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番外編3
ある日の二人1
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三ヶ月に一度、発情期が来ると、俺は獣人の旦那さんと一緒に家を留守にする。
息子達と娘――三歳の双子兄弟と、二歳のその妹は親戚にバラバラに預かってもらう。
その間の数日間だけが、俺たちが二人きりの恋人同士に戻る時間だ。
毎回預かってもらうのは申し訳ねえし、普段は親の顔をしてるのに、照れ臭いけど……お互い凄く楽しみにしてる習慣で。
っていうか、物凄く楽しみにし過ぎて、そこに合わせて仕事も休暇とって、ワクワクしながら待ってたのに――。
「もうっ、渚のやつ……。こんな時に限って出張って……」
マンションの別室に住む母親の手を借り、子供三人をやっとの思いで風呂に入れて寝かしつけた俺は疲れ果て、リビングのソファにうつ伏せに倒れ込んでいた。
ちょっとでも明るいと子供が寝ないので、家中真っ暗だけど、電気つける気力もない。
やっと自由時間なのにな……。
いや、子供はメチャクチャ可愛いよ。
特に岬と航なんて、つい最近人間になれるようになったばっかりでさ。
航は金髪でちっちゃい渚みたい。
完全な人間になるのはまだ難しいらしく、よく狼男みたいに顔に毛を生やしてるのが可愛い。
岬はほぼ黒髪で俺にソックリ。航よりも先にアッサリ人間の姿になれたみたいで、言葉も達者。
てっきりおんなじ顔になるもんだと思ってたけど、性格も見た目も違いがハッキリしてきて面白い。
俺が言うのもなんだけど二人ともハンサムに育ちそうで今から楽しみなんだ。
でも、仕事しながら三人育てんのはやっぱ、尋常じゃなく大変だ。
俺と渚の関係も、日常生活では前みたいに色っぽい感じになる事なんか殆どなくて。
だから、俺たちが性的にも愛し合ってるアルファとオメガだって事、思い出せるのは三ヶ月に一度の睦みあいの時だけだったのに。
「それなのに、何でいねえんだよ、渚ぁ……っ」
寂しすぎて情けなく独り言を漏らす。
もし渚が居たら、今頃、一緒に風呂に入って洗いっこしてたんだろうなぁ、なんて思ったりして。
生でしても妊娠しないように毎日ピル飲んで、身体の準備もしてた。
仕方のない事なんだけどな。
うつ伏せになった腹の下で、ちんこが熱っぽくズキズキして収まらない。
「……薬、飲んで寝るか……」
薬は、子供が手を出せないように、ベビーゲートで仕切ったキッチンの引き出しに入っている。
取り敢えず電気、つけなきゃなと重い身体を起こし、床に足の裏を付けた途端、聞き慣れたコール音が静かなリビングに高く鳴り響いた。
「!」
慌ててローテーブルの上で光っているスマホに飛びつく。
画面に映し出されているのは、愛する夫の名前と愛おしすぎるゴールデンレトリバーの顔だ。
「っ、もしもしっ」
通話ボタンを押しながら声が裏返ってしまった。
『……湊? 良かった、まだ起きてたんだ』
低くて甘い、俺の大好きな声が耳に届く。それだけで体の芯がキュンとなって、発情期だなぁ……と思う。
「いや、もう寝ようとしてたとこだけど……。渚、仕事は? 新しい支社立ち上げたんだろ」
『うん、開所式もそのあとのパーティも終わって、上手くいったよ。子供達は寝た?』
「今は寝てるけど、さっきまですげえ大暴れして大変だった。航は保育園で昼寝しすぎて体力余ってんのかずーっと走り回ってるし、仁美は岬に噛みついて泣かせるし」
『えっ、岬大丈夫!?』
「怪我とかはしてない。そんな強く噛んだ訳じゃねえから……仁美的には遊んで欲しかったらしくてさ」
『怪我してないなら良かったけど。仁美もまだ兄さん達と一緒のことが出来ないのがもどかしいのかもね……』
渚の穏やかな声を聞いていると、凄くほっとする。
話を聞いてもらえて、それだけで、疲れ切ってた心身がかなり軽くなった。
