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もう友達
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ひーひー!ひっひひひ!
部屋には俺の笑い声だけが響き渡っていた。腹を抱えて転げ回る俺に、オーランドも使用人の皆も困惑顔だ。
目の前には一枚の絵がある。
襟元にふんだんにフリルがあしらわれた服を着せられた澄まし顔の男は、俺の良く知る男よりは少し若いが……。
「っっや、山田!お前!やめろ腹壊れる!」
駄目だ、腹が痛い。笑いが止まらない。フリフリの服似合ってねぇ!って自分の姿を棚に上げてまた腹を抱える。笑いすぎて涙出てきた。
ここにもソース顔フリフリ妖怪が爆誕してた。何ちょっとキメ顔してんだよ、その顔やめろよ。
あぁ山田、今お前がここにいてくれたらなぁ…きっと一緒に笑えるのにな。
目尻の涙を拭うと、改めて山田の絵を眺めた。そっか、本当に山田もここにいたんだな。
「やはりリトの友人だったかい?」
俺が落ち着いたのを見計らってオーランドが隣にやってくる。
「うん、間違いなく山田だ」
「…そうか。名はヤマダというのだな」
ちょっとホームシックになっていた俺の耳に、オーランドのしんみりとした声が届く。ん?
「山田の名前知らなかったのか?」
あいつ名乗らなかったのかな。
「ああ。王家は落ち人を…ヤマダを保護したんだけどね。ヤマダの姿を見た父や兄は醜いと蔑み、名を聞くことも関わることもしようとしなかったんだ」
山田苦労したって言ってたもんな。改めて見ても、ただ顔が濃いだけでイケメンでも何でもない、普通の男なのにな。俺は隣のイケメンに目を向ける。同じ濃い顔でもここまで違うとは…山田どんまい。
「ロイスに聞いて、この絵は君が持っているべきかもしれないと思ってね。王宮ではこの絵は大切に保管されていなかったから…私が自室に運ばせて飾っていたんだ」
え、山田の絵を?何そのアブノーマルな趣味。
「オーランドは山田とどんな関係だったんだ?」
「会ったことはないんだ。私は隣国との重要な交渉を命じられて国にいなかったから…ヤマダの存在を知ったのはヤマダが元の世界に戻ってしまってからだよ」
すごく残念そうに眉を寄せるオーランド。いや、そんな残念そうにする程の奴でもないぞ?
「いつもヤマダの絵姿を眺めながら、どんな人だったのだろうと想像していたんだ。彼はどんな人だった?」
「どんな…そうだなぁ…」
そう聞かれて思い出すのは、山田のしょうもない姿ばかりだ。山田は基本的に会社でもプライベートでもサボり魔だった。
あれは確か、俺や山田のいる新人組が珍しく大きなプレゼンを任された時だ。山田はとにかくサポートする側を担当したがった。
『あ、玲子ちゃん。お茶汲みは俺がやるから…バーロウ、今時お茶汲みを女性にやらせるなんて事できるかよ。俺がやらなくて誰がやる!プレゼンなんてスーツぴしっのエリート共に任せとけばいいんだよ。あ、待って玲子ちゃん!俺がやるから!だから早くこの会議室から逃がしてぇ』
って課長の前で叫んで怒られてたっけ。あと戸田玲子さんに『馴れ馴れしく名前で呼ぶのやめてくださいセクハラです』って言われてたっけ。
懐かしくなりながら、そんな事をぽつりぽつりと語った。
「そうか…ヤマダは素敵な人だったんだね」
いや、どこがだよ。俺の話ちゃんと聞いてた?
