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Chapter5 女忍者はつらいよ
Chapter 5-5
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コタローの言葉に、マゼラスはわなわなと身体を震わせる。
「余を倒す、と言ったか貴様。どこまでも余を愚弄するつもりか……!! ええい、かかれ!!」
「グオオオオオオ!!」
マゼラスの号令で、コボルトナイトたちが咆哮とともに斬りかかってくる。
が、次の瞬間にはコタローと彼奴らの立ち位置は入れ替わっており、彼奴らは無数の裂傷から血を噴き出して倒れた。
「なっ……!!」
驚愕するマゼラス。たじろぐ残ったコボルトナイトたち。マゼラスは歯ぎしりをして、片手を振り上げる。
「ひ、怯むな! かかれ! かかれぇぃ!!」
号令を受け、続々と襲いかかってくるコボルトナイトたちだが、そのことごとくが目にもとまらぬ速さで斬り伏せられていく。
そうして光の粒となって消えていく彼奴らをくぐり抜け、コタローはマゼラスの眼前に肉薄する。
「あとはあんただけだね」
「くっ……!! 舐めるなぁ!!」
マゼラスが指を鳴らすと、コタローの足元から槍ぶすまが突き出す。が、コタローはこれをバク転で回避。続けて繰り出される槍ぶすまのすべてを避けて後退する。
「ふははは!! 余に近付けるものなら近付いてみよ!!」
マゼラスは槍を一本手に取り、吼える。
なるほど。これは確かに突破は容易ではなく、安易に上から攻めようとすればマゼラス自身の持つ槍の餌食となるだろう。なかなか考えられている。
だが。
コタローは刀を鞘に戻す。
「こういうのは予想してないだろ?」
腰を深く落として構え、鞘から刀を抜き放つ。
――スキル【真空斬り】。
抜き放った刃から生じた剣戟を象った衝撃波により、槍ぶすまはそのすべてを斬り刻まれた。
そして次の瞬間には、コタローの姿はマゼラスの眼前にあった。
――スキル【瞬動】。
「終わりだ」
コタローは下から逆袈裟に斬り上げる。脇腹から肩までを切り裂かれたマゼラスは、断末魔の叫びを上げて、その場に倒れた。
「ぐおおおお……!! 余が、負ける、だと……!?」
マゼラスの身体が光の粒となって消えていく。最後まで信じられないという形相のまま、マゼラスは消え去った。
「やった、のか」
「女忍者さん。そっちも終わり?」
「ああ……。しかしあのバケモノをやれるとは……。お前、私と戦ったときは本気じゃなかったな?」
「え? あ。あ、うん。ひ、人との戦い方がわかんなくて……」
「ふうん……。まあいい。とにかく、さっさと引き上げるぞ」
そのまま二人は最上階へ向かった。
最上階には大きな鏡があり、その鏡が光り輝いていた。女忍者に促され、コタローは鏡に手を触れた。すると、鏡がさらに強い光を放ち、コタローの目の前が真っ白になった。
そして次に目を開けたとき、そこはコタローの部屋の中だった。
ふう、とコタローはひとまず戻ってこれたことに安堵する。
ガラッと音がして、見やれば女忍者が窓から出ていこうとしていた。
コタローはそんな彼女に声をかける。
「ありがとうございました。……どうして、助けてくれたんですか?」
「……どうしてだろうな。放っておけばよかったものを。お前はあれくらい、一人でなんとかしてしまっていたんだろう?」
「ええ、まあ」
「ふん。だろうな。……しかしあのときは、気が付けば身体が勝手に動いていた」
「そういうもんですか」
「みたいだな。まあそういうわけだ。この件はこれで終わりにしよう。……次に会ったときは、この脇腹の借りを返させてもらう」
「ええ、いつでも」
「ふん。じゃあな」
と、女忍者は屋根の上を跳んで行ってしまった。
