです。
京子は敢えて正解は言わず、解決方法を導き出させるのが上手いんです。

この事は、シェリルさんと桜……
若い世代に任せましょう……





 数刻後、和諒の部屋にて……

「お兄さん、体調はいかがですか?」

「おぅ、シェリルとさっくーかぁ。
大丈夫!……と言いたい所なんだがな、1ヶ所だけ治りの悪い傷があってな……」

 そう、それはあの時闇冥斬を白桐の棒で受け止めた時に出来た傷なんです。
棒で受け止めたので胸には傷を受けなかったんですが、棒を支えた手の部分……
正確に言うと左腕の手首の下に黒く傷痕が残っていたんです。

「お兄ちゃん、ユキちゃんを呼んで来ようか?」

「あぁ、さっくー、頼むわ。」

 シェリルと桜は、ユキちゃんを呼びに退室します。
でもこの傷が、まさかあんな事件を引き起こす事になるなんて……



 シェリルと桜の退室と入れ違いに、今度はユキちゃんが入って来て……
和諒は左腕の傷を、ユキちゃんに回復魔法をかけてもらいます。

「いつも悪りいな、ユキちゃん。」

「いえいえ、ボクはキョウコ様のテイムちゃんですから。
キョウコ様のご家族の方にトコトン尽くすのは当たり前ですコン。」

「そう言えば昔、回復魔法を限界までかけ過ぎてよくぶっ倒れてたってばあやが言ってたぜ!
無理、するなよ?」

 和諒とユキちゃん、2人でクククッと笑います。
ユキちゃんは昔、ワーカーホリック体質だったんです。
でも、今はそれを昔話と笑い合える程に回復しています。

 おや?ユキちゃんの後ろを今、黒い影がズズッズズッと……

「おや、誰か来たのかな?」

「えっ、誰もいないですコン……?」

 ユキちゃんは、振り向いてみました。


















しかし、誰の姿も見えません。

「湿布と包帯の予備を持って来ますコン!」

 そう言って、ユキちゃんはテテテ……と退室したんです。



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