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番外編2

渚の家庭内恋煩い9

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 頭がおかしくなりそうなのを辛うじて踏み止まり、やっとのことで俺は口を開いた。
「……湊……。俺たち夫婦だろ……一言相談してくれれば……身体、おかしくなるまで我慢するなんて――」
 湊の着てる綿シャツ、薄いな……掴んで少し力入れたらすぐ破けそうだ……。
「ごめん……これからはちゃんと言うから……」
 申し訳なさそうなその言葉に頷いたまま、俺は自分の額を手で覆った。
 俺、さっき何を考えた……?
「渚……? 大丈夫か? 渚の方が、なんだか具合悪そうだ」
 湊の顔が近付き、覗き込んでくる。
 だめだ、そんな風にされたらもう……保たない。
「大丈夫……。でも匂いが、濃くて……」
「……あ……そ、そうだよ、な……朝で貰った薬、全部切れてしまって……」
 俺の腕に触れていた手が慌てたように離れた。
「俺っ、電車で帰ろうかな――つがいになったからもう、みんなを誘うようなフェロモンは出てない、し……」
「熱、酷いのに?」
 声が、低く脅すみたいになってしまう。
「……またそんなこと言って俺から逃げるの?」
 助手席のドアを開けようとした湊がハッとした。
 あぁ、こんな脅迫するようなこと絶対駄目なのに。
 夫婦なのに。――優しくしたいのに。
「我慢してたのは湊だけじゃ無いんだよ……?」
 湊の着ている紺のヘンリーネックのTシャツの、胸のあたりまであるボタンの周辺を強く掴む。
 はずみで前立てが外れ、大きく襟が開いて汗ばんだ胸元があらわになった。
「結婚してからいつも甘い匂いさせて……でも、いつになったら許してもらえるのかさっぱり分からないし……もう俺、お預けも限界なんだけど……」
 身を屈めるようにして首筋に舌を這わせると、湊がビクビクと体を震わせて呻く。
「ご、……っ、ごめん悪かった……っ、で、でも、こ、こんな所では駄目だ、人が来たら見られる……っ」
「……大丈夫だよ。車の窓、スモークフィルムかかってるだろ……うっかり犬頭になって周りの運転手をビックリさせないようにしてるんだ……」
「そっ、そりゃ知らなかったわー……て、イヤイヤ、だからってイイって訳じゃ……ぅんぐ……」
 これ以上喋れないように唇を奪い、火照った口の中を舐め回した。
「ン、……っぷ……っ、」
 舌を絡ませ、強引に奥まで擦り付ける程に、湊の表情がどんどん甘く蕩けていく。
 両手が伸びてきて俺の肩にしがみつき、もう離さないとばかりに首筋にきつく回された。
 舌を震わせながら愛らしくキスを受け入れ始めた彼の背中を抱き、胸と胸を密着させる。
 焦らすように背骨の辺りを指で撫でると、とうとう湊は自分から唇を外し俺に訴えた。
「なっ、なぎさ……っ、はぁっ、我慢できな……っ」
 繊細な彼の指が自らの腹部に下りて、デニムの前立てを緩め始める。
 苦しげなそこは、抑えていた硬い布の縛めから解き放たれると更に濃厚な匂いを発して俺を誘った。
「すごい匂いだね。……キスだけで下着ビチョビチョにしたの……?」
「ン……、だって、ペロペロだけじゃなくてちゃんとキスして貰えたの久々で……嬉しく、て……」
 湊が潤んだ瞳で微笑み、息を弾ませて座席から尻を浮かせ、下着ごとデニムのウエストを太腿にずらしていく。
「なあ、……脱いでいい……? 暑いし、濡れすぎて気持ち悪い……」
 狭い空間で、色っぽく下半身を悶えながら湊が下着とズボンを足元に下げていく。
 白いお尻と太腿の側面と、真っ赤に充血して勃った可愛い雄の部分が露わになり、興奮が止まらない。
 早くそこにしゃぶりつきたくて、ズボンと下着が膝まで落ちた途端、俺は上半身を屈めて湊の裸の太腿の間にがっついた。
「ダメ、……全部脱ぐまで待てねえのっ……? はっ、ンン……っ!」
「代わりに、俺が脱がせてあげるから……っ」
 言いながら根元まで熱い肉を頬張って、トロトロ溢れている甘い体液に夢中で吸いつく。
「だっ、めだって、はあっ、イイ……っ、ちんぽの先もっとペロペロして……っ」
 許しを貰ってビチャビチャ音を立てて激しく舌を這わせると、湊の腰が座席の上で何度も跳ねて浮いた。
「……っぁはあっ、渚のべろ、ヌルヌルして気持ちいっ……んっ、ン!」
 くびれを舌先で辿り、小さな穴をチロチロと愛撫すると、上がる喘ぎ声が悲鳴のように高くなる。
「ひっあ……っ、こんなのっ、久しぶり過ぎてっ、やば、……っ、ハあッ、溶けそ……っ」
 再び包み込むように喉奥まで吸って滑らかな先端を優しく締め付けると、次第に根元が痙攣しだした。
「あア……っ、クチの中に……っ、ごめ、もう出ちゃう……っ」
 湊が叫んだ瞬間、ビュクビュクと勢いよく甘苦い精が吐き出される。
 愛しい相手の体液の中で一番お気に入りのその味に、ゾクゾクと興奮が高まった。
 溜まってたのか、濃くて量も多いのが嬉しくて、一滴残らず貪るように舐め回す。
 ――でもまだまだ、こんなんじゃ物足りない。
 身体の奥底の飢えが酷くて、これを野放しにしたら湊を傷付けてしまいそうで、恐ろしい――。
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