身長差38センチもある後輩・白河真雪くんが隙あらば過保護に溺愛してきます

ユカヲ

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自然消滅しそうな彼氏ー7

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 強引に引きずられて、連れて行かれそうになり、必死に抵抗していた。

 ザザザッと公園の小さな砂利を蹴るように、走ってくる音が近づいてくる。

 目を上げると、白河しらかわ君が砂埃すなぼこりを立てながら、ものすごい勢いで走って来た。

桃花ももかっ」

 叫ばれると同時に、私は男性から引きはがされ、白河君のたくましい胸にしっかりと抱きしめられる。

「俺の彼女に、何か?」

 私の頭上から、冷酷な低い声が響く。

「警察に通報します」

「な、何もやってねぇよ」

 ポケットからスマートフォンを取り出した白河君に、男性は慌てて逃げていった。

 息もできないほどギュッと抱きしめられ、白河君は私の顔をのぞき見る。

「桃花、大丈夫?
 ごめん、やっぱり会社で待ってればよかった」

 タレ目がちの大きな瞳に、後悔をにじませながらギュッと眉を寄せている。

「ううん、私の方こそ、ごめ……。大丈夫。
 ……助けてくれて、ありがとう、白河君」

 気持ち悪く腕や腰をつかまれた感触が、今になって怖くなり、笑顔で答えたつもりが涙が出て声が震えた。

「クソっ、あいつ……」

 白河君は険しい顔で、キモい男の人が逃げていった方向を見て、抱きしめていた腕を離し、走り出そうとする。

「本当に大丈夫、白河君っ」

 離れた身体に、思わず自分から抱きついてしまった。

 抱きついた私をまた、包み込むように白河君は抱きしめる。

 背の高い白河君の腕の中にいると、ちょうど私の耳が彼の胸の位置だ。
 規則正しく、少し早い白河君の鼓動と、しっかりと背中に回された腕に、私の心臓も早く鳴りだす。


「桃花、一緒に帰ろう」

 優しく頭を撫でてくれていた白河君は、そっと頬に触れて涙を拭き、ゆっくりとマンションの方へ歩き出した。

 
 白河君が来てくれて、よかった。
 駿哉さんのことで、ぐちゃぐちゃな気持ちのところに、変な人まで出てきて、本当に……。
 

 私は優しく手をつないで、隣を歩いてくれる白河君に安心した。
 
 いつもは、手を握られても『白河君は彼氏じゃないから』って、拒否きょひってる。

 彼氏の二股が発覚して、痴漢にあったからって、このまま触れ合ってるのって図々しい?
 だけど手を離したくなかった。

「ん? なに? 桃花」

 白河君の顔を見上げてたら、視線に気づいた白河君が微笑みを浮かべて私を見る。

「……ううん、あの……ごめんなさい、ありがとう」

 なんて言っていいかわからなくて、つないだ右手を握り直す。

 さっきまでの恐怖感や、駿哉しゅんやさんを見た時の凍るような気持ちとは正反対の温かさに、ドキドキと胸が高鳴っていることを隠しながらマンションへ帰った。

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