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番外編3

ある日の二人5

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 翌日、子供達は俺の母や親戚に預けられてゆき、俺たちは同じマンションの、普段は使われていない一室に籠もった。
 寝室に大きなベッドだけが置いてある、2LDKのこじんまりした角部屋で、日当たりが良くて気持ちいい所だ。
 持ち主は渚のおじいさんだけど、三ヶ月に一度、特別に貸して貰うことになっている。
 そこですることと言えばセックスだけだから、ちょっと恥ずかしくはあるんだけど……。
 蜜月が始まってしまえばそんなことお構いなく、朝から晩までずっとお互いを貪り合う。
 ベッドの上で渚と繋がり、夢中で溺れるのももちろんだけど、発情が少し落ち着いてくれば、二人きりで久々のデートや散歩に出かけたりもする。
 俺のフェロモンはもう渚にしか効かなくて、人に迷惑をかけることもないしな。
 俺と獣の姿になった渚が外を散歩している姿は、誰がどう見ても飼主と犬。
 まさか、毎晩いやらしくて激しいセックスをしてるなんて誰も思わないだろう。
 ――だろう、けど。
「……ワン!」
 ――ベッドの上で、さっきの散歩中のことを思い出していたら、完全に獣になってる渚に吠えられた。
 何でボンヤリしてるの、って感じで。
「も、急かすなよ……っ、んぁあ……っ、抜けねぇ……っ」
 仰向けにひっくり返って息を上げながら、散っていた意識をアナルに集中する。
 そこには、散歩中ずっと、俺のナカ奥深くまで埋められていた異物が黒々とした頭を出していた。
 真っ黒で滑らかな矢印みたいな形状の、アナルプラグ。
 エッチの合間に散歩に行くのに、フェロモンと、中出しされた精液がドバドバ垂れるのを防ぐため、って理由で買った気がするけど、どう考えても渚の趣味だと思う。
 こんなスケベ過ぎる一面もあるとか……結婚した時にはあんまり分からなかった。
 自分で抜こうとしても、奥が太くて根本が細い、引っかかる形状のせいか抜けなくて、さっきから焦ってる。
 渚は覆いかぶさるようにして俺の身体を跨ぎ、こめかみに浮かぶ冷や汗をべろべろと舐めていた。
 畜生、これ絶対、脳内浮気の仕返しされてる……。
 さっきまでこれ入れながら近所を結構な早足で歩かされて、ナカがゴリゴリ擦られて……何度もイキそうになるのを堪えた。
 でももう、我慢できない……。
 落ち着こうと息を大きく吐き、もう一度、プラグの尻尾を指で掴んで引っ張る。
「んン……っ!」
 徐々にアナルが拡がってめくれ、一番太い部分までもう少し、っていう時に、ビチャビチャと音がして、乳首を薄い舌で舐め回された。
「はぁっ、ン……!」
 感じすぎてびくっ、びくっとまた尻を締めてしまい、せっかく出かけてたプラグが飲み込まれる。
 ひっ、酷過ぎ。
「くそっ、邪魔すんならさぁ、渚がこれ抜いてくれよ……っ」
 ずっぷりハマって筋肉の動きに合わせて揺れてるオモチャを上向けて懇願する。
 すると渚は少し後ずさりして、俺の脚の間に立ち、尻の間に鼻を突っ込むみたいに頭を下げた。
「ちょっ、何でその姿のまんま……っ」
 白い犬歯が、シリコン製のプラグの端っこを器用に捉え、ずいいーっと引っ張られ始める。
 渚の上下の歯の間からハッハッと温かい息が当たり、それだけでもゾクゾクする程気持ちいい。
 異物がすこしずつ外に出て、一番太い部分まで抜けそうになった時、カリっと擦れる音がして牙が滑り、渚の口からプラグが外れた。
「んぅっ」
 また元の木阿弥で奥にプラグを呑み込んでしまい、爛れた快感に涎を垂らしながら仰け反る。
 もう一度咥え直されたけど、またうまくいかずに滑って、アはぁと甘い吐息が漏れた。
「もっと、ちゃんとぉ……っ」
 堪らず、股の間に顔を突っ込んでる渚の首を撫でて懇願する。
 ううっ、飼い犬に何かいけない芸を仕込んでる飼主みたいだ。誰も見ちゃいねえけどっ。
 頰を熱くしてる俺の目の前で、プラグがしっかりと咥え直される。
 もう一度、前立腺が太い部分で強く擦られる淫らな圧迫感が俺を襲った。
「あ……あ、アー……っ!」
 ぬぽっと音を立てて栓が抜けた途端、堪え切れずにイき果てる。
 下腹がビクッ、ビクッと痙攣する度に、数時間前に中出しされた体液がトロトロと穴からこぼれ落ちた。
 それを躊躇なく渚がビチャビチャ舐め回して綺麗にし始め、這い回る舌の感触に下腹が悶える。
「待っ……、はぁ……っ」
 そんなの、舐めてくれなくたって大丈夫だから、早くまた、この穴を埋めて欲しい……。
「なぎさっ、はぁっ、なあっ、入れて……っ」
 浅いとこでイクより、奥を突いて欲しくて、俺の我慢はもう限界だった。
 目の前の可愛い金色の犬が頷き、顔はそのままで、身体だけが人間のそれに変わってゆく。
 尖った歯の並んだ口から舌が伸びて俺の額を舐め、毛の生えた肉球付きの指で膝を掴まれて胸に付くほど倒された。
 渚の人間とは形の違う極太ちんぽが易々と俺の中に入り、イッたばかりで敏感になっているアナルをギチギチに拡げて侵入してくる。
「はぁあーっ、……これ好き……っ、ちんぽきもちいい……っ」
 ここ数日間で中出しされ続けたせいで、ご無沙汰だった俺のソコも奥の奥まで柔らかくひらいて、渚の形に馴染んだまま吸い付くようになっていた。
 温かい身体が上にのしかかるように俺を抱き、ハッハッと熱い息が耳にかかる。
「湊の中、凄い……ここ、寂しくなっても俺しか入れちゃ、駄目だから……っ!」
 ズンッと強く突かれて電気が走ったようになり、もう一度無理矢理絶頂に連れていかれそうになった。
「んはぁ……っ! いぃ……っ、奥やばい……っ、もっとして……っ」
「そんなに可愛いこと言って、また妊娠させちゃうよ……っ」
 ずろろ……っと引き抜かれて、また容赦なく子宮口に向かってちんぽを突き立てられる。
「はぁあ……すき……またイク……」
 溢れるほどの精液をヒクつく中で貪欲に吸い上げながら、俺はまた、渚にイかされる幸福を味わった。
 中でまた渚の一部が膨らみ、外れなくなってから、ボンヤリしてた俺の上体が起こされる。
 いわゆる対面座位、てやつで、膝の上に座るみたいな格好だ。
 俺は手ぐしで渚の金色の毛を優しく撫で梳きながら、その首筋に顔を埋めた。
 全身フワフワの毛が生えていて、いい匂い……というよりちょっと獣臭くて、凄く温かい、大事な大事な俺のつがい……。
 スリスリと感触を堪能していると、密生した毛がすーっと肌に吸い込まれるように消えて産毛になり、密着している獣人が、目の覚めるような金髪の美青年に変わってゆく。
 端正な顔立ちの、真摯な瞳に見つめられて、癒やされモードだったのに、急にドキドキと落ち着かなくなった。
「……あのなっ、せっかくナデナデして幸せに浸ってたのに何で引っ込めるんだよ、毛」
「うーん、……その、ちゃんと話がしたくて……?」
「……何……」
「好きだよ、湊。ずっと一緒にいるし、これから死ぬまで、寂しい思いさせたりなんかしないようにするから」
「っ……」
 その言葉に、熱い涙が溢れてくる。
「俺っ、俺さ……渚と結婚するまでは寂しかったけど、結婚してからはっ、ずっと幸せだしっ……渚がいなくても、少しくらいは大丈夫だから……あんまっ、へんな心配すんなよなっ」
 ウン、ウンと頷く渚と唇を重ねる。
 人間の顔してても犬舌な渚のべろは、薄く、独特のヌルついた感触で、堪らなく可愛い。
 優しい口付けに溺れながら、俺は腰を踊らせるみたいに揺らし始めた。
 渚もゆっくりと動き始めて、その摩擦がむずがゆい快感として俺のナカをビリビリと伝わる。
 人間のときの渚のそれも、奥をカリで掻き出されるみたいに擦られるのが堪らなく気持ちいい。
 ドロドロのちんぽの先を渚の腹に押し付けながらまた、絶頂を目指して昂ぶってゆく。
「湊、愛してるよ……」
「うンっ、俺、もっ……っ!」
 ――終わりのない快感の中で、俺たちはいつまでも互いを求め合った。


 一週間後、俺と渚は子供達を迎えに行き、無事に我が家に帰宅した。
「パパー! お父さん! 抱っこしてー!」
 獣面人身のやんちゃな航と、黒髪で完璧な人間姿の岬が二人して飛びついてきて、四つ足の仁美がグルグル周りを回って吠える。
「よしよし、ただいま。今度のお休みは、みんなででっかい公園まで散歩行こうな」
 俺は航を、渚は岬を抱き上げ、ソファに座ると、膝に仁美が乗ってきた。
 四人中二人は顔が犬っていう、俺の家族。
 少し変わってるけど、俺にとっては最高にカッコよくて可愛い旦那と、子供達だ。
 岬の頰をペロペロしてる渚の、垂れ耳の下にそっと囁く。
「また、二人きりでも散歩しような?」
 ――渚は、ドキッとしたように毛を逆立てて目を細め、でも尻尾をいっぱい振って応えてくれた。
【完】
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