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婚活卒業しました
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結果的に言うと、貰った電話番号は財布の中にお守りみたいに大事に入れたまんま、連絡することは結局無かった。
というのも、直後から俺の人生はジェットコースターに乗せられたみたいな事になっちまったから。
あの後、まず俺は遅い夏休みを1週間とって、初日にBLネットに退会届けを出しに行った。
お礼を言いに行った蛇の目さんにはあの手この手で引き止められた。「お休みしてる間は会費のかからない休会制度もあるのよ」なんて言われて。
そこはちょっとゴメンナサイしたけど。
そして次の日から、人生初の楽しい引越しで大忙し。
いざ荷造りを始めたら、34年分の思い出の整理がとにかく大変でさ。
アルバムや、小さい頃俺が描いた絵や、一昔前のデザインの、子供時代のよそ行きの洋服やら……襖の奥から出てきた色んなもんを、お袋と一緒に全部引っ張り出して、笑ったり懐かしんだりして。
そんな過去のものを一つ一つ、捨てられねぇもんは段ボールの中にしまって、他はスマホで写真に収めてからどんどんゴミ袋に入れていった。
ついでに、場所を取ってた古くてデカイ洋服ダンスなんかも処分した! 今度の家は何と言っても、憧れのクローゼットがあるからな。
そうして可能な限り身軽になっていくと、どんどん気持ちが新しく前向きになって行くのが分かった。
もっと早く、決断するべきだったんだろうな。
ーー全てが終わり、半生を世話になったガランとした家を去る時は、今まで背負ってた重いもんから一気に解き放たれたような気分だった。
もう俺は、誰もいないあのアパートに帰れねぇ夢を見て、怯えることもないんだと思う。
そして、新築の新居に入り、スッキリした気分で秋を迎えた頃ーー。
俺、突然、物凄い風邪を引いたんだ。
今まで、体調崩しても鼻が出るくらいで滅多に熱をださねぇ俺が、そこまで寒くないはずの職場でガタガタ震える程になってさ。
更に、なんか変なんだ。周りの空気が全部自分を拒否してんのかってくらい物凄く臭うようになって、そのせいで酷い吐き気が止まらなくなった。
流石にそこまでになったら俺も、心当たりに気付いた。
掛かりつけの医師に見てもらいにすぐ病院に行って、症状と、最後の発情期、性交の有無まで全部聞かれた挙句、尿検査受けて、診察室に呼び出されてーーいつもの中年の男の先生は、やっぱり顔に動揺を出すこともなく、「妊娠されてますね」と言った。
ーー特には、驚かなかった。
アフターピル飲まなかった時点でそういう覚悟はしてたんだ。
むしろ、発情してる時にすると本当に妊娠するもんなんだな、……と感心したぐらい。
その後は、診察台の上でとんでもない場所にエコー検査の機械突っ込まれて、色々調べられた。
子宮外妊娠とかじゃなく、順調ですよと告げられて、不安な中でも少しホッとした。
ーーけど診察の最後に、相手が人類じゃないってことをポロっと言ったら、初めて先生は顔色変えるくらい物凄く動揺して。
すぐさま、大学病院への紹介状を書いてくれた。
どうやら獣人の子を人間が生むっていうのはかなり珍しい事なんだそうで、万全の医療体制が整備されてる所でしか受け入れてくれない上、妊娠期間が普通より短くて、分娩予約を入れるのがまた至難の技なんだそうだ。
産科医が減ってる現状、俺のようなのはほっとくと飛び込み出産になり易いんだと。
認識甘かったなぁと反省しつつ、酷い体調不良に耐えながらもその大病院での次の検診を待つことにした。
ところがその後、俺の悪阻は更に悪化してしまって、ついには水も飲めなくなって倒れーー結局、俺は紹介された病院にそのまま入院した。
しかも、犬獣人の平均的な妊娠期間はたったの80日なんだそうで。人間の俺が獣人ハーフの出産までどの位かかるかは、エコー検査で頻繁に様子見しつつ、神のみぞ知るって感じらしく……。
正直なんてこったと思った。
職場には取り敢えず診断書提出して、今までに溜めた休暇を消化させて貰ったけど……。
しかも、何と試練はそれだけじゃ終わらずで。
その後も切迫早産疑いでまた入院させられたり、ちょっと語れないぐらい壮絶な経験の末ーー妊娠発覚して3ヶ月後には俺、いつのまにかパパになっていた。
いや、産んだって意味ではママなのかもしれんけど……。
ーー初めての子育てにお袋と一緒に悪戦苦闘してる間に、季節はいつのまにか、犬塚さんと初めて出会った春先になっていた。
世間的な目からすると、今俺は二匹のゴールデンレトリバーの子犬の飼い主だ。
ご近所さんにも、犬の散歩が日課の無職の怪しいオッサンだと思われている。
産んでから、二人きりだった家族はすっかり賑やかになった。
それにしても、まさか見事に双子が産まれるとはな……。
イケペディアに書いてあった通りじゃねーか。
あの時はまさか俺が産むことになるなんて思いもしてなかったけど。
しかも獣人の子は産まれるのも早けりゃ成長も半端なく早くて、もう普通にコロコロ走ってるから驚きだ。
ただし、人間ぽいところがさっぱり見当たらねぇのがなぁ。
犬塚さんも「3歳まで犬で育つ」みたいなこと言ってたけど、この子達もそんな感じなのかもしれない。
今のところ俺の遺伝子どこ行っちまったのかサッパリなあたり、獣人の遺伝子どんだけ強いんだよと思う。
時々、本当に自分が産んだんだっけ? って気分になるよ。
ちなみに性別は両方男の子で、名前は、岬《みさき》と航《わたる》。
まぁ、まだ本人達も自分の名前分かってんのか謎だけど。
というのも、直後から俺の人生はジェットコースターに乗せられたみたいな事になっちまったから。
あの後、まず俺は遅い夏休みを1週間とって、初日にBLネットに退会届けを出しに行った。
お礼を言いに行った蛇の目さんにはあの手この手で引き止められた。「お休みしてる間は会費のかからない休会制度もあるのよ」なんて言われて。
そこはちょっとゴメンナサイしたけど。
そして次の日から、人生初の楽しい引越しで大忙し。
いざ荷造りを始めたら、34年分の思い出の整理がとにかく大変でさ。
アルバムや、小さい頃俺が描いた絵や、一昔前のデザインの、子供時代のよそ行きの洋服やら……襖の奥から出てきた色んなもんを、お袋と一緒に全部引っ張り出して、笑ったり懐かしんだりして。
そんな過去のものを一つ一つ、捨てられねぇもんは段ボールの中にしまって、他はスマホで写真に収めてからどんどんゴミ袋に入れていった。
ついでに、場所を取ってた古くてデカイ洋服ダンスなんかも処分した! 今度の家は何と言っても、憧れのクローゼットがあるからな。
そうして可能な限り身軽になっていくと、どんどん気持ちが新しく前向きになって行くのが分かった。
もっと早く、決断するべきだったんだろうな。
ーー全てが終わり、半生を世話になったガランとした家を去る時は、今まで背負ってた重いもんから一気に解き放たれたような気分だった。
もう俺は、誰もいないあのアパートに帰れねぇ夢を見て、怯えることもないんだと思う。
そして、新築の新居に入り、スッキリした気分で秋を迎えた頃ーー。
俺、突然、物凄い風邪を引いたんだ。
今まで、体調崩しても鼻が出るくらいで滅多に熱をださねぇ俺が、そこまで寒くないはずの職場でガタガタ震える程になってさ。
更に、なんか変なんだ。周りの空気が全部自分を拒否してんのかってくらい物凄く臭うようになって、そのせいで酷い吐き気が止まらなくなった。
流石にそこまでになったら俺も、心当たりに気付いた。
掛かりつけの医師に見てもらいにすぐ病院に行って、症状と、最後の発情期、性交の有無まで全部聞かれた挙句、尿検査受けて、診察室に呼び出されてーーいつもの中年の男の先生は、やっぱり顔に動揺を出すこともなく、「妊娠されてますね」と言った。
ーー特には、驚かなかった。
アフターピル飲まなかった時点でそういう覚悟はしてたんだ。
むしろ、発情してる時にすると本当に妊娠するもんなんだな、……と感心したぐらい。
その後は、診察台の上でとんでもない場所にエコー検査の機械突っ込まれて、色々調べられた。
子宮外妊娠とかじゃなく、順調ですよと告げられて、不安な中でも少しホッとした。
ーーけど診察の最後に、相手が人類じゃないってことをポロっと言ったら、初めて先生は顔色変えるくらい物凄く動揺して。
すぐさま、大学病院への紹介状を書いてくれた。
どうやら獣人の子を人間が生むっていうのはかなり珍しい事なんだそうで、万全の医療体制が整備されてる所でしか受け入れてくれない上、妊娠期間が普通より短くて、分娩予約を入れるのがまた至難の技なんだそうだ。
産科医が減ってる現状、俺のようなのはほっとくと飛び込み出産になり易いんだと。
認識甘かったなぁと反省しつつ、酷い体調不良に耐えながらもその大病院での次の検診を待つことにした。
ところがその後、俺の悪阻は更に悪化してしまって、ついには水も飲めなくなって倒れーー結局、俺は紹介された病院にそのまま入院した。
しかも、犬獣人の平均的な妊娠期間はたったの80日なんだそうで。人間の俺が獣人ハーフの出産までどの位かかるかは、エコー検査で頻繁に様子見しつつ、神のみぞ知るって感じらしく……。
正直なんてこったと思った。
職場には取り敢えず診断書提出して、今までに溜めた休暇を消化させて貰ったけど……。
しかも、何と試練はそれだけじゃ終わらずで。
その後も切迫早産疑いでまた入院させられたり、ちょっと語れないぐらい壮絶な経験の末ーー妊娠発覚して3ヶ月後には俺、いつのまにかパパになっていた。
いや、産んだって意味ではママなのかもしれんけど……。
ーー初めての子育てにお袋と一緒に悪戦苦闘してる間に、季節はいつのまにか、犬塚さんと初めて出会った春先になっていた。
世間的な目からすると、今俺は二匹のゴールデンレトリバーの子犬の飼い主だ。
ご近所さんにも、犬の散歩が日課の無職の怪しいオッサンだと思われている。
産んでから、二人きりだった家族はすっかり賑やかになった。
それにしても、まさか見事に双子が産まれるとはな……。
イケペディアに書いてあった通りじゃねーか。
あの時はまさか俺が産むことになるなんて思いもしてなかったけど。
しかも獣人の子は産まれるのも早けりゃ成長も半端なく早くて、もう普通にコロコロ走ってるから驚きだ。
ただし、人間ぽいところがさっぱり見当たらねぇのがなぁ。
犬塚さんも「3歳まで犬で育つ」みたいなこと言ってたけど、この子達もそんな感じなのかもしれない。
今のところ俺の遺伝子どこ行っちまったのかサッパリなあたり、獣人の遺伝子どんだけ強いんだよと思う。
時々、本当に自分が産んだんだっけ? って気分になるよ。
ちなみに性別は両方男の子で、名前は、岬《みさき》と航《わたる》。
まぁ、まだ本人達も自分の名前分かってんのか謎だけど。
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