身長差38センチもある後輩・白河真雪くんが隙あらば過保護に溺愛してきます

誕生日にはサプライズ（最終章）－2

　暴行罪もプラスされた宮城さんは執行猶予付きの懲役刑と、罰金、追徴金の支払いと、草野部長の奥様からも不倫の慰謝料請求を受けていると噂されている。

　草野部長も宮城さんと同じように懲罰と罰金と追徴金の有罪判決を受け、奥様とは離婚したらしい。

　それだけでなく草野部長や宮城さんは、ネット上でも叩かれる。
　昔レイエスフーズの社員だったって人が、草野部長から受けたひどい嫌がらせを書き込んで注目を集め、宮城さんのことは大学時代のミスコン写真と共に誹謗中傷の言葉が並んだ。

　和田社長と一緒に逮捕された専務は、不正をするよう社長に強要されたと無実を訴えたが、捜査の結果2人とも起訴され、和田社長には実刑判決が下る。

　レイエスフーズの話題が、しばらくの間テレビやネットニュースを席巻し、事態が収まるまでに時間がかかった。

　真雪くんのおじいちゃんである白河会長は、取引のあった会社へ謝罪して回り、あらゆる企業に社員ごとレイエスフーズを買い取ってもらうようにお願いしていた。

　実は数年前から心臓を患っていた白河会長は、無理をしたためか病状が悪化して病院へ入院され、今ではお一人で歩くことも難しい。

　レイエスフーズは事業を分割して様々な他社へ売却し、製品工場などは違う会社の看板が掛け直された。

　残された社員は、基本的に同じ場所でそれぞれ違う会社から雇用されることになり、契約社員や派遣社員は解雇。
　これまでお世話になった先輩たちとも離れ離れになった。

　そして、社長の息子である和田さんは結局ヘッドハンティングを受けていた会社を断って、レイエスフーズの事後処理に尽力した。

「オレって、自分から貧乏くじを引くタイプなんだよな。
　結局、豊崎とよさき先輩が一番の勝ち組かもしれん」

　テレビで事件のことを見た豊崎グループ長が、心配して和田さんに電話をかけてくれたそうだ。
　豊崎グループは退職されてから、実家のリンゴ農園で元気に働いていると聞いて、私たちは安心する。

「豊崎先輩、リンゴ農園を手伝いに来てくれてた農業大学の女子大生と来年結婚するんだって」

　和田さんが言ったことに、真雪くんも私もひっくり返るくらいビックリした。

　結婚のお祝いを贈ったら、お返しの品と共に、満面の笑顔で寄り添っている豊崎グループ長と、素朴そうな可愛いお嫁さんの写真も入っていた。
　『大変だろうけど、紅くれないと白河なら必ず乗り越えられる、ガンバレ！』とのメッセージに、真雪くんと一緒に微笑みあう。


「……オレも結婚しようかなぁ」

「晃平こうへいさんは、チャラそうに見えて、本当にチャラいところがダメなんじゃないですか？　
　もう30なんだから、いい加減落ち着きなよ」

　豊崎グループ長の写真を見ながらつぶやいた和田さんに、真雪くんが諭さとすように肩をポンポンと叩く。

「うっせぇ、桃ちゃんのストーカーめ」

　わちゃわちゃしている2人を見ると、こんなに仲良くなるとは思わなかったと不思議な気もする。