138 / 156
意外な協力者ー1
しおりを挟む
真雪くんと和田さんは、意外と気が合うみたいだった。
お互いに会長の孫、社長の息子って一線引かれるような感じがなくて、素で話せるらしい。
駅までの道を歩きながら、ちょっとふらつく和田さんは気分が良さそうだ。
「真雪も『こうへいお兄ちゃん』って呼んでいいんだぞ」
「は? 何言ってるんですか、晃平おじさん」
まさか真雪くんがこんなノリのいい返しをするとは思わなくて、ちょっとビックリした。
「オレはまだ20代なんだからな、オジサンじゃないぞ」
オジサンなんて言われた和田さんは、言葉とは裏腹に嬉しそうに笑う。
「抱きつかないでくださいよ」
真雪くんも和田さんがヘッドロックしようとするのを避けているが、その表情は楽しそうだ。
「本当に兄弟みたいでいいなぁ」
ポツリとつぶやいた言葉に、和田さんが反応する。
「桃ちゃんにも、やってあげようか?」
ニヤニヤした顔で、私に抱きつこうとする和田さんを制して、真雪くんがキレた。
「桃花に触るな、セクハラで訴えるぞ」
即座に私を抱きしめて、和田さんを睨む。
「ウソウソ、冗談じゃん。本当に真雪って面白いな。
じゃあまたな」
「和田さん、ごちそうさまでした」
爽やかに笑って真雪くんの肩に手を置いた和田さんは、私たちとは違う路線の方へと別れた。
「……悪い人じゃなさそうだね」
「うん、根はいい人だから」
私たちも手を繋いでマンションへと帰り、これからのことを話し合った。
転勤がある会社だし、『行け』と言われれば、九州だろうが外国だろうが行かなければならない。
真雪くんが会社を辞めたら、私がこのまま本社に残れるかもしれないって言うのも本当かどうかわからない。
私がもし和田社長の立場なら……、私みたいな平社員は本社じゃなくても遠くの支社に飛ばしていた方が、きっと目障りじゃないと思う。
「転勤の話、すぐに言えなくてごめん」
真雪くんに福岡へ転勤することを言おうと思っていたけど、言い出す勇気が出なかったかもしれない。
今日和田さんが言ってくれてよかったのかも。
真雪くんの部屋のシンプルな黒いソファーに横に並んで座り、自然と手を握り合った。
「俺さ、桃花と仕事をするまでこの会社のことに、あまり興味なかったんだけど、今は会社を変えたいと思ってる」
「え? 会社を変えたいって……真雪くんも転職したいって事?」
お風呂上がりで、サラサラになった髪を揺らして真雪くんは微笑んだ。
「ううん、その逆。
このレイエスフーズを変えたいんだ」
「レイエスフーズを変える?」
私が首を傾げて真雪くんを見ると、私の手を握った逆の手で眼鏡のフレームを上げる。
「俺も実は桃花に言ってなかったことがあって……」
ひんやりと冷たい真雪くんの手が、私の小さな手をもう一度握り返した。
お互いに会長の孫、社長の息子って一線引かれるような感じがなくて、素で話せるらしい。
駅までの道を歩きながら、ちょっとふらつく和田さんは気分が良さそうだ。
「真雪も『こうへいお兄ちゃん』って呼んでいいんだぞ」
「は? 何言ってるんですか、晃平おじさん」
まさか真雪くんがこんなノリのいい返しをするとは思わなくて、ちょっとビックリした。
「オレはまだ20代なんだからな、オジサンじゃないぞ」
オジサンなんて言われた和田さんは、言葉とは裏腹に嬉しそうに笑う。
「抱きつかないでくださいよ」
真雪くんも和田さんがヘッドロックしようとするのを避けているが、その表情は楽しそうだ。
「本当に兄弟みたいでいいなぁ」
ポツリとつぶやいた言葉に、和田さんが反応する。
「桃ちゃんにも、やってあげようか?」
ニヤニヤした顔で、私に抱きつこうとする和田さんを制して、真雪くんがキレた。
「桃花に触るな、セクハラで訴えるぞ」
即座に私を抱きしめて、和田さんを睨む。
「ウソウソ、冗談じゃん。本当に真雪って面白いな。
じゃあまたな」
「和田さん、ごちそうさまでした」
爽やかに笑って真雪くんの肩に手を置いた和田さんは、私たちとは違う路線の方へと別れた。
「……悪い人じゃなさそうだね」
「うん、根はいい人だから」
私たちも手を繋いでマンションへと帰り、これからのことを話し合った。
転勤がある会社だし、『行け』と言われれば、九州だろうが外国だろうが行かなければならない。
真雪くんが会社を辞めたら、私がこのまま本社に残れるかもしれないって言うのも本当かどうかわからない。
私がもし和田社長の立場なら……、私みたいな平社員は本社じゃなくても遠くの支社に飛ばしていた方が、きっと目障りじゃないと思う。