時間経ってるとはいえ、脇腹かっさばかれてよくあんなに動けるなー。などと吞気なことを考えるコタローであった。
「余を倒す、と言ったか貴様。どこまでも余を愚弄するつもりか……!! ええい、かかれ!!」
「グオオオオオオ!!」
マゼラスの号令で、コボルトナイトたちが咆哮とともに斬りかかってくる。
が、次の瞬間にはコタローと彼奴らの立ち位置は入れ替わっており、彼奴らは無数の裂傷から血を噴き出して倒れた。
「なっ……!!」
驚愕するマゼラス。たじろぐ残ったコボルトナイトたち。マゼラスは歯ぎしりをして、片手を振り上げる。
「ひ、怯むな! かかれ! かかれぇぃ!!」
号令を受け、続々と襲いかかってくるコボルトナイトたちだが、そのことごとくが目にもとまらぬ速さで斬り伏せられていく。
そうして光の粒となって消えていく彼奴らをくぐり抜け、コタローはマゼラスの眼前に肉薄する。
「あとはあんただけだね」
「くっ……!! 舐めるなぁ!!」
マゼラスが指を鳴らすと、コタローの足元から槍ぶすまが突き出す。が、コタローはこれをバク転で回避。続けて繰り出される槍ぶすまのすべてを避けて後退する。
「ふははは!! 余に近付けるものなら近付いてみよ!!」
マゼラスは槍を一本手に取り、吼える。
なるほど。これは確かに突破は容易ではなく、安易に上から攻めようとすればマゼラス自身の持つ槍の餌食となるだろう。なかなか考えられている。
だが。
コタローは刀を鞘に戻す。
「こういうのは予想してないだろ?」
腰を深く落として構え、鞘から刀を抜き放つ。
――スキル【真空斬り】。
抜き放った刃から生じた剣戟を象った衝撃波により、槍ぶすまはそのすべてを斬り刻まれた。
そして次の瞬間には、コタローの姿はマゼラスの眼前にあった。
――スキル【瞬動】。
「終わりだ」
コタローは下から逆袈裟に斬り上げる。脇腹から肩までを切り裂かれたマゼラスは、断末魔の叫びを上げて、その場に倒れた。
「ぐおおおお……!! 余が、負ける、だと……!?」
マゼラスの身体が光の粒となって消えていく。最後まで信じられないという形相のまま、マゼラスは消え去った。
「やった、のか」
「女忍者さん。そっちも終わり?」
「ああ……。しかしあのバケモノをやれるとは……。お前、私と戦ったときは本気じゃなかったな?」
「え? あ。あ、うん。ひ、人との戦い方がわかんなくて……」
「ふうん……。まあいい。とにかく、さっさと引き上げるぞ」
そのまま二人は最上階へ向かった。
最上階には大きな鏡があり、その鏡が光り輝いていた。女忍者に促され、コタローは鏡に手を触れた。すると、鏡がさらに強い光を放ち、コタローの目の前が真っ白になった。
そして次に目を開けたとき、そこはコタローの部屋の中だった。
ふう、とコタローはひとまず戻ってこれたことに安堵する。
ガラッと音がして、見やれば女忍者が窓から出ていこうとしていた。
コタローはそんな彼女に声をかける。
「ありがとうございました。……どうして、助けてくれたんですか?」
「……どうしてだろうな。放っておけばよかったものを。お前はあれくらい、一人でなんとかしてしまっていたんだろう?」
「ええ、まあ」
「ふん。だろうな。……しかしあのときは、気が付けば身体が勝手に動いていた」
「そういうもんですか」
「みたいだな。まあそういうわけだ。この件はこれで終わりにしよう。……次に会ったときは、この脇腹の借りを返させてもらう」
「ええ、いつでも」
「ふん。じゃあな」
と、女忍者は屋根の上を跳んで行ってしまった。
時間経ってるとはいえ、脇腹かっさばかれてよくあんなに動けるなー。などと吞気なことを考えるコタローであった。
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