身長差38センチもある後輩・白河真雪くんが隙あらば過保護に溺愛してきます

ユカヲ

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3人での飲み会ー6

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「当時、中学生だった俺の父は、家庭を顧みない祖父のことを恨んでいたって。
 だからレイエスフーズとは関係がない、公務員の仕事を選んだって言ってたよ」

 私と和田グループ長の間に座っている真雪くんは、どこを見るともなく前を向いて、再びビールジョッキを傾けごくりと飲んだ。

 和田グループ長も腕組みして、なぜか切なげに目を細めて聞いている。

「俺は祖父の力を借りることなく、他の就活生と同じように試験を受けて入らないと、同じく入社までの試験をクリアしてきた桃花に胸を張って会えない気がして。
 あんなに試験結果が出るのに緊張したことはありませんでした」

「いや、白河会長がいるんだから、どうやっても白河君が落とされることなんてなかったと思うけど」

 和田グループ長の冷静なツッコミに、私も首を縦に振って同意した。

「そうでしょうか?
 だけど、入社前は『会社に入ったら、じいちゃんと孫の関係は忘れて、仕事に邁進まいしんしろ』って言われました。
 それでほとんど連絡を取らなかったんですが……」

 そんなことを社長室に呼ばれた時も言ってた気がする。

 いくらそう言われたからって、半年以上白河会長のことを放置していたら、そりゃおじいちゃんも淋しくなると思うわ。

 真雪くんと一緒に呼び出された社長室での、白河会長のことを思い出す。

 可愛くて仕方がないって顔で、真雪くんを見ていた。
 そして、会社を譲りたいって社長の前でハッキリと言ったのを覚えている。

「俺は別に社長になりたいわけじゃないんです。
 桃花と一緒に幸せになるために、働いてるだけです」

 さも当たり前のことのようにサラリと言ってのけた真雪くんは、小皿に残った鶏ささみの梅しそチーズ巻きをパクリと口に入れた。

 すると、肘をついた片手で顔を覆った和田グループ長が肩を震わせる。


 え? 泣いてるの?

 そう思った瞬間、大きな声で爆笑し始めた。

「アハハハハ! 
 ほんっと、バカバカしいな」

 急に笑いだした和田グループ長に、私も真雪くんもビックリしてあっけに取られる。

「本人がまるでやる気がないのに、周りだけが盛り上がってんのか。
 アハハハハ」
 
「え……どうしたんですか? 和田さん」

 爆笑している和田グループ長から私を守るように、真雪くんはサッと腕を後ろ手にして背中に隠す。

 いやだって、急におかしくもないところで笑いだす人って怖いもんね。

 真雪くんの肩ごしに和田グループ長を見ていると、目尻の涙をおしぼりで拭きながら、私たちに目を向けた。

「ハハハハ、引かなくて大丈夫。
 ごめんごめん、なんかバカみたいだと思ってさ。
 ウチの会社……っていうかオレの親父」

「どういうことですか? グループ長」

 真雪くんの背中に抱きついて、今度は私が聞いてみる。

 くっついている私たちを、まるで子猫を見るような優しい顔をして、和田グループ長は口を開いた。

「オレ、会社辞めるんだ」

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