「私は子供の頃から落ち人に憧れを持っていてね。兄はそれを知っていたから…落ち人が現れたのを知って、急遽私に隣国との交渉を命じたのだろうな」
オーランド、本当に悔しそうだ。それにちょっと悲しそう。
「そんなに山田に会いたかったのか?」
「会ってみたかったよ。リトは、今この世界に落ち人は何人いると思う?」
あ、それ俺も気になってた。いつも聞くの忘れてしまうんだよ。この世界に他にも地球人がいるなら会ってみたいよな。
「他にも落ち人っているのか?」
「ううん、いないよ。リトだけなんだ。落ち人はだいたい八十年に一人現れる」
じゃあ俺はイレギュラーな落ち人ってわけだ。
「私が生きているうちに落ち人が現れる事はもう無いだろうと思っていたから…だからロイスから落ち人を保護したと知らせが来た時、今度は絶対に兄上に邪魔させないと誓ったんだ」
兄上って、この前皆が警戒してた王太子の事だよな?話聞いてる限り、めちゃくちゃ嫌な奴そう。
オーランドが真っ直ぐ俺を見る。痛いほどの視線に、息が詰まって喉仏が上下に動いた。
「そ、そんなにいいものでもないと思うけど…」
「リトは落ち人信仰の事は知っている?落ち人は一部の人間からは信仰の対象となっていて、神殿まであるんだよ」
うぇー。ってことはその人達にとって俺って教祖様みたいになるわけ?
嫌そうな顔の俺を見て、オーランドはふふと笑った。
「まぁ、リトには嬉しくない話かもね」
「オーランドもその一人なのか?」
「落ち人信仰の?いや…私はどちらかというと、子供の見る夢って感じかな」
オーランドは遠い目をして、何かを噛みしめるように呟いた。
「実際に落ち人であるリトと会えたあの日は、私の子供の頃からの憧れが叶った瞬間だった。だけど同時に落ち人も一人の人間なのだと思ったよ。突然生まれ育った場所から遠く離されて、不安もあったろう。でも君はいつも小さな幸せを大切にしているように感じた。一目惚れはきっかけに過ぎない。物語の中の落ち人様ではなく、私は君と言う人間を知り、もっと好きになってしまったんだ」
柔らかい声で語られる言葉は、すとんと自分の中に落ちてきた。ちゃんと、俺のこと見ていてくれる人なんだな。嬉しいなって。
「ありがとう。俺さ、こっちに来てから本当に良くしてもらってるんだ」
この屋敷の使用人も皆本当に良い人達なんだ。でも……。
「いつもどこか皆の中の落ち人様ってのを求められてるような気がしててさ。それってたぶん、さっき聞いた落ち人信仰のせいなのかな」
この世界では落ち人という存在がそれだけ神格化されているのかもしれない。でも俺にはそれってちょっと壁を感じてしまう事なんだ。
「俺はさ、どんな人とも最初はただの人間同士として向き合いたい。先入観なしで、その人を知りたいし、知ってほしいって思うんだ」
こんなに大切にされて、贅沢な話かもしれないけど。本当は、ただの菅原凛人として皆に会ってみたかったなって思ってたんだ。
「でもオーランドは落ち人じゃなくて、俺自身を見てくれてるんだよな。それが嬉しかった」
「リト…」
「うん、もう俺達、友達だな!」
そう言うと、オーランドはすごく変な顔で笑った。
「友達…うん…ふふふ。友達か」
それはいいねってまた花が咲いたみたいに笑うから、俺もつられちゃう。
「ヤマダとも、友人になれただろうか」
二人で山田の絵を眺める。記憶より若くて、でも見慣れた間抜け顔。俺この絵だけで一生笑えそう。
「うん、絶対なれた」
そう確信して、力強く頷いた。
山田…お前さ、王家じゃなくてロイス達に保護されてたら良かったのにな。そうしたら、きっとたくさん親友できたぜ。ロイス、レオンハルト、オーランド、屋敷の皆、会わせたい奴いっぱいいるんだ。
「リト、お待たせしましたっ」
ぜぇはぁ言いながら部屋に飛び込んできたのはレオンハルトだ。え、なんか髪がびしゃびしゃなんですけど!
「ちょ、レオンハルト髪濡れすぎ!どうしたんだ?」
「訓練で汗をかいたので、急いで風呂に入ってきました」
「急ぎすぎだ、もう」
持ってたハンカチで髪の水分を取ってやる。その間もオーランドの目の前で「殿下なんかと二人にしてしまい申し訳ございません」とか言ってる。髪が長いからこれじゃ足りないな、と思ってたら横からオーランドが自分のハンカチを渡してくれた。
「レオンハルト、そんなに私に会いたかったんだね」
「あ、殿下、まだいたんですか」
「……ずっとここにいようかなぁ。もうここに住んじゃおうかなぁ」
それはやめてくれ、と心の中で呟いたのは俺だけじゃないはず。
「あれ、今何か良くないこと考えなかったかい?」
「い、いいえ」
笑顔の圧がすごいよ。目が泳いじゃうよ。
「ふふ、いいんだ。リトはさっき私のことを特別で大切で唯一無二の友人だと言ってくれたもんね」
え、そこまでは言ってない。
「……リト、それは本当ですか?」
レオンハルトの顔が怖い怖い!むすーん通り越して、魔王みたいになってる。
「い、言ってない言ってない」
って何で浮気がバレた男みたいに慌てないといけないんだ。
「いや、友達だとは言ったけども…」
「あ、ごめんね?二人だけの秘密だったぁ?」
オーランドは何で嫌な浮気女みたいになってんだ。あ、この場合は浮気男か?演技上手いな!じゃない!
「レオンハルト、違うからな?何かわかんないけど、これは違うからな?」
「ふふ、ははは」
オーランドが声を出して笑う所初めて見たかも。うわぁ、白い八重歯が覗いてる。見慣れない少年みたいな笑顔にちょっとそわそわした。いきなりそんな屈託のない笑顔を見せるのはずるい。
「リト、今は友人の一人でかまわないよ。今はね……」
意味深に呟いて、ふいにオーランドの目がギラリと光ったような気がした。次の瞬間、頬に柔らかい感触が…。
「「っっな!」」
俺が仰け反るのと、レオンハルトがオーランドから俺を引き剥がすのは同時だった。
「殿下!」
「だってロイスもしてたもん」
してたもん、じゃねぇ。そんな口尖らせても可愛くねぇ。何してくれてんだ、まったく。
「そろそろ帰らないといけないんだ…これでも色々忙しくてね。今日はリトとたくさん過ごせてすごく幸せだった」
ほんわり微笑まれて、そんな事言われたら「お、おう……」としか言えないじゃないか。
「レオンハルトもまたね」
「二度と来ないでください!」
オーランドはこれぞ王子様って感じの白い馬車に乗って颯爽と帰っていった。怒れるレオンハルトと、レオンハルトにぎゅーぎゅー抱きしめられて白目剥きそうな俺を残して……。おい、このレオンハルトどうするんだよ。あと誰得な山田の絵もどうするんだよ。
部屋には俺の笑い声だけが響き渡っていた。腹を抱えて転げ回る俺に、オーランドも使用人の皆も困惑顔だ。
目の前には一枚の絵がある。
襟元にふんだんにフリルがあしらわれた服を着せられた澄まし顔の男は、俺の良く知る男よりは少し若いが……。
「っっや、山田!お前!やめろ腹壊れる!」
駄目だ、腹が痛い。笑いが止まらない。フリフリの服似合ってねぇ!って自分の姿を棚に上げてまた腹を抱える。笑いすぎて涙出てきた。
ここにもソース顔フリフリ妖怪が爆誕してた。何ちょっとキメ顔してんだよ、その顔やめろよ。
あぁ山田、今お前がここにいてくれたらなぁ…きっと一緒に笑えるのにな。
目尻の涙を拭うと、改めて山田の絵を眺めた。そっか、本当に山田もここにいたんだな。
「やはりリトの友人だったかい?」
俺が落ち着いたのを見計らってオーランドが隣にやってくる。
「うん、間違いなく山田だ」
「…そうか。名はヤマダというのだな」
ちょっとホームシックになっていた俺の耳に、オーランドのしんみりとした声が届く。ん?
「山田の名前知らなかったのか?」
あいつ名乗らなかったのかな。
「ああ。王家は落ち人を…ヤマダを保護したんだけどね。ヤマダの姿を見た父や兄は醜いと蔑み、名を聞くことも関わることもしようとしなかったんだ」
山田苦労したって言ってたもんな。改めて見ても、ただ顔が濃いだけでイケメンでも何でもない、普通の男なのにな。俺は隣のイケメンに目を向ける。同じ濃い顔でもここまで違うとは…山田どんまい。
「ロイスに聞いて、この絵は君が持っているべきかもしれないと思ってね。王宮ではこの絵は大切に保管されていなかったから…私が自室に運ばせて飾っていたんだ」
え、山田の絵を?何そのアブノーマルな趣味。
「オーランドは山田とどんな関係だったんだ?」
「会ったことはないんだ。私は隣国との重要な交渉を命じられて国にいなかったから…ヤマダの存在を知ったのはヤマダが元の世界に戻ってしまってからだよ」
すごく残念そうに眉を寄せるオーランド。いや、そんな残念そうにする程の奴でもないぞ?
「いつもヤマダの絵姿を眺めながら、どんな人だったのだろうと想像していたんだ。彼はどんな人だった?」
「どんな…そうだなぁ…」
そう聞かれて思い出すのは、山田のしょうもない姿ばかりだ。山田は基本的に会社でもプライベートでもサボり魔だった。
あれは確か、俺や山田のいる新人組が珍しく大きなプレゼンを任された時だ。山田はとにかくサポートする側を担当したがった。
『あ、玲子ちゃん。お茶汲みは俺がやるから…バーロウ、今時お茶汲みを女性にやらせるなんて事できるかよ。俺がやらなくて誰がやる!プレゼンなんてスーツぴしっのエリート共に任せとけばいいんだよ。あ、待って玲子ちゃん!俺がやるから!だから早くこの会議室から逃がしてぇ』
って課長の前で叫んで怒られてたっけ。あと戸田玲子さんに『馴れ馴れしく名前で呼ぶのやめてくださいセクハラです』って言われてたっけ。
懐かしくなりながら、そんな事をぽつりぽつりと語った。
「そうか…ヤマダは素敵な人だったんだね」
いや、どこがだよ。俺の話ちゃんと聞いてた?
「私は子供の頃から落ち人に憧れを持っていてね。兄はそれを知っていたから…落ち人が現れたのを知って、急遽私に隣国との交渉を命じたのだろうな」
オーランド、本当に悔しそうだ。それにちょっと悲しそう。
「そんなに山田に会いたかったのか?」
「会ってみたかったよ。リトは、今この世界に落ち人は何人いると思う?」
あ、それ俺も気になってた。いつも聞くの忘れてしまうんだよ。この世界に他にも地球人がいるなら会ってみたいよな。
「他にも落ち人っているのか?」
「ううん、いないよ。リトだけなんだ。落ち人はだいたい八十年に一人現れる」
じゃあ俺はイレギュラーな落ち人ってわけだ。
「私が生きているうちに落ち人が現れる事はもう無いだろうと思っていたから…だからロイスから落ち人を保護したと知らせが来た時、今度は絶対に兄上に邪魔させないと誓ったんだ」
兄上って、この前皆が警戒してた王太子の事だよな?話聞いてる限り、めちゃくちゃ嫌な奴そう。
オーランドが真っ直ぐ俺を見る。痛いほどの視線に、息が詰まって喉仏が上下に動いた。
「そ、そんなにいいものでもないと思うけど…」
「リトは落ち人信仰の事は知っている?落ち人は一部の人間からは信仰の対象となっていて、神殿まであるんだよ」
うぇー。ってことはその人達にとって俺って教祖様みたいになるわけ?
嫌そうな顔の俺を見て、オーランドはふふと笑った。
「まぁ、リトには嬉しくない話かもね」
「オーランドもその一人なのか?」
「落ち人信仰の?いや…私はどちらかというと、子供の見る夢って感じかな」
オーランドは遠い目をして、何かを噛みしめるように呟いた。
「実際に落ち人であるリトと会えたあの日は、私の子供の頃からの憧れが叶った瞬間だった。だけど同時に落ち人も一人の人間なのだと思ったよ。突然生まれ育った場所から遠く離されて、不安もあったろう。でも君はいつも小さな幸せを大切にしているように感じた。一目惚れはきっかけに過ぎない。物語の中の落ち人様ではなく、私は君と言う人間を知り、もっと好きになってしまったんだ」
柔らかい声で語られる言葉は、すとんと自分の中に落ちてきた。ちゃんと、俺のこと見ていてくれる人なんだな。嬉しいなって。
「ありがとう。俺さ、こっちに来てから本当に良くしてもらってるんだ」
この屋敷の使用人も皆本当に良い人達なんだ。でも……。
「いつもどこか皆の中の落ち人様ってのを求められてるような気がしててさ。それってたぶん、さっき聞いた落ち人信仰のせいなのかな」
この世界では落ち人という存在がそれだけ神格化されているのかもしれない。でも俺にはそれってちょっと壁を感じてしまう事なんだ。
「俺はさ、どんな人とも最初はただの人間同士として向き合いたい。先入観なしで、その人を知りたいし、知ってほしいって思うんだ」
こんなに大切にされて、贅沢な話かもしれないけど。本当は、ただの菅原凛人として皆に会ってみたかったなって思ってたんだ。
「でもオーランドは落ち人じゃなくて、俺自身を見てくれてるんだよな。それが嬉しかった」
「リト…」
「うん、もう俺達、友達だな!」
そう言うと、オーランドはすごく変な顔で笑った。
「友達…うん…ふふふ。友達か」
それはいいねってまた花が咲いたみたいに笑うから、俺もつられちゃう。
「ヤマダとも、友人になれただろうか」
二人で山田の絵を眺める。記憶より若くて、でも見慣れた間抜け顔。俺この絵だけで一生笑えそう。
「うん、絶対なれた」
そう確信して、力強く頷いた。
山田…お前さ、王家じゃなくてロイス達に保護されてたら良かったのにな。そうしたら、きっとたくさん親友できたぜ。ロイス、レオンハルト、オーランド、屋敷の皆、会わせたい奴いっぱいいるんだ。
「リト、お待たせしましたっ」
ぜぇはぁ言いながら部屋に飛び込んできたのはレオンハルトだ。え、なんか髪がびしゃびしゃなんですけど!
「ちょ、レオンハルト髪濡れすぎ!どうしたんだ?」
「訓練で汗をかいたので、急いで風呂に入ってきました」
「急ぎすぎだ、もう」
持ってたハンカチで髪の水分を取ってやる。その間もオーランドの目の前で「殿下なんかと二人にしてしまい申し訳ございません」とか言ってる。髪が長いからこれじゃ足りないな、と思ってたら横からオーランドが自分のハンカチを渡してくれた。
「レオンハルト、そんなに私に会いたかったんだね」
「あ、殿下、まだいたんですか」
「……ずっとここにいようかなぁ。もうここに住んじゃおうかなぁ」
それはやめてくれ、と心の中で呟いたのは俺だけじゃないはず。
「あれ、今何か良くないこと考えなかったかい?」
「い、いいえ」
笑顔の圧がすごいよ。目が泳いじゃうよ。
「ふふ、いいんだ。リトはさっき私のことを特別で大切で唯一無二の友人だと言ってくれたもんね」
え、そこまでは言ってない。
「……リト、それは本当ですか?」
レオンハルトの顔が怖い怖い!むすーん通り越して、魔王みたいになってる。
「い、言ってない言ってない」
って何で浮気がバレた男みたいに慌てないといけないんだ。
「いや、友達だとは言ったけども…」
「あ、ごめんね?二人だけの秘密だったぁ?」
オーランドは何で嫌な浮気女みたいになってんだ。あ、この場合は浮気男か?演技上手いな!じゃない!
「レオンハルト、違うからな?何かわかんないけど、これは違うからな?」
「ふふ、ははは」
オーランドが声を出して笑う所初めて見たかも。うわぁ、白い八重歯が覗いてる。見慣れない少年みたいな笑顔にちょっとそわそわした。いきなりそんな屈託のない笑顔を見せるのはずるい。
「リト、今は友人の一人でかまわないよ。今はね……」
意味深に呟いて、ふいにオーランドの目がギラリと光ったような気がした。次の瞬間、頬に柔らかい感触が…。
「「っっな!」」
俺が仰け反るのと、レオンハルトがオーランドから俺を引き剥がすのは同時だった。
「殿下!」
「だってロイスもしてたもん」
してたもん、じゃねぇ。そんな口尖らせても可愛くねぇ。何してくれてんだ、まったく。
「そろそろ帰らないといけないんだ…これでも色々忙しくてね。今日はリトとたくさん過ごせてすごく幸せだった」
ほんわり微笑まれて、そんな事言われたら「お、おう……」としか言えないじゃないか。
「レオンハルトもまたね」
「二度と来ないでください!」
オーランドはこれぞ王子様って感じの白い馬車に乗って颯爽と帰っていった。怒れるレオンハルトと、レオンハルトにぎゅーぎゅー抱きしめられて白目剥きそうな俺を残して……。おい、このレオンハルトどうするんだよ。あと誰得な山田の絵もどうするんだよ。
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