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思い出せない思い出ー5
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「桃花とようやく会えて、感激で胸が破裂しそうだったよ。
俺たちは運命の糸で結ばれてると思ったんだ」
白河君って、案外ロマンチストだな。
「そのおじいさんと女性に、きちんと商品説明してたのも感動したんだ。
一言一句覚えてるよ」
軽く目を閉じて、白河君は思い出に浸るようにうっとりとした。
「『この製品ができるまでに、細かく分けると20もの工程を経ております。
私どもレイエスフーズの社員が衛生管理に最大限の注意を払い、最新の急速冷凍技術を使ってご家庭で調理されるよりも食中毒の心配は少ないですし、手抜き料理でもないです』
この説明が消費者側に寄り添ってて、すごく分かりやすい」
再びきれいな瞳を開けて、愛おしそうに私を見つめる。
「そしてね、ここから先の言葉に桃花の優しさが溢れてて、俺は好きなんだ。
『冷凍食品を食卓にお出しすることが、母親失格なんてことはありません。
どうぞご安心のうえ、お召し上がりください』
って、女性に笑いかけて小さな子にも話しかけててさ、おじいさんも黙っちゃったんだよな。
俺は思わず拍手を送ったよ」
たしかに、その時冷凍食品売り場の業務用冷凍庫の前では、スーパーのお客様から拍手が起こった。
それにしても、白河君って私が言ったこと、よく覚えてるな……。
自分自身でもなんて言ったか忘れちゃってるのに。
「おじいさんは桃花の勢いに狼狽えて、もう立ち去ろうとしてたよな?
だけど、桃花はおじいさんの買い物かごを掴んで、その商品を手渡して更に熱意をもって勧めてさ」
拍手まで受けて引き下がれなくなった私は、おじいさんに絶対にレイエスフーズの冷凍食品を食べてもらいたいと思ってしまったんだ。
白河君は、めずらしくフフッと自然に微笑んで言葉を続ける。
「『手作り感を重視して、お弁当サイズよりも少し大きめですので、今晩のご夕食にいかかでしょうか?
[冷凍コロッケが美味しいレイエスフーズ]が、数年ぶりに手掛けましたコロッケの大自信作です。
一度食べてみてください!』
本当に自信たっぷりに桃花が言うから、そこにいたお客さんたちみんな、後でその商品をカゴに入れてたよ。
もちろん俺も買った」
この出来事を、あっけに取られて見ていたスーパーの担当者からも、その日に仕入れていた商品が完売してしまったと喜ばれたし、後日あのお母さんからも社内のカスタマーサービスへ、私へのお礼のメールが届いた。
あの高齢男性は女性の義理の父で、あのあと買ってくださった冷凍食品を食べてくれたと書かれていた。そして美味しかったと、ご自分でも買ってくるようになったらしい。
だけど結果的には丸く収まったけど、消費者間のトラブルに首を突っ込むなんて、ひとつ間違えばスーパーの店舗にも迷惑をかけてしまう事態にもなったかもしれないと注意を受けた。
ちょっと苦い思い出でもある。
俺たちは運命の糸で結ばれてると思ったんだ」
白河君って、案外ロマンチストだな。
「そのおじいさんと女性に、きちんと商品説明してたのも感動したんだ。
一言一句覚えてるよ」
軽く目を閉じて、白河君は思い出に浸るようにうっとりとした。
「『この製品ができるまでに、細かく分けると20もの工程を経ております。
私どもレイエスフーズの社員が衛生管理に最大限の注意を払い、最新の急速冷凍技術を使ってご家庭で調理されるよりも食中毒の心配は少ないですし、手抜き料理でもないです』
この説明が消費者側に寄り添ってて、すごく分かりやすい」
再びきれいな瞳を開けて、愛おしそうに私を見つめる。
「そしてね、ここから先の言葉に桃花の優しさが溢れてて、俺は好きなんだ。
『冷凍食品を食卓にお出しすることが、母親失格なんてことはありません。
どうぞご安心のうえ、お召し上がりください』
って、女性に笑いかけて小さな子にも話しかけててさ、おじいさんも黙っちゃったんだよな。
俺は思わず拍手を送ったよ」
たしかに、その時冷凍食品売り場の業務用冷凍庫の前では、スーパーのお客様から拍手が起こった。
それにしても、白河君って私が言ったこと、よく覚えてるな……。
自分自身でもなんて言ったか忘れちゃってるのに。
「おじいさんは桃花の勢いに狼狽えて、もう立ち去ろうとしてたよな?
だけど、桃花はおじいさんの買い物かごを掴んで、その商品を手渡して更に熱意をもって勧めてさ」
拍手まで受けて引き下がれなくなった私は、おじいさんに絶対にレイエスフーズの冷凍食品を食べてもらいたいと思ってしまったんだ。
白河君は、めずらしくフフッと自然に微笑んで言葉を続ける。
「『手作り感を重視して、お弁当サイズよりも少し大きめですので、今晩のご夕食にいかかでしょうか?
[冷凍コロッケが美味しいレイエスフーズ]が、数年ぶりに手掛けましたコロッケの大自信作です。
一度食べてみてください!』
本当に自信たっぷりに桃花が言うから、そこにいたお客さんたちみんな、後でその商品をカゴに入れてたよ。
もちろん俺も買った」
この出来事を、あっけに取られて見ていたスーパーの担当者からも、その日に仕入れていた商品が完売してしまったと喜ばれたし、後日あのお母さんからも社内のカスタマーサービスへ、私へのお礼のメールが届いた。
あの高齢男性は女性の義理の父で、あのあと買ってくださった冷凍食品を食べてくれたと書かれていた。そして美味しかったと、ご自分でも買ってくるようになったらしい。
だけど結果的には丸く収まったけど、消費者間のトラブルに首を突っ込むなんて、ひとつ間違えばスーパーの店舗にも迷惑をかけてしまう事態にもなったかもしれないと注意を受けた。
ちょっと苦い思い出でもある。
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