ダダ甘♡ワードオーダー

第2章.日本編

第28話.コン耳巫女娘です♡(その2)

　シェリルは人魚さんの力を借りて、桜をお姫さま抱っこしたまま玄関に上がりました。

「じゃあ、桜様の体力を回復させるコン！」

　ユキは、垂れ下がった桜の手をキュッと握って治癒魔法をかけます。


「わぁ、この若草色の絨毯ってスゴく足触りがイイよね！」

　シェリルはムギュムギュと踏んで、足の裏の感触を確かめます。

「これは、絨毯じゃなくて “ 畳 ” って言うのよ。
湿気を吸い取ってくれるし、保温性もバツグンなの！
夏はヒンヤリ冷たくて、冬は暖かいのよ。
だから、これが無いと日本では暮らしにくくてねぇ。」

　そしてパチッと裸電球をつけ、京子とユキは改めてシェリルの顔をまじまじと見てみます。

「シェリルさんって、ホント面影がフィリルそっくりなのね……」

「えぇ、だからボクも初めてシェリル様のお顔を拝見した時にフィリル様と間違えてしまいましたコン！」


　すると握りしめていた手から流し込んでいたユキの治癒魔法が効いて来たのか、シェリルの腕の中で桜の目が醒めた様です。
ほけ……とした目で、桜は周りの状況を確認します。

京子を見て……
次に、ユキを見て……
そして、女の子座りをしている人魚さん……
最後に、自分をお姫さま抱っこしているシェリル……
……えっ、お姫さま抱っこ？？？

　桜は、ハッと我に返って頬をほんのり赤く染めます。
そして、慌ててお姫さま抱っこから降りてシェリルと京子に言いました。

「あらヤダ、ワタシったら！
おばあちゃん、今日はどうしてもシェリルくんに会って欲しくて連れて来たのよ！」

　桜はそれだけ言い、ユキを引き連れ恥ずかしそうにトタトタ……と台所の奥へと消えて行きました。


　しばらくすると、桜は3人分のコップと湯呑みに入れたお茶を、ユキはお茶菓子を、それぞれお盆で運んで来ました。
京子には湯呑み、シェリルと自分と人魚さんにはコップ……
そして桜はシェリルの隣に、ユキは京子の隣にそれぞれ座りみんなで楽しく談笑します。

「それでね、おばあちゃん、ワタシとシェリルくんの馴れ初めはね……」


　するとユキがシェリルの所に来て、スリスリとスキンシップを求めて来ます。

チラ♡……チラ♡……

　しかも、チラチラこっちを見ながらポッと頬を染めています！


　えっ、もしかしてボクのせいでこの子までダダ甘♡モードに……？


　でも、甘え方がちょっと独特なんです。
シェリルの目の届く所で、寝そべって両肘を畳に付きながら顎を両手のひらに乗せるんです。
そのポーズのまま……

コンコンコンコン♪（コロコロコロコロ……）

と可愛くローリングしてアピールして来るんです！

「あ、カワイイよ、それ！」

　ワタシも仲間に入れて！と桜もローリングに参戦します。

コンコンコンコン♪（コロコロコロコロ……）
ニャンニャンニャンニャン♪（ゴロゴロゴロゴロ……）


　うわぁ、この流れは間違い無く『巻き込み系』だぁ……！


　でも、頭では分かっているんだけどついつい身体がウズウズと……

「よしっ、ボクも行っちゃおっと♪」

　こうして3人でローリング遊びでゴロゴロしているのを湯呑みでお茶を飲みながら、京子と人魚さんは微笑ましく見ています。
いや、京子はうっすらと涙も浮かべている様です。


　ユキ、貴女がこの家に来たばかりの時は精神が不安定で「ワーカホリック症状」を患っていたのよね。
第1次キュルミー大戦の最中に私がユキをテイムして、親子同然の様に暮らしていたのに……
大戦が終わると同時に、私と生き別れの憂き目に会ってしまったから……

　貴女も、淋しさにココロが堪えられなくなってしまった末に……
再会した時には、貴女はすっかり変わってしまっていたのよ。