「うん、そうだな……。電話、有り難うな、渚。明日もまだそっちで仕事なんだろ? そろそろ風呂入って寝ろよ」
『あ、待って……その、もう少し話してられないかな。湊の声聞きたくて』
色っぽい響きの口調でそうせがまれて、ゴクンと息を飲む。
「声聞いてたいって言われても……。何話せばいいんだよ」
『……何でもいいんだ。湊の声が好きだから……高い声っていう訳じゃ無いのに、華があって、艶っぽくて……』
「あははっ、渚の方がよっぽどいい声だろ? 近くで囁かれたらぞくっとする」
『ほんとに? 今でも?』
相手からは見えてないのに、俺は無意識に、笑顔で何度も頷いていた。
「今でもだよ……会いたい……」
ソファに背中を預けてどさっと座り込み、指先でつっと股間を撫でる。
寝間着がわりのスエットパンツの下で可哀想なくらい勃起してる、俺の息子。
せめて一回慰めてから薬飲んで寝るのも悪くないかもしれない。
子供達の寝てる和室の襖がしっかり閉まってるのを確認して、甘い吐息をつく。
「渚とセックス、したい……」
スピーカーから、ごくっと息を飲む音が聞こえた。
『みっ、湊ごめんね……、その、急にこんなことになっちゃって……』
「ホントだよ。いつもちゃんと休み合わせてくれんのに、珍しいなって、……」
渚にバレないように、ウエストのゴムを引っ張ってギンギンになってるペニスを取り出す。
竿をゆっくり指で擦り始めながら、電話越しの渚の声に集中した。
『俺もね、凄く湊としたいよ……。俺がいなくて寂しかった?……』
「んっ、寂しいに決まってるだろ……? 発情っ、してんのにっ、俺……っ」
ちんぽを擦る指を微妙に強めながら、密かに息を上げる。
『湊? 薬飲んでないの……?』
心配そうな声が訊いてきた。
もしかして、バレたか?
いやいや、大丈夫なはず。
「ちゃんと飲んでるよ。渚がそばにいなけりゃ俺、ちゃんと薬、効くし……別に平気……」
誤魔化すように俺は平静を装って答える。
実は前を擦ってるだけじゃ物足りなくなって、スエットのウエストを尻まで下げてる所だけど。
『ほんとに……? なんか湊の声エロいから、一人で触ってるのかと……思った』
息子達と娘――三歳の双子兄弟と、二歳のその妹は親戚にバラバラに預かってもらう。
その間の数日間だけが、俺たちが二人きりの恋人同士に戻る時間だ。
毎回預かってもらうのは申し訳ねえし、普段は親の顔をしてるのに、照れ臭いけど……お互い凄く楽しみにしてる習慣で。
っていうか、物凄く楽しみにし過ぎて、そこに合わせて仕事も休暇とって、ワクワクしながら待ってたのに――。
「もうっ、渚のやつ……。こんな時に限って出張って……」
マンションの別室に住む母親の手を借り、子供三人をやっとの思いで風呂に入れて寝かしつけた俺は疲れ果て、リビングのソファにうつ伏せに倒れ込んでいた。
ちょっとでも明るいと子供が寝ないので、家中真っ暗だけど、電気つける気力もない。
やっと自由時間なのにな……。
いや、子供はメチャクチャ可愛いよ。
特に岬と航なんて、つい最近人間になれるようになったばっかりでさ。
航は金髪でちっちゃい渚みたい。
完全な人間になるのはまだ難しいらしく、よく狼男みたいに顔に毛を生やしてるのが可愛い。
岬はほぼ黒髪で俺にソックリ。航よりも先にアッサリ人間の姿になれたみたいで、言葉も達者。
てっきりおんなじ顔になるもんだと思ってたけど、性格も見た目も違いがハッキリしてきて面白い。
俺が言うのもなんだけど二人ともハンサムに育ちそうで今から楽しみなんだ。
でも、仕事しながら三人育てんのはやっぱ、尋常じゃなく大変だ。
俺と渚の関係も、日常生活では前みたいに色っぽい感じになる事なんか殆どなくて。
だから、俺たちが性的にも愛し合ってるアルファとオメガだって事、思い出せるのは三ヶ月に一度の睦みあいの時だけだったのに。
「それなのに、何でいねえんだよ、渚ぁ……っ」
寂しすぎて情けなく独り言を漏らす。
もし渚が居たら、今頃、一緒に風呂に入って洗いっこしてたんだろうなぁ、なんて思ったりして。
生でしても妊娠しないように毎日ピル飲んで、身体の準備もしてた。
仕方のない事なんだけどな。
うつ伏せになった腹の下で、ちんこが熱っぽくズキズキして収まらない。
「……薬、飲んで寝るか……」
薬は、子供が手を出せないように、ベビーゲートで仕切ったキッチンの引き出しに入っている。
取り敢えず電気、つけなきゃなと重い身体を起こし、床に足の裏を付けた途端、聞き慣れたコール音が静かなリビングに高く鳴り響いた。
「!」
慌ててローテーブルの上で光っているスマホに飛びつく。
画面に映し出されているのは、愛する夫の名前と愛おしすぎるゴールデンレトリバーの顔だ。
「っ、もしもしっ」
通話ボタンを押しながら声が裏返ってしまった。
『……湊? 良かった、まだ起きてたんだ』
低くて甘い、俺の大好きな声が耳に届く。それだけで体の芯がキュンとなって、発情期だなぁ……と思う。
「いや、もう寝ようとしてたとこだけど……。渚、仕事は? 新しい支社立ち上げたんだろ」
『うん、開所式もそのあとのパーティも終わって、上手くいったよ。子供達は寝た?』
「今は寝てるけど、さっきまですげえ大暴れして大変だった。航は保育園で昼寝しすぎて体力余ってんのかずーっと走り回ってるし、仁美は岬に噛みついて泣かせるし」
『えっ、岬大丈夫!?』
「怪我とかはしてない。そんな強く噛んだ訳じゃねえから……仁美的には遊んで欲しかったらしくてさ」
『怪我してないなら良かったけど。仁美もまだ兄さん達と一緒のことが出来ないのがもどかしいのかもね……』
渚の穏やかな声を聞いていると、凄くほっとする。
話を聞いてもらえて、それだけで、疲れ切ってた心身がかなり軽くなった。
「うん、そうだな……。電話、有り難うな、渚。明日もまだそっちで仕事なんだろ? そろそろ風呂入って寝ろよ」
『あ、待って……その、もう少し話してられないかな。湊の声聞きたくて』
色っぽい響きの口調でそうせがまれて、ゴクンと息を飲む。
「声聞いてたいって言われても……。何話せばいいんだよ」
『……何でもいいんだ。湊の声が好きだから……高い声っていう訳じゃ無いのに、華があって、艶っぽくて……』
「あははっ、渚の方がよっぽどいい声だろ? 近くで囁かれたらぞくっとする」
『ほんとに? 今でも?』
相手からは見えてないのに、俺は無意識に、笑顔で何度も頷いていた。
「今でもだよ……会いたい……」
ソファに背中を預けてどさっと座り込み、指先でつっと股間を撫でる。
寝間着がわりのスエットパンツの下で可哀想なくらい勃起してる、俺の息子。
せめて一回慰めてから薬飲んで寝るのも悪くないかもしれない。
子供達の寝てる和室の襖がしっかり閉まってるのを確認して、甘い吐息をつく。
「渚とセックス、したい……」
スピーカーから、ごくっと息を飲む音が聞こえた。
『みっ、湊ごめんね……、その、急にこんなことになっちゃって……』
「ホントだよ。いつもちゃんと休み合わせてくれんのに、珍しいなって、……」
渚にバレないように、ウエストのゴムを引っ張ってギンギンになってるペニスを取り出す。
竿をゆっくり指で擦り始めながら、電話越しの渚の声に集中した。
『俺もね、凄く湊としたいよ……。俺がいなくて寂しかった?……』
「んっ、寂しいに決まってるだろ……? 発情っ、してんのにっ、俺……っ」
ちんぽを擦る指を微妙に強めながら、密かに息を上げる。
『湊? 薬飲んでないの……?』
心配そうな声が訊いてきた。
もしかして、バレたか?
いやいや、大丈夫なはず。
「ちゃんと飲んでるよ。渚がそばにいなけりゃ俺、ちゃんと薬、効くし……別に平気……」
誤魔化すように俺は平静を装って答える。
実は前を擦ってるだけじゃ物足りなくなって、スエットのウエストを尻まで下げてる所だけど。
『ほんとに……? なんか湊の声エロいから、一人で触ってるのかと……思った』
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