「転勤の話、すぐに言えなくてごめん」
真雪くんに福岡へ転勤することを言おうと思っていたけど、言い出す勇気が出なかったかもしれない。
今日和田さんが言ってくれてよかったのかも。
真雪くんの部屋のシンプルな黒いソファーに横に並んで座り、自然と手を握り合った。
「俺さ、桃花と仕事をするまでこの会社のことに、あまり興味なかったんだけど、今は会社を変えたいと思ってる」
「え? 会社を変えたいって……真雪くんも転職したいって事?」
お風呂上がりで、サラサラになった髪を揺らして真雪くんは微笑んだ。
「ううん、その逆。
このレイエスフーズを変えたいんだ」
「レイエスフーズを変える?」
私が首を傾げて真雪くんを見ると、私の手を握った逆の手で眼鏡のフレームを上げる。
「俺も実は桃花に言ってなかったことがあって……」
ひんやりと冷たい真雪くんの手が、私の小さな手をもう一度握り返した。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は
小学一年生の娘、碧に
キャンプに連れて行ってほしいと
お願いされる。
キャンプなんて、したことないし……
と思いながらもネットで安心快適な
キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。
だが、当日簡単に立てられると思っていた
テントに四苦八苦していた。
そんな時に現れたのが、
元子育て番組の体操のお兄さんであり
全国のキャンプ場を巡り、
筋トレしている動画を撮るのが趣味の
加賀谷大地さん(32)で――。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
羽村美海
恋愛
【※第17回らぶドロップス恋愛小説コンテスト最終選考の結果が出たので再公開しました。改稿版との差し替えも完了してます】
思い入れのあるレストランで婚約者に婚約破棄された挙げ句、式場のキャンセル料まで支払う羽目になった穂乃香。
帰りに立ち寄ったバーでしつこいナンパ男を撃退しようとカクテルをぶちまけるが、助けに入ってきた男の優れた見目に見蕩れてしまった穂乃香はそのまま意識を手放してしまう。
目を覚ますと、見目の優れた男とホテルにいるというテンプレ展開が待ち受けていたばかりか、紳士だとばかり思っていた男からの予期せぬ変態発言により思いもよらない事態に……!
数ヶ月後、心機一転転職した穂乃香は、どういうわけか社長の第二秘書に抜擢される。
驚きを隠せない穂乃香の前に社長として現れたのは、なんと一夜を共にした、あの変態男だった。
しかも、穂乃香の醸し出す香りに一目惚れならぬ〝一嗅ぎ惚れ〟をしたという社長から、いきなりプロポーズされてーー!?
断るも〝業務の一環としてのビジネス婚〟で構わないと言うので仕方なく応じたはずが……、驚くほどの誠実さと優しさで頑なだった心を蕩かされ、甘い美声と香りに惑わされ、時折みせるギャップと強引さで熱く激しく翻弄されてーー
嗅覚に優れた紳士な俺様社長と男性不信な生真面目秘書の遺伝子レベルで惹かれ合う極上のラブロマンス!
.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜
*竹野内奏(タケノウチカナタ)32歳・働きたい企業ランキングトップを独占する大手総合電機メーカー「竹野内グループ」の社長・海外帰りの超絶ハイスペックなイケメン御曹司・優れた嗅覚の持ち主
*葛城穂乃香(カツラギホノカ)27歳・男性不信の生真面目秘書・過去のトラウマから地味な装いを徹底している
.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚
✧エブリスタ様にて先行初公開23.1.9✧
御曹司の極上愛〜偶然と必然の出逢い〜
せいとも
恋愛
国内外に幅広く事業展開する城之内グループ。
取締役社長
城之内 仁 (30)
じょうのうち じん
通称 JJ様
容姿端麗、冷静沈着、
JJ様の笑顔は氷の微笑と恐れられる。
×
城之内グループ子会社
城之内不動産 秘書課勤務
月野 真琴 (27)
つきの まこと
一年前
父親が病気で急死、若くして社長に就任した仁。
同じ日に事故で両親を亡くした真琴。
一年後__
ふたりの運命の歯車が動き出す。
表紙イラストは、イラストAC様よりお借りしています。
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる