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王子様風フェイスは本物の王子様
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俺は今、目の前の光景に圧倒されている。
部屋に入ったらさ、きらきらした金髪の王子様風イケメンが二人いた。
類は友を呼ぶとはこのことか。クラスにいたら近寄れもしないだろうイケメンパラダイスだ。そこに薄顔フリフリ妖怪がぽつんといるこの心細さ、きっと君ならわかってくれるよね?
「リト、その服は私が選んだものだな。とても綺麗だ」
ロイスが蕩ける笑顔で言ってくれる。そのえくぼ可愛い。うう…そんなストレートに褒められたら居た堪れないぜ。
「あ、ありがとう」
一応お礼は言っとくけどな。それにこの服もデザインはアレだけど、すごく質の良い物だってわかる。高かったんじゃないか?ちょっと心配だ。
応接室のソファからふらふらと立ち上がり、もう一人の王子様風イケメンがこちらに来た。
「……っ!驚いたな。本当に何と美しい…」
ロイスとレオンハルトにも言えることだけど、イケメンって声までいい。イケてるボイスですわ!耳が孕むとはこの事か!色気がすごいぞ。誰だ?こんな所にエロ王子様風フェイス揃えたの。
「リト、彼はオーランド・スターク・クロノス。このクロノス王国の第二王子だ」
本物の王子様キターーーーー!え、王子様風イケメンだと思ってたら、モノホンだった。え、どうしよう。
「は、はじめまして。えっと、菅原凛人です」
名前がリトで姓がスガワラです、とお決まりの挨拶をする間も目の前の人から目が離せない。
サラサラの長いブロンドに、金色の瞳。ロイスも綺麗な金髪だけど、第二王子の方が少し色が濃い。まさしく太陽って感じの神々しさだ。
どうしよう…俺まだ王族への挨拶の仕方教わってないよ?この前セバスチャンが教えてくれるって言ってたけど、のらりくらりと先送りにしてたんだよね。もっと早く習っておくんだった。王族への挨拶とかめんどくせっ!どーでもよっ!とか思ってた数日前の俺を全力で殴りに行きたい。
あわあわする俺を見て、くすりと笑う声が聞こえる。低くて掠れた声。
「ああ、今日は私的な要件で来たんだ。楽にしてくれてかまわない」
いや、こっちはかまうんだが?
第二王子の金色の瞳が優しく細められる。オーラってこういう事を言うのかと思う。『オーラが見えます』と言う胡散臭い占い師が俺の脳内で爆誕した瞬間だった。
「はい…ありがとうございます…」
ここは日本人として恥じない愛想笑いを心掛けたいところだ。無理矢理口角を上げてにっこりする。見よ!この見事なアルカイックスマイルを!営業先でどんなに理不尽な事を言われても、だいたいこれで生き抜いてきたんだぜ?
「…………。」
「…………。」
「…………。」
いや!誰か何か話せて!「…………。」じゃねーわ!
「ごねんね。あまりに綺麗な笑顔だったから見惚れちゃった」
ロイスとレオンハルトが第二王子の言葉に同意するように顔を赤くさせて頷く。皆、ちゃんと見えてる?俺妖怪だよ?
俺の人見知り発動に伴い本日の営業は終了いたしました。
とはいかないので、笑顔を総動員して後ろにいたレオンハルトを押し出す。困った時のレオンハルトだ。
「久しぶりだね、レオンハルト」
第二王子は俺とは比べものにならない程の爽やかな笑顔を振り撒いている。キラキラ星人がこんな所にもいた。イケメンていくら見ても見慣れねぇのな。俺は山田くらいの顔濃過ぎて顔面ゲシュタルト崩壊してる人間といる方が安心するみたいだ。
「…………。」
え?うちの子どうしちゃったの?第二王子のこと嫌いなの?
むすーんとなったレオンハルトと第二王子の顔を交互に見て、俺はそっとレオンハルトを背中に隠した。まぁ、レオンハルトの方がでかいから隠れてないんだけどな。
「レオンハルトはどうしちゃったのかな?ほら、お兄ちゃんだよ?甘えておいで?」
お、お兄ちゃん⁉︎びっくりしてレオンハルトを仰ぎ見ると心底嫌そうな顔をしていた。
「兄などではありません。血のつながりもありません。リトに勘違いされるような事を言わないでください」
あ、そうなの?びっくりした。
「ふふ、相変わらずだね。ロイスを兄のように慕っているんだから、私の事も同じように思ってくれてかまわないんだよ?」
「別に団長の事も慕っていません」
「おい、それはそれで私が傷つくのだが…」
第二王子は膝を曲げて俺と視線を合わせると、キラキラしい微笑みを浮かべた。
「リト…と呼んでもいいだろうか」
「あ、はい」
「いきなりは難しいかもしれないけど、私のこともオーランドと呼んでほしいな。もしくはオーランドお兄様とかでもいいな?」
いや、いいな?じゃねぇ。ええ、この人もしかして変態?変な態度と書いて変態と読むわけだから、やっぱりこの人変態だよな?すーんとなる俺。
「あ、やっぱりダメ?でもリトはこんなに小さくて可愛いし。私は子供好きなんだ。ぜひオーランドお兄様と呼ばれたい」
呼びませんよ。え、ていうか、ちょっと待って?
「俺、子供じゃないので…」
「うん?リトは何歳になったのかな?」
「…俺二十五歳ですけど」
「「「は?」」」
三人の声が重なる。全員の頭の上にクエスチョンマークが飛んでる。
よく考えたら俺年齢とか言ってないかも。でも子供はないよ。え、子供だと思われてたの?
「に、二十五歳…だと⁉︎」
「リト、もう成人してたんですか⁉︎」
ロイスとレオンハルトがびっくりしてる。いったい何歳くらいだと思ってたんだよ。恨めしげに二人を睨むと、そっと目をそらされる。
「いったい俺のこと何歳だと思ってたんだよ」
「いや…てっきりまだ成人前だと…」
「私もリトは年下だと思っていました。では、私の二歳上なのですね」
ほう。日本人は海外に行くと若く見られというやつだろうか?きっとそうだよな。まさか俺が小さいからとかじゃないよな。誰か違うと言ってくれ。
「ということはレオンハルトは二十三歳なんだ。ロイスは?」
こんなに一緒にいたのに、そういや年齢とか確認し合った事なかったもんな。
「私は二十八歳だ」
「ちなみにロイスと私は同じ歳だよ。王立学園からの仲なんだ」
仲良しだよね!とロイスに可愛くウィンクしてる第二王子。いつもの事なのか、ロイスは無視してるけど。
第二王子は改めて俺を頭の先から足の先までまじまじと眺めて、何やら不穏な気配を漂わせはじめた。なんか寒気がするぞ。
「……こんなに小さいのに、成人しているの?じゃあ、もう成長しないの?小さくて可愛いまま?」
最高…と呟く声がする。おい、聞き逃さなかったぞ。やっぱりこの人変態だ。危ない人だ。絶対近づかないようにしよう。
「もう成人してるなら、リトもハーレムが作れるんだね」
第二王子がそう言った瞬間、部屋の中の空気がピリついた。
ん?ロイスもレオンハルトも強張った顔してどうしたんだ?
「ハーレム?」
「そうだよ。この世界では身分の高い者や何か特別に秀でた才能がある者はハーレムを作ることができるだ」
な、何だその羨まし…じゃない、変な制度は。
「リトは落ち人だから、もちろんその資格があるよ。成人の歳、つまりこの世界では二十歳を迎えたらハーレム申請が可能なんだ」
お酒は二十歳からみたいな制度がこっちの世界にもあったらしい。ハーレムってあのハーレムだよな?ハーレム申請とかいうパワーワード怖い。
え、でも俺にも資格があるって…それって女の子侍らせ放題ってこと?は、鼻血が…!そんな男の夢みたいな話があっていいのか?何だよ、そんなエロゲーみたいな話、山田してなかったぞ。いくら酔っててもそんな話聞いてたら覚えてたはずだ。
「ロイス、ちゃんと説明してなかったの?君らしくないな」
第二王子の声が低くなる。ああ、この人やっぱり王族なんだなってこの時思ったね。変な人だけど、人を動かすのに慣れた人の声だ。
「成人前だと思っていたから、まだリトには早いと思っていたのもあるが…こういった話はもっとゆっくり進めたかった」
「そんなに悠長な事言っていられないと思うけどね。リトはこんなに美しいんだ。王家が…特に兄上がどう動くか、ロイスもわかっているだろう?」
第二王子の言葉にロイスが渋い顔になる。何か大切な話をされているのはわかってるんだけど、妄想が捗りすぎて思考が追いつかない。
「私達ももちろんハーレムを作れる身分ではあるけど。ほら…ね。私達のハーレムに入ってくれる人はいないから」
第二王子が首をかしげて、少し思案しながら真っ直ぐ俺を見た。金色の切れ長の瞳が肉食獣を思わせる。
「君がハーレムを作るなら、ぜひ私もそのハーレムに入れてもらいたいな」
「オーランド!」
「殿下!」
ロイスとレオンハルトが焦ったように第二王子を睨む。
え、何?俺のハーレムにこの人が入るの?何で?
「決めるのはリトなんだから。そんなに睨まないでよ」
「リトがハーレムを作るのであれば、私も入れてもらいたい」
「リト!私だって……私だって……ずっと一緒だと約束してくれましたよね」
第二王子は期待のこもった顔で、ロイスとレオンハルトには不安そうな顔で見つめられる。そんなに見つめられても…いやいや!え?おかしくない?何で俺のハーレムに三人が入りたがってんの?あれ、これもしや俺の考えてるエロいハーレムとこの世界のハーレムは意味が違うのか?うわ、恥ず!ちょっと一旦俺の妄想全部消すから待って!男の子の夢全部消すから待って!
「あのさ、ちなみにこの世界のハーレムって何?」
煩悩を打ち消すまでの時間稼ぎに質問してみる。
ああ、さようなら、おっぱい大きくて天然な君、それにツンデレ属性の君、あとお色気のお姉さん。俺の脳内のハーレムにいた彼女達に別れを告げる。我、無心なり。
「リトの世界にハーレムはなかったのかな?ハーレムとは複数の相手と関係を深める行為の事だよ。国にハーレム申請を出す事は婚姻を意味するんだ」
我、また煩悩にまみれるなり。やっぱり俺の思ってた通りのハーレムだった!ハーレム申請しますします!カムバック、心の中の彼女達!
え、でも待って……。
「それで何で三人が俺のハーレムに入るという話になるんですか?」
嫌な予感がして第二王子に問いかける。
「それは私が君に好意を抱いているからだよ。一目惚れなんだ」
第二王子の言葉に、ロイスは眉間に皺を寄せて俺を後ろに隠し、レオンハルトはぎゅっと抱きついてきた。
え、好意?それってライクじゃなくてラブの方なのってやつ?
「い、いやいや!ないない!無理です、俺がハーレムなんて…しかも王子様とだなんて。そもそも、皆いつかは女性と結婚しますよね?」
第二王子やレオンハルトはわからないけど、ロイスは公爵様だし跡取りが必要なはずだ。それにおれも男同士に偏見はないけど女の子が好きだし。
でもそうか、いつかはロイスもレオンハルトも結婚しちゃうんだよな。その事に今更気づいてしまって、心がぎゅって狭くなっていった。何でこんなに心が痛いんだろう。
「女性…とはなんだ?」
「女性とは何ですか?」
「女性って何?」
三人が同時に問いかける。
「は?」
今度は俺が頭の上にクエスチョンマークを飛ばす番だった。
嫌な予感がするのは、俺だけだよね?
部屋に入ったらさ、きらきらした金髪の王子様風イケメンが二人いた。
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「リト、その服は私が選んだものだな。とても綺麗だ」
ロイスが蕩ける笑顔で言ってくれる。そのえくぼ可愛い。うう…そんなストレートに褒められたら居た堪れないぜ。
「あ、ありがとう」
一応お礼は言っとくけどな。それにこの服もデザインはアレだけど、すごく質の良い物だってわかる。高かったんじゃないか?ちょっと心配だ。
応接室のソファからふらふらと立ち上がり、もう一人の王子様風イケメンがこちらに来た。
「……っ!驚いたな。本当に何と美しい…」
ロイスとレオンハルトにも言えることだけど、イケメンって声までいい。イケてるボイスですわ!耳が孕むとはこの事か!色気がすごいぞ。誰だ?こんな所にエロ王子様風フェイス揃えたの。
「リト、彼はオーランド・スターク・クロノス。このクロノス王国の第二王子だ」
本物の王子様キターーーーー!え、王子様風イケメンだと思ってたら、モノホンだった。え、どうしよう。
「は、はじめまして。えっと、菅原凛人です」
名前がリトで姓がスガワラです、とお決まりの挨拶をする間も目の前の人から目が離せない。
サラサラの長いブロンドに、金色の瞳。ロイスも綺麗な金髪だけど、第二王子の方が少し色が濃い。まさしく太陽って感じの神々しさだ。
どうしよう…俺まだ王族への挨拶の仕方教わってないよ?この前セバスチャンが教えてくれるって言ってたけど、のらりくらりと先送りにしてたんだよね。もっと早く習っておくんだった。王族への挨拶とかめんどくせっ!どーでもよっ!とか思ってた数日前の俺を全力で殴りに行きたい。
あわあわする俺を見て、くすりと笑う声が聞こえる。低くて掠れた声。
「ああ、今日は私的な要件で来たんだ。楽にしてくれてかまわない」
いや、こっちはかまうんだが?
第二王子の金色の瞳が優しく細められる。オーラってこういう事を言うのかと思う。『オーラが見えます』と言う胡散臭い占い師が俺の脳内で爆誕した瞬間だった。
「はい…ありがとうございます…」
ここは日本人として恥じない愛想笑いを心掛けたいところだ。無理矢理口角を上げてにっこりする。見よ!この見事なアルカイックスマイルを!営業先でどんなに理不尽な事を言われても、だいたいこれで生き抜いてきたんだぜ?
「…………。」
「…………。」
「…………。」
いや!誰か何か話せて!「…………。」じゃねーわ!
「ごねんね。あまりに綺麗な笑顔だったから見惚れちゃった」
ロイスとレオンハルトが第二王子の言葉に同意するように顔を赤くさせて頷く。皆、ちゃんと見えてる?俺妖怪だよ?
俺の人見知り発動に伴い本日の営業は終了いたしました。
とはいかないので、笑顔を総動員して後ろにいたレオンハルトを押し出す。困った時のレオンハルトだ。
「久しぶりだね、レオンハルト」
第二王子は俺とは比べものにならない程の爽やかな笑顔を振り撒いている。キラキラ星人がこんな所にもいた。イケメンていくら見ても見慣れねぇのな。俺は山田くらいの顔濃過ぎて顔面ゲシュタルト崩壊してる人間といる方が安心するみたいだ。
「…………。」
え?うちの子どうしちゃったの?第二王子のこと嫌いなの?
むすーんとなったレオンハルトと第二王子の顔を交互に見て、俺はそっとレオンハルトを背中に隠した。まぁ、レオンハルトの方がでかいから隠れてないんだけどな。
「レオンハルトはどうしちゃったのかな?ほら、お兄ちゃんだよ?甘えておいで?」
お、お兄ちゃん⁉︎びっくりしてレオンハルトを仰ぎ見ると心底嫌そうな顔をしていた。
「兄などではありません。血のつながりもありません。リトに勘違いされるような事を言わないでください」
あ、そうなの?びっくりした。
「ふふ、相変わらずだね。ロイスを兄のように慕っているんだから、私の事も同じように思ってくれてかまわないんだよ?」
「別に団長の事も慕っていません」
「おい、それはそれで私が傷つくのだが…」
第二王子は膝を曲げて俺と視線を合わせると、キラキラしい微笑みを浮かべた。
「リト…と呼んでもいいだろうか」
「あ、はい」
「いきなりは難しいかもしれないけど、私のこともオーランドと呼んでほしいな。もしくはオーランドお兄様とかでもいいな?」
いや、いいな?じゃねぇ。ええ、この人もしかして変態?変な態度と書いて変態と読むわけだから、やっぱりこの人変態だよな?すーんとなる俺。
「あ、やっぱりダメ?でもリトはこんなに小さくて可愛いし。私は子供好きなんだ。ぜひオーランドお兄様と呼ばれたい」
呼びませんよ。え、ていうか、ちょっと待って?
「俺、子供じゃないので…」
「うん?リトは何歳になったのかな?」
「…俺二十五歳ですけど」
「「「は?」」」
三人の声が重なる。全員の頭の上にクエスチョンマークが飛んでる。
よく考えたら俺年齢とか言ってないかも。でも子供はないよ。え、子供だと思われてたの?
「に、二十五歳…だと⁉︎」
「リト、もう成人してたんですか⁉︎」
ロイスとレオンハルトがびっくりしてる。いったい何歳くらいだと思ってたんだよ。恨めしげに二人を睨むと、そっと目をそらされる。
「いったい俺のこと何歳だと思ってたんだよ」
「いや…てっきりまだ成人前だと…」
「私もリトは年下だと思っていました。では、私の二歳上なのですね」
ほう。日本人は海外に行くと若く見られというやつだろうか?きっとそうだよな。まさか俺が小さいからとかじゃないよな。誰か違うと言ってくれ。
「ということはレオンハルトは二十三歳なんだ。ロイスは?」
こんなに一緒にいたのに、そういや年齢とか確認し合った事なかったもんな。
「私は二十八歳だ」
「ちなみにロイスと私は同じ歳だよ。王立学園からの仲なんだ」
仲良しだよね!とロイスに可愛くウィンクしてる第二王子。いつもの事なのか、ロイスは無視してるけど。
第二王子は改めて俺を頭の先から足の先までまじまじと眺めて、何やら不穏な気配を漂わせはじめた。なんか寒気がするぞ。
「……こんなに小さいのに、成人しているの?じゃあ、もう成長しないの?小さくて可愛いまま?」
最高…と呟く声がする。おい、聞き逃さなかったぞ。やっぱりこの人変態だ。危ない人だ。絶対近づかないようにしよう。
「もう成人してるなら、リトもハーレムが作れるんだね」
第二王子がそう言った瞬間、部屋の中の空気がピリついた。
ん?ロイスもレオンハルトも強張った顔してどうしたんだ?
「ハーレム?」
「そうだよ。この世界では身分の高い者や何か特別に秀でた才能がある者はハーレムを作ることができるだ」
な、何だその羨まし…じゃない、変な制度は。
「リトは落ち人だから、もちろんその資格があるよ。成人の歳、つまりこの世界では二十歳を迎えたらハーレム申請が可能なんだ」
お酒は二十歳からみたいな制度がこっちの世界にもあったらしい。ハーレムってあのハーレムだよな?ハーレム申請とかいうパワーワード怖い。
え、でも俺にも資格があるって…それって女の子侍らせ放題ってこと?は、鼻血が…!そんな男の夢みたいな話があっていいのか?何だよ、そんなエロゲーみたいな話、山田してなかったぞ。いくら酔っててもそんな話聞いてたら覚えてたはずだ。
「ロイス、ちゃんと説明してなかったの?君らしくないな」
第二王子の声が低くなる。ああ、この人やっぱり王族なんだなってこの時思ったね。変な人だけど、人を動かすのに慣れた人の声だ。
「成人前だと思っていたから、まだリトには早いと思っていたのもあるが…こういった話はもっとゆっくり進めたかった」
「そんなに悠長な事言っていられないと思うけどね。リトはこんなに美しいんだ。王家が…特に兄上がどう動くか、ロイスもわかっているだろう?」
第二王子の言葉にロイスが渋い顔になる。何か大切な話をされているのはわかってるんだけど、妄想が捗りすぎて思考が追いつかない。
「私達ももちろんハーレムを作れる身分ではあるけど。ほら…ね。私達のハーレムに入ってくれる人はいないから」
第二王子が首をかしげて、少し思案しながら真っ直ぐ俺を見た。金色の切れ長の瞳が肉食獣を思わせる。
「君がハーレムを作るなら、ぜひ私もそのハーレムに入れてもらいたいな」
「オーランド!」
「殿下!」
ロイスとレオンハルトが焦ったように第二王子を睨む。
え、何?俺のハーレムにこの人が入るの?何で?
「決めるのはリトなんだから。そんなに睨まないでよ」
「リトがハーレムを作るのであれば、私も入れてもらいたい」
「リト!私だって……私だって……ずっと一緒だと約束してくれましたよね」
第二王子は期待のこもった顔で、ロイスとレオンハルトには不安そうな顔で見つめられる。そんなに見つめられても…いやいや!え?おかしくない?何で俺のハーレムに三人が入りたがってんの?あれ、これもしや俺の考えてるエロいハーレムとこの世界のハーレムは意味が違うのか?うわ、恥ず!ちょっと一旦俺の妄想全部消すから待って!男の子の夢全部消すから待って!
「あのさ、ちなみにこの世界のハーレムって何?」
煩悩を打ち消すまでの時間稼ぎに質問してみる。
ああ、さようなら、おっぱい大きくて天然な君、それにツンデレ属性の君、あとお色気のお姉さん。俺の脳内のハーレムにいた彼女達に別れを告げる。我、無心なり。
「リトの世界にハーレムはなかったのかな?ハーレムとは複数の相手と関係を深める行為の事だよ。国にハーレム申請を出す事は婚姻を意味するんだ」
我、また煩悩にまみれるなり。やっぱり俺の思ってた通りのハーレムだった!ハーレム申請しますします!カムバック、心の中の彼女達!
え、でも待って……。
「それで何で三人が俺のハーレムに入るという話になるんですか?」
嫌な予感がして第二王子に問いかける。
「それは私が君に好意を抱いているからだよ。一目惚れなんだ」
第二王子の言葉に、ロイスは眉間に皺を寄せて俺を後ろに隠し、レオンハルトはぎゅっと抱きついてきた。
え、好意?それってライクじゃなくてラブの方なのってやつ?
「い、いやいや!ないない!無理です、俺がハーレムなんて…しかも王子様とだなんて。そもそも、皆いつかは女性と結婚しますよね?」
第二王子やレオンハルトはわからないけど、ロイスは公爵様だし跡取りが必要なはずだ。それにおれも男同士に偏見はないけど女の子が好きだし。
でもそうか、いつかはロイスもレオンハルトも結婚しちゃうんだよな。その事に今更気づいてしまって、心がぎゅって狭くなっていった。何でこんなに心が痛いんだろう。
「女性…とはなんだ?」
「女性とは何ですか?」
「女性って何?」
三人が同時に問いかける。
「は?」
今度は俺が頭の上にクエスチョンマークを飛ばす番だった。
嫌な予感がするのは、俺だけだよね